阿閦如来 阿閦如来の概要

阿閦如来

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/10 10:03 UTC 版)

阿閦如来
阿閦如来(蓮華院多宝塔の五智如)
阿閦如来
梵名 Akṣobhya
(アクショーブヤ)
蔵名 མི་འཁྲུགས་པ།
別名 阿閦仏
無動如来
無動
無瞋恚
無怒
不動
種字  ウーン
真言・陀羅尼 オン・アキシュビヤ・ウン
経典大宝積経
信仰 密教
チベット仏教
ネパールの仏教
浄土 東方妙喜世界
関連項目 薬師如来
宝幢如来
降三世明王
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阿閦如来(『図像抄』)

後期密教においては、無上瑜伽タントラの各経典の主尊と同一視されながら、曼荼羅において中尊とされ、阿閦金剛(あしゅくこんごう、: Akṣobhyavajra, アクショーブヤ・ヴァジュラ)の名で呼ばれる。

三昧耶形は五鈷金剛杵種字はウーン(हूं [hūṃ])[7]真言はオン・アキシュビヤ・ウン[7]。密号は不動金剛[4]

概説

「阿閦仏国経」(『大宝積経』第六不動如来会)によれば、[要出典]昔、東方の阿比羅提(あびらだい、: Abhirati(アビラティ)。妙喜・善快と訳す)という国に現れた大目(不動如来会には広目と記される)如来のところで無瞋恚・無婬欲の願を発し修行して、東方世界で成仏したといわれる[4]。阿閦仏はその国土で説法中であるという[4]

梵名のアクショーブヤとは「揺れ動かない者」という意味で、この如来の悟りの境地が金剛(ダイヤモンド)のように堅固であることを示す[6]

大乗仏教空思想を説いた『維摩経』の主人公維摩居士も、阿閦仏国より来生したとされている[8]

阿閦如来は密教における金剛界五仏(五智如来)の一尊で[3]金剛界曼荼羅では大日如来の東方(画面では大日如来の下方)に位置する。唯識思想でいう「大円鏡智」(だいえんきょうち)を具現化したものとされる。また胎蔵界の東方、宝幢如来と同体と考えられている。印相は、右手を手の甲を外側に向けて下げ、指先で地に触れる「触地印」(そくちいん、「降魔印:ごうまいん」とも)を結ぶ。これは、釈迦が悟りを求めて修行中に悪魔の誘惑を受けたが、これを退けたという伝説に由来するもので、煩悩に屈しない堅固な決意を示す[6]

日本の仏教(主に真言宗天台宗)では、五大明王のうち東方に位置する降三世明王を阿閦如来の化身とする[9]。また、同じく東方を仏国土とする薬師如来と同一視されることもある[10]

造像

日本における阿閦如来の彫像は、五仏(五智如来)の一尊として造像されたものが大部分であり、阿閦如来単独の造像や信仰は稀である。重要文化財指定品で阿閦如来と称されているものには、奈良・法隆寺大宝蔵殿南倉安置の木造坐像、和歌山・高野山親王院の銅造立像がある。

空海が開創した高野山金剛峯寺金堂(旧堂は1926年に焼失)の本尊は阿閦如来と伝承されていたが、薬師如来とする説もあり、さらには阿閦と薬師は同体であるとする説もあった[11]。同像は古来から完全な秘仏であったことに加え、1926年の火災で焼失してしまったため、その像容は不明である[11]


注釈

  1. ^ 阿閦如来の「」(しゅく)に「」(せん)を充てる場合がある[1][2]が、意味合いも読みも相違がある。

出典

  1. ^ 阿閃如来”. 龍光山正宝院. 2021年8月30日閲覧。
  2. ^ 十一 知名度は低いけどダイナマイトパワー 阿閃如来【あしゅくにょらい】”. 高野山真言宗 末代山 妙楽寺. 2021年8月30日閲覧。
  3. ^ a b c d 阿閦仏(あしゅくぶつ)とは - コトバンク”. 朝日新聞社. 2017年10月6日閲覧。
  4. ^ a b c d e 『総合仏教大辞典』 1988, p. 13.
  5. ^ 金子大輔『阿閦仏の研究』, p. 82.
  6. ^ a b c ブッダの教えを読みとく(2)阿閦仏と触地印”. 宗教情報センター. 2021年8月30日閲覧。
  7. ^ a b 藤巻一保・羽田守快・大宮司朗 『印と真言の本』 学研、2004年2月、p.97。
  8. ^ 金子大輔『阿閦仏の研究』, p. 82-84.
  9. ^ 精選版 日本国語大辞典』《「降三世明王」の解説》小学館https://kotobank.jp/word/%E9%99%8D%E4%B8%89%E4%B8%96%E6%98%8E%E7%8E%8B-62121 
  10. ^ 阿閦如来の役割・由来・見られる寺院・レプリカ通販可否まとめ”. 和のすてき 和の心を感じるメディア. 2021年8月30日閲覧。
  11. ^ a b 高野山霊宝館【高野山と文化財:文化財年表 金堂焼失諸仏】”. 高野山霊宝館. 2017年10月6日閲覧。
  12. ^ Hevajra Buddha”. Tibetan Buddhist Encyclopedia. 2021年8月30日閲覧。
  13. ^ Akshobhya”. Tibetan Buddhist Encyclopedia. 2021年8月30日閲覧。 “Aksobhya is well known in Nepal and Tibet.”


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