USBフラッシュドライブ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/01 00:08 UTC 版)
典型的な製品の大きさは、長さ数センチメートル、幅と厚さはUSB A端子より若干大きい程度である。
USBメモリの普及当初はUSB A端子にてコンピュータと接続するタイプが多かったが、スマートフォンやタブレットコンピュータの普及に伴いmicro B端子やUSB TYPE-C端子、Lightning端子などをもつUSBメモリも販売されるようになってきた。
概要
USB規格には、USB Mass Storage Class(USBマスストレージクラス)という補助記憶装置を接続するための仕様があり、このクラスに対応した機器およびオペレーティングシステム (OS) であれば、機器専用のデバイスドライバを改めてインストールする必要もなく、装置をUSBコネクタに接続することでOS内蔵のクラスドライバ(共通ドライバ)でただちに補助記憶装置として認識することができる。この仕組みを用いたのが、USBメモリである。
データの記録にはフラッシュメモリが使われており、記憶容量は2023年(令和5年)現在、数MBから1TB以上までさまざまである。フロッピーディスクやMO、CD、DVDのように専用のドライブ装置を必要としないうえ、コンパクトで大容量なため利便性が高い、モーター回転部などの駆動部がないため衝撃に強い、小型で可搬性に優れる、という特徴を持つ。
但し、小型のUSBメモリのなかには、狭義のUSBフラッシュドライブの構造ではなくmicroSDカードと小型のmicroSDカードリーダーを組み合わせることで記憶装置を構成している製品も存在する[3]。
2004年(平成16年)前後[注 1]から急激にシェアを伸ばし、SDメモリーカードとともに持ち歩ける大容量フラッシュメモリの主力として用いられている。補助記憶装置としての機能面で製品の差別化を図ることが難しいため、データの読み書き速度を向上させた製品や、セキュリティ確保のために指紋認証機能を備えた製品、デザインに趣向を凝らした製品が登場している。近年では食品やキャラクターなどをかたどったデザインのUSBメモリが数多く登場し、話題になることも少なくない。またUSB端子を保護するためのキャップが付いている製品や、USB端子をスライドさせて引き込めるキャップレスタイプもある。
パソコンのデザインや、その設置場所・設置方法によっては手を伸ばしやすい位置にUSBポートを装備していないこともあるため、使いやすさを確保するために延長ケーブルが付属する場合もある。
持ち歩ける利便性があるが故、様々な個人情報を記録したUSBフラッシュドライブを紛失する重大インシデントも度々発生し、社会問題にもなった。その後、セキュリティ機能を重視したUSBフラッシュドライブも発売された。
歴史
浮遊ゲート半導体メモリの一種である、フラッシュメモリについての基本は1980年代初期に舛岡富士雄によって発明された。フラッシュメモリは記憶素子(英語: Memory cell (computing))として浮遊ゲートMOSFETを使う。[5][6]
複数の個人らがUSBフラッシュドライブの発明者となる権利を主張した。1999年4月5日に、イスラエルの会社エム・システムズ (英語: M-Systems)(1989 - )のアミール・バン (英語: Amir Ban)、ドブ・モラン (英語: Dov Moran)、オロン・オグダン(英語: Oron Ogdan)はArchitecture for a Universal Serial Bus-Based PC Flash Diskと題する応用技術を特許出願した。[7][8][9]その特許は引き続き2000年11月14日に登録されそしてこれらの個人らはしばしばUSBフラッシュドライブの発明者として認知されてきた。同じく1999年、IBMの技術者シモン・シュムエリ(英語: Shimon Shumueli)はUSBフラッシュドライブを彼が発明したと主張する発明の提示を行った。[8]トレック2000インターナショナル (英語: Trek 2000 International)と称するシンガポールの会社はUSBフラッシュドライブを売ったとして知られる最初の会社である、そしてそれがその装置のオリジナルの発明であることも管理した。[10]日本では2000年6月にこの会社のThumb Driveと称するUSBメモリが日本で初めてのUSBメモリとして発売される。容量は16MB、32MB、64MB。当時普及していたOSはWindows 98がメインであるが、マスストレージドライバを標準実装しておらず、ドライバを別途インストールする必要があったため、出先でのデータ交換(フロッピーディスクの代替)には向かなかった[11]。最後にマレーシアの技術者プア・ケンセン (英語: Pua Khein-Seng)もその装置の考えられる数名の発明者の内の一人として認知されてきた。[12]
上記の特許権についての主張のこれらの争いがあるとすれば、数年にわたるUSBフラッシュドライブを巻き込んだ論争をする発明が起きた。トレック2000インターナショナルとネタック・テクノロジー (英語: Netac Technology)はともにUSBフラッシュドライブに関する彼らの特許の侵害をしたその他の者を告発した。[13][14][15]しかしながら、これらの民事訴訟にも関わらず、誰が始めにUSBフラッシュドライブを発明したかという問いは最終的には確立しておらずまた複数の主張が存在する。
注釈
出典
- ^ “USBメモリとは?正しい知識を身につけて使用しよう”. ロジテック (2019年1月31日). 2020年8月24日閲覧。
- ^ “USBフラッシュメモリとは何? わかりやすく解説 Weblio辞書”. www.weblio.jp. 2022年5月31日閲覧。
- ^ “バッファロー社製のUSBメモリを分解したら、中からMicro SD!?”. ガジェット通信. 2020年10月24日閲覧。
- ^ wakaba (2020年2月22日). “Windowsバージョンのシェア遷移を分かりやすくビジュアル化、2003年から2020年まで”. Daily News Agency 2020年4月28日閲覧。
- ^ “Flash Memory”. TU Wien. 2019年12月4日閲覧。
- ^ Harris, David; Harris, Sarah (2010) (英語). Digital Design and Computer Architecture. Morgan Kaufmann. pp. 263–4. ISBN 978-0-08-054706-0
- ^ (Ban, Moran & Ogdan 1999)
- ^ a b Modu Announces Phone Jackets | Gadget Lab | Wired.com Not surprising: Modu founder Dov Moran has a pretty good track record. He invented the USB flash drive.
- ^ “Object of Interest: The Flash Drive” (英語). The New Yorker 2018年10月4日閲覧。
- ^ “Who Invented the USB Flash Drive? - Premium USB”. www.premiumusb.com. 2021年3月25日閲覧。
- ^ USBにダイレクト接続が可能なガム型ドライブ「ThumbDrive」 - AKIBA PC Hotline!
- ^ “'Father of pen drive' now a Datuk | The Star”. www.thestar.com.my. 2021年3月25日閲覧。
- ^ “Patent Expires for Flash Memory Sticks, Invented by a Chinese Company-Jiemian Global”. en.jiemian.com. 2021年3月25日閲覧。
- ^ “Singapore firm wins patent on thumb drive”. The Straits Times 2006年8月1日閲覧。
- ^ “Trek 2000 and the ThumbDrive”. nlb.gov.sg. (2010年3月23日) 2016年6月25日閲覧。
- ^ Should I defragment my USB Flash drive?. Ask-leo.com (2008-02-19). Retrieved on 2011-05-18.
- ^ “Flash Memory Fragmentation – Myths and Facts”. Wizcode.com. 2017年6月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年6月6日閲覧。
- ^ “TN-29-42: Wear-Leveling Techniques in NAND Flash Devices”. 2012年3月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年6月1日閲覧。
- ^ “Kingston HyperX 3K (240GB) SSD Review”. Anandtec.com (2012年4月10日). 2012年10月5日閲覧。
- ^ “Kingston's Flash Memory Guide - Kingston Technology”. 2022年3月25日閲覧。
- ^ “How Long Does a USB Flash Drive Last? (Part II)”. Promotional USB Flash Drives and Accessories. 2022年3月25日閲覧。
- ^ Blanchard, Richard (March 8th, 2007) "What is the Life Cycle of a USB Flash Drive?", GetUSB.info, retrieved June 14, 2010
- ^ "H2testw USB flash drive test tool", www.heise.de, retrieved November 16, 2010
- ^ “Определение модели контроллера и памяти флешки” [Detecting controller model and memory type of flash drive] (ロシア語). usbdev.ru (2013年2月20日). 2018年1月6日閲覧。
- ^ "About VID PID Repairing Counterfeit Flash Drives – Steps To Succeed", fixfakeflash.wordpress.com, retrieved November 16, 2010
- ^ 芹澤 正芳 (2020年6月29日). “偽物SDカードの見分け方教えます!買ったら最初にチェックすべき4つのポイント”. AKIBA PC Hotline!. 2022年4月6日閲覧。
- ^ USBデバイスをコンパクトフラッシュとして利用できる変換アダプタ「仮想CF」が挑戦者から登場!
- ^ “USB接続のMOドライブやハードディスクをWindows95やNT4.0のパソコンで利用する方法はありますか?|Q&A”. アイ・オー・データ機器. 2016年4月27日閲覧。
- ^ “Linux USB”. 2017年3月9日閲覧。
- ^ [1]
- ^ “Debian -- Live インストールイメージ”. www.debian.org. 2022年5月31日閲覧。
- ^ “Windows USB/DVD Download Tool - 日本語”. Microsoft. 2022年8月9日閲覧。
- ^ “Windows 用のインストール メディアを作成する”. Microsoft. 2022年8月9日閲覧。
- ^ “macOS の起動可能なインストーラを作成する方法”. Apple Support. 2020年9月5日閲覧。
- ^ “メイドフィギュア型のUSBメモリが登場、ゲーム入り”. AKIBA PC Hotline - Impress Wathch (2006年8月12日). 2016年4月27日閲覧。
- ^ Arlen Walker. “Technical Specifications - PKZIP Server - PKWARE - server - pkzip - software”. pkware.com. 2015年6月29日閲覧。
- ^ “WinRAR archiver, a powerful tool to process RAR and ZIP files”. rarlab.com. 2015年6月29日閲覧。
- ^ Constantin, Lucian (Mar 13, 2015cle/2896732/dont-trust-other-peoples-usb-flash-drives-they-could). “USB Killer is a flash drive designed to fry your laptop”. PC World. 2018年5月2日閲覧。
- ^ 税関くぐり抜けるステルスUSB、北朝鮮で拡散中 - 聯合ニュース 2011年2月23日
- ^ Baker, Jeff (July 20, 2009) "Kingston unveils 256GB thumb" Archived 2012-03-22 at the Wayback Machine., MobileWhack.com
- ^ Administrator. “Pretec - Small size, Big impact”. 2016年6月1日閲覧。
- ^ “SanDisk Ultra II SD Plus Cards”. SanDisk. 2008年3月2日閲覧。
- 1 USBフラッシュドライブとは
- 2 USBフラッシュドライブの概要
- 3 技術
- 4 紛らわしい製品
- 5 他の携帯式記憶装置との比較
- 6 欠点
- 7 現状と今後の開発
- USBフラッシュドライブのページへのリンク