2006 RH120 周回軌道

2006 RH120

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/27 21:26 UTC 版)

周回軌道

2006 RH120は上記のとおり地球ときわめて似通った軌道を持つため、地球接近時に地球の重力に捕らわれ、一時的な地球の自然衛星になる場合がある[3] 。2006 RH120は、天然の天体である事がわかっている中で初の「第2の月」であり、2020年2月15日に2020 CD3が発見されるまでは唯一の事例であった。

このような軌道をもつ天体としては、2002年9月3日に発見されたJ002E3[7]、2006年8月28日に発見された6Q0B44E[8]が前例としてあったが、J002E3はアポロ12号で使用されたサターンVロケットS-IVBであることが判明しており[7]、6Q0B44Eも未確定ながら人工物である可能性がきわめて高い[9]。そのため、2006 RH120カタリナ・スカイサーベイによる発見時には人工物であると疑われ、当初は6R10DB9と呼ばれていた[3][4]。しかし、2006 RH120の太陽輻射圧による軌道変化を計算した結果、中身が中空で軽いロケットブースターであると仮定した場合の値と比べて実際の観測値に大きなずれがあることがあきらかとなったことから、人工物ではなく天然の天体である事が判明した[3][4]。このため2006 RH120という小惑星の正式な仮符号が与えられたのは、発見から17か月後の2008年2月18日である[5]

2006 RH120は、月への小惑星の衝突により飛び散った破片がその起源である可能性がある[10]。なおシミュレーションによれば、2006 RH120のような「一時的な地球の衛星」が常時50個ほど地球の周囲を周回している計算となるが、それらは直径が50cmと2006 RH120のさらに10分の1程度の微小なサイズと想定されているため、実際の観測は難しく、そのような天体は2020 CD3の観測まで未発見であった[11]

2006 RH120が地球の周回軌道に乗っていることが観測されたのは2006年9月から2007年6月までの間で、この期間に地球の周囲を3回公転した。軌道は約9万kmから約20万kmの軌道長半径と約0.41から約0.75の離心率を持ち、軌道傾斜角は最初のみ約40度、それ以降はほぼ直角の軌道を持っていた[3] 。この期間は地球や月に頻繁に接近しており、ジェット推進研究所のデータベースにおける2006 RH120に関するデータのほとんどがこの期間のものであることがわかる[1]

2006 RH120の地球周回軌道の軌道要素[3]
元期 軌道長半径
(km)
離心率 公転周期
(日)
軌道傾斜角
(度)
近地点引数
(度)
昇交点黄経
(度)
近地点通過日時
2006年9月2日 1589136 0.475 230.7 41.4 180.3 159.1 2006年9月12.3日
2006年9月12日 1936139 0.567 310.3 41.3 175.7 159.5 2006年9月11.2日
2006年9月19日 1857264 0.559 291.5 41.8 167.2 159.7 2006年9月9.7日
2006年12月18日 1132535 0.519 138.8 90.9 125.2 105.4 2007年1月1.7日
2006年12月21日 1070442 0.486 127.6 91.6 126.7 105.9 2007年1月2.2日
2006年12月31日 0905792 0.410 099.3 91.7 137.4 105.4 2007年1月3.7日
2007年1月10日 1087484 0.512 130.6 91.2 138.4 105.2 2007年1月3.8日
2007年1月19日 1040366 0.517 122.2 89.9 132.0 104.2 2007年1月3.4日
2007年3月11日 0938816 0.637 104.8 87.9 94.5 102.5 2007年3月25.6日
2007年3月21日 1008880 0.646 116.7 85.7 90.8 102.8 2007年3月25.4日
2007年3月31日 1060707 0.664 125.8 85.3 94.3 102.9 2007年3月25.6日
2007年4月9日 0970339 0.624 110.1 84.3 93.0 102.6 2007年3月25.1日
2007年5月31日 0867738 0.702 093.1 89.2 78.1 124.9 2007年6月14.4日
2007年6月9日 0959197 0.712 108.2 89.6 73.1 124.2 2007年6月14.2日
2007年6月19日 0997522 0.720 114.8 89.7 74.8 124.3 2007年6月14.3日
2007年6月28日 1119652 0.748 136.4 90.5 77.3 124.5 2007年6月14.6日
2006 RH120の地球に対する接近距離[1]
日時
(TDB)
最接近距離
(km)
月軌道
との比
2006年9月11日07:39 839344 2.18
2007年1月3日18:02 533436 1.39
2007年3月25日12:31 353455 0.92
2007年6月14日05:30 276839 0.72



  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n (2006 RH120)”. JPL Small-Body Database Browser. JPL. 2020年2月29日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l 2006 RH120”. Minor Planet Center. 2020年2月29日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j k 2006 RH120 ( = 6R10DB9) (A second moon for the Earth?)”. Great Shefford Obsevatory. 2020年2月29日閲覧。
  4. ^ a b c d e Earth's "Other Moon"”. Sky & Telescope (2007年4月17日). 2020年2月29日閲覧。
  5. ^ a b c d MPEC 2008-D12 : 2006 RH120”. Minor Planet Electronic Circular. Minor Planet Center. 2020年2月29日閲覧。
  6. ^ NEO Earth Close-Approaches”. Near Earth Object Program. NASA. 2020年2月29日閲覧。 “(2006 RT120)で検索”
  7. ^ a b New 'moon' found around Earth BBC News
  8. ^ The DISTANT ARTIFICIAL SATELLITES OBSERVATION (DASO) Circulars Minor Planet Center
  9. ^ "Pseudo-MPEC" for 6Q0B44E Project Pluto
  10. ^ "Pseudo-MPEC" for 6R10DB9 Internet Archive: Wayback Machine
  11. ^ Mystery Mini Moons: How Many Does Earth Have? Discovery News


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