選択公理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/23 09:30 UTC 版)
代わりとなる公理
選択公理とは矛盾するが、ZFCから選択公理を除いたZFとは矛盾しないような命題は数多く発見されている。たとえばロバート・ソロヴェイは強制法を用いて実数の集合が全てルベーグ可測であるようなZFのモデル(ソロヴェイモデル)を構成した。
1964年にヤン・ミシェルスキが導入した決定性公理もその一つである。これはその後、無矛盾性証明のために頻繁に用いられている。ZFに決定性公理を付け加えた公理系の無矛盾性と、ZFに選択公理と巨大基数の一種であるウッディン基数の存在を公理として付け加えた公理系の無矛盾性が同値となるというウッディンの定理は、互いに矛盾する公理を関係づける非常に重要なものである。
選択公理の変種
選択公理には様々な変種が存在する。
可算選択公理
選択公理よりも弱い公理として、可算選択公理(英: countable axiom of choice,denumerable axiom of choice)というものも考えられている[2]。全ての集合は可算集合を含むこと、可算集合の可算和が可算集合であることは、この公理により証明できる。
カントール、ラッセル、ボレル、ルベーグなどは、無意識のうちに可算選択公理を使ってしまっている。
従属選択公理
有限集合の族に対する選択公理
集合族の要素を特定の有限集合に制限した公理も研究されている[3]。即ち、
ACn : n元集合からなる任意の集合族は選択関数を持つ。
という形の公理である。
この種の公理について以下のようなことが知られている(すべてZF公理系を仮定)。
- AC2 AC4
- ならば AC2 ACn
- 各 について ACn が成り立つ仮定の下でも、「有限集合からなる任意の集合族は選択関数を持つ」(Axiom of choice for finite sets)を証明できない。
- ZFでは AC2 を証明できない。
AC2 AC4を示すには、4元集合からなる集合族 に選択関数が存在することを示せば良い。まず に AC2 を適用して、選択関数 を得る。次に を使って の各元 から元をひとつ取りだすことを考える。集合 を とおくと、 は 6元集合となる。 の元 に対し、 という関数を定め、 の最小値を とおく。集合 を とおくと、 は4元集合なので の濃度は のいずれかであるが、と仮定すると、となり矛盾する。 である場合は、 の元を選択関数 の値とすればよい。 の場合は、 とする。最後に である場合は、 の元を の値とすればよい。
脚注
注釈
- ^ 1926年にアドルフ・リンデンバウムとアルフレト・タルスキが示したが、証明は散逸した。同内容を1943年にヴァツワフ・シェルピニスキが再発見し1947年に出版した。
出典
- ^ Zermelo, Ernst (1904). "Beweis, dass jede Menge wohlgeordnet werden kann". Mathematische Annalen 59: 514-16.
- ^ 田中(1987)、36頁。
- ^ Jech, Thomas J. (2008-07-24), The Axiom of Choice, Dover Books on Mathematics (Paperback ed.), United States: Dover Publications Inc., ISBN 978-0-486-46624-8
選択公理と同じ種類の言葉
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