PBY (航空機) 開発

PBY (航空機)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/13 02:47 UTC 版)

開発

アメリカ海軍における哨戒用飛行艇として、1933年よりXP3Y-1(社内名称:モデル28)として開発が開始された。1935年3月に初飛行し、同年6月に量産発注がなされ、PBY-1の名称が付けられている。名称変更は哨戒機「P」から哨戒爆撃機「PB」 への分類変更によるものである。「Y」はコンソリデーテッド社を表す。後にPBYは『カタリナ』または『キャット』と呼ばれるようになる。

双発エンジンにもかかわらず巡航速度は200km/hと決して速くはなかったが、操縦が容易で航続距離は4800km以上、連続飛行時間は15時間にも及んだ。また拡張性が高く哨戒や爆撃の他にも捜索救難や離島への軽貨物輸送など多彩な任務に対応できた。

機体

双発のレシプロ機であり、主翼はパラソル配置(胴体から離れた高翼単葉)となっている。主翼にフロートを持つが、翼端側に跳ね上げることで飛行中は主翼と一体となり空気抵抗を減じつつ翼面積を増大させるという仕組みになっていた。水平尾翼垂直尾翼の中ほどにあり、垂直尾翼は方向舵の比率が高い。途中から降着装置を引き込み式として着水時の抵抗を軽減し、水陸両用機となった。

操縦席は正面の銃座よりも高い位置にあるため視界は良好であった。また、機体後部の側面にある銃座の扉は当初スライド式だったが、途中で開閉式のブリスター[注 1]に変更され閉じた状態でも広い視界を提供した。機内へは銃座から直接乗り込めるように大きく開くため、装載艇からの移乗や救助者を引き上げなど水上での出入りにも使われた。戦後の旅客型では乗客の搭乗口として跳ね上げ式のハッチに変更されている。

二式大艇とPBYの両方を操縦した日本海軍の日辻常雄少佐は、二式大艇と比べ飛行性能は圧倒的に劣るものの、ポーポイズ現象が無く離水も簡単で機内はガソリン漏れの心配が無いなど乗員へ配慮した設計思想の差を感じたという[1]。機体強度も高く、戦後になっても払い下げの機体が飛行可能な状態を保っている。エンジンが機体に近いため騒音は大きかったが機内で喫煙が可能であるなど快適性はさほど悪くないことや、操縦や整備が容易で航続距離も長いことから旅客機として導入する航空会社もあった。

運用

1937年からアメリカ海軍で部隊配備が開始された。LORAN受信機(AN/APN-4)を搭載しており、航続距離と合わせて単独で長時間の哨戒が可能となっており、第二次世界大戦では救難や雷撃など多彩な任務に投入された。アメリカでは海軍、陸軍航空隊沿岸警備隊で導入された。連合国のイギリスカナダオーストラリアなどでも使用され、日本でも1956年海上自衛隊に2機が供与されたが、引き渡された時点で旧式であったため、1960年に全機除籍。

太平洋戦争開戦直前の1941年12月7日には、マレー作戦に参加する上陸部隊を乗せた輸送船団の上空護衛を行っていた日本陸軍九七式戦闘機が、哨戒中のカタリナを(正式な開戦の前であったが)撃墜した。これは同戦争における最初の連合国軍の損失であった。

第二次世界大戦後には多くが民間に払い下げられ、アメリカやブラジル、カナダ、台湾(チャイナエアライントランスアジア航空)などで旅客機として使用されたものもある他、消防機としても用いられている。

カタリナはスウェーデン空軍機(スウェーデン空軍名称Tp 47)としても用いられたが、1952年6月16日エストニアの北で行方不明となったDC-3機(C-47)を捜索していた時にソビエト軍機に撃墜された。1956年になってソビエト連邦は、DC-3機の撃墜を認めたが、当時はこの情報は公表されなかった。2003年にDC-3機と共に発見されている。冷戦期間中の外交的危機となったこの事件は、その名称をとって「カタリナ事件」と呼ばれている。


注釈

  1. ^ 泡のように膨らんだ形。
  2. ^ PBY-5Aを尾部に使用して修復。
  3. ^ PBY-5Aを尾部に使用して修復。

出典

  1. ^ 碇義朗 『最後の二式大艇 海軍飛行艇の記録』 光人社 ISBN 4-7698-0997-2 p18
  2. ^ a b PBY-4 Catalina Specifications BU. OF AERO., NAVY DEPT. PERFORMANCE DATA
  3. ^ a b PBY-5A Catalina Specifications AIRPLANE CHARACTERISTICS & PERFORMANCE
  4. ^ PBY-6A Catalina Specifications STANDARD AIRCRAFT CHARACTERISTICS
  5. ^ Propeller:HAMILTON STANDARD C.S.、Blade:No.6111 (×3)、Diameter:12ft 1in (3.68m)、Area:10.65m2
  6. ^ Propeller:HAMILTON STANDARD C.S.、Blade:No.6353A-12 (×3)、Diameter:12ft 1in (3.68m)、Area:10.65m2
  7. ^ 武装を取り外したFERRYでの航続距離は2,800st.mile (4,506km)


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