アデノシン3リン酸(ATP)は、アデノシンという物質に3つのリン酸基(P)が結合しています。ATP分解酵素の働きによってATPが加水分解すると、ひとつのリン酸基(P)がはずれてADP(アデノシン2リン酸)になり、その際にエネルギーを放出します。このエネルギーを使って筋の収縮が行われます。筋繊維の中に蓄えられているATPの量はわずかなので、激しい運動では短時間で使い果たしてしまいます。したがって、長時間運動を続けるにはADPからATPを再合成してATPを供給し続けなければなりません。この仕組みをエネルギー産生機構といいます。酸素を必要としない無酸素性(嫌気的)エネルギー産生機構と酸素を消費する有酸素性(好気的)エネルギー産生機構の2つに大別され、前者はさらにクレアチンリン酸機構と乳酸性機構に分かれます。
ATP
別表記:アデノシン三リン酸
アデノシン三リン酸(ATP)とは、アデノシン(adenosine)とリン酸(phosphoric acid)からなる化合物の名称です。リン酸の分子は3つあるため「3」を意味する接頭辞 tri- が加えられ、Adenosine TriPhosphate、略して「ATP」とも呼ばれます。生物が体内でエネルギーを貯蔵したり使用する際の媒体となる物質であり、その意味であらゆる生物のあらゆる活動にとって必要不可欠の物質です。
アデノシン三リン酸は分子内にエネルギーを蓄えておく役割と、必要に応じてエネルギーを放出し消費可能にする役割があります。体内のアデノシン三リン酸は加水分解により、3つあるリン酸分子のうち1つが切り離されて「アデノシン二リン酸」(ADP)に変化します。この変化に伴い蓄えられていたエネルギーが放出され、活動に必要なエネルギーが筋肉などに供給されるというわけです。
アデノシン三リン酸には血管を拡張する作用もあります。2010年代現在では眼精疲労や胃炎などの症状を抑える医薬品の成分としても活用されています。
アデノシン三リン酸は1920年代に発見され、1930~1940年代にはアデノシン三リン酸が筋肉の収縮などに根幹的に関わっていることなどが解明されています。2017年には大阪大学が大規模シミュレーションによりアデノシン三リン酸のエネルギーの構造や分子メカニズムを解明したと発表しています。
アデノシン‐さんりんさん【アデノシン三×燐酸】
ATP
分子式: | C10H16N5O13P3 |
その他の名称: | ATP、アジノール、アデトール、Triadenyl、Triphosaden、Triphosphaden、Striadyne、Myotriphos、Glucobasin、Atriphos、5'-ATP、ATP【nucleotide】、Atipi、Adynol、Adetol、ATP【ヌクレオチド】、トリホスファデン、トリホサデン、トリアデニル、ストリアジン、アトリホス、グルコバシン、ミオトリホス、Adenosinetriphosphoric acid、アデノシン三りん酸、Adenosine 5'-triphosphoric acid、アデニルピロりん酸、カルデノシン、ホスホビオン、Cardenosine、Adenylpyrophosphoric acid、Fosfobion、Adenosine-5'-triphosphoric acid、Triphosphoric acid α-(5'-adenosyl) ester、アデノシン三リン酸 |
体系名: | アデノシン-5'-三りん酸、アデノシン5'-三りん酸、三りん酸α-(5'-アデノシル) |
アデノシン三リン酸
英訳・(英)同義/類義語:adenosine triphosphate, ATP
アデノシンの5'OH基にリン酸が3分子ジエステル結合したもの。このうち2個のリン酸分子の結合は高エネルギーリン酸結合とよばれ、この結合が切れるときにエネルギーを生体内の様々な反応に利用している。
化合物名や化合物に関係する事項: | アデノシン5'-三リン酸 アデノシン アデノシン一リン酸 アデノシン三リン酸 アデノシン二リン酸 アドレナリン アフラトキシン |
アデノシン3リン酸
アデノシン三リン酸
アデノシン三リン酸
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/29 19:34 UTC 版)
英: adenosine triphosphate)とは、アデノシンのリボースに3分子のリン酸が付き、2個の高エネルギーリン酸結合を持つヌクレオチドである。リボースの5位の炭素に、リン酸が結合しているため、アデノシン 5'-三リン酸などとも書かれる。しばしば「adenosine triphosphate」から取ったアルファベットを並べて「 (エー・ティー・ピー)」と呼称される。本稿では以後、ATPと略記する。
(アデノシンさんリンさん、- ^ デジタル大辞泉【アデノシン三リン酸】(アデノシンさんりんさん)
- ^ ただし、結合自体がエネルギーを持つわけではない:この化学結合の切断は、吸エネルギー反応である。
- ^ ATP腸溶錠(p.1)
- ^ ATP腸溶錠・ATP顆粒剤(p.11)
- ^ ATP腸溶錠・ATP顆粒剤(p.15)
- ^ Sawada, K.; Echigo, N.; Juge, N.; Miyaji, T.; Otsuka, M.; Omote, H.; Yamamoto, A.; and Yoshinori Moriyama (April 15, 2008) “Identification of a vesicular nucleotide transporter” Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 2008 105: 5683-5686; doi:10.1073/pnas.0800141105
- ^ VNUTによって神経末端のシナプス小胞に運ばれたATPは貯蔵された後、外部に放出されて疼痛を発生させたり血管を収縮したりするため、VNUTが抑制できれば痛み・血管収縮を管理することが可能かもしれないと考えられている。
- 1 アデノシン三リン酸とは
- 2 アデノシン三リン酸の概要
- 3 ATPの役割
- 4 関連項目
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