甘酒 歴史

甘酒

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/29 22:59 UTC 版)

歴史

甘酒の起源は古墳時代に遡り、『日本書紀』に甘酒の起源とされる天甜酒(あまのたむざけ)に関する記述がある。古くは「一夜酒(ひとよざけ)」または「醴酒(こさけ、こざけ(「濃い酒」の意味))」と呼ばれた[2]

奈良時代の歌人である山上憶良が、『貧窮問答歌』において「糟湯酒」に触れており[3]、当時から既に酒粕による甘酒の製造があったことが窺える。

かつてはに、「甘い・甘い・あ〜ま〜ざ〜け〜」などの文句で行商も多かった。俳句において夏の季語となっている。

江戸時代には夏の風物詩だった[2]。『守貞漫稿』には、「夏月専ら売り巡るもの」が「甘酒売り」と書かれており、栄養豊富な甘酒は体力回復に効果的ないわば「夏の栄養ドリンク」として、非常に人気がある飲み物であった。当時の江戸幕府は庶民の健康を守るため、老若男女問わず購入できるよう甘酒の価格を最高で4に制限しており、武士内職としても甘酒造りが行われていた。

販売

正月には、参拝客に甘酒を振る舞ったり、自宅に持ち帰る甘酒を販売する寺社が多い。また、米農家が収穫を感謝するため、甘酒を造ったり、祭りに甘酒を供える風習が残っている土地もある。

そのまま飲める缶入り、瓶入りのほか、濃縮や粉末、フリーズドライのものが販売されており、ミルクスタンドでは「冷やし甘酒」、また「甘酒ヨーグルト」など各種製品も販売されている。缶入りは冬場に自動販売機で多く見かけられる。

雛祭りの際に飲まれる「白酒」は製法が異なるよく似た別物であるが、甘酒がエタノール含有が僅かなことや安価だという理由で、代品として使われることが現在では一般的である。

現在市販されている甘酒は、希釈前提のビニール袋詰めのものが麹製で、それ以外は酒粕製が主流である。森永製菓の缶入り甘酒(森永甘酒)は、麹と酒粕の双方を使用して製造していると謳っている[4]ミツカングループの中埜酒造ではフルーツを原料に使用したアルコールが一切含まれていないフルーツ甘酒を製造販売している[5]。また、マルコメは「プラス糀」シリーズの中で麹を使った無加糖の製品を販売しており[6]離乳食としての利用法も提案している。白鶴は乳酸菌入りの缶入り甘酒を販売している[7]

栄養

甘酒には、ビタミンB1ビタミンB2ビタミンB6葉酸食物繊維オリゴ糖や、システインアルギニングルタミンなどのアミノ酸、そして大量のブドウ糖が含まれている[8]。ブドウ糖以外の成分は原料米とのコウジカビ属(Aspergillus)に由来するが、これらの栄養は、点滴とほぼ同じ内容であることから、「飲む点滴」と称されることもある[9][10]

発酵食文化研究家の是友麻希によると、特にブドウ糖は目が覚める朝、空腹時に何かと一緒に摂取すると血糖値が上がるので効果的であるという[11]。同様に食事前に摂取することで、その他の栄養も併せた結果食後の血糖値を抑えることが可能とされている。

冬季では体が温まるようにあるいは風邪の予防として甘酒を熱くし、夏季はさっぱりと飲めるようにショウガ汁を入れて飲まれることがある。


  1. ^ 文部科学省 日本食品標準成分表2015年版(七訂)
  2. ^ a b 甘酒 森永製菓『甘酒のルーツ』
  3. ^ 奈良時代の和歌「貧窮問答歌」からみる昔の甘酒の世界あまざけ.com 2020年2月26日閲覧
  4. ^ 甘酒森永製菓株式会社 2020年2月26日閲覧
  5. ^ フルーツあまざけすっきりりんごフルーツあまざけさわやかブルーベリー
  6. ^ プラス糀 甘酒
  7. ^ "乳酸菌の入った甘酒 缶入り(清涼飲料水)". 白鶴酒造. 2020年11月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年1月20日閲覧
  8. ^ 小泉武夫「食と日本人の知恵」『日本農村医学会雑誌』第61巻第6号、日本農村医学会、2013年3月、835-839頁、doi:10.2185/jjrm.61.835ISSN 04682513NAID 10031177640 
  9. ^ a b c 後藤香織. “甘酒が「飲む点滴」と呼ばれる理由。美肌や整腸作用って本当?”. 小学館. 2023年2月25日閲覧。
  10. ^ 食事メニューで夏バテ防止 肉や野菜をプラス 産経ニュース、2023年2月25日閲覧
  11. ^ 『週刊朝日』 2017年4月14日号
  12. ^ 「甘酒」はお酒ではないのですか? よくある質問【甘酒】 | 大関株式会社
  13. ^ 万田発酵 甘酒の原材料:米麹、酒粕
  14. ^ "あま酒". みやここうじの伊勢惣. 2011年11月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年12月26日閲覧
  15. ^ 野白喜久雄, 小崎道雄, 好井久雄, 小泉武夫『醸造学』(改訂)講談社、1993年。ISBN 978-4-06-153706-4NCID BN0882929Xhttps://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002242987-00 
  16. ^ 日本酒造組合中央会 「水分50%、アルコール分8%、デンプン・糖分25%、タンパク質15%、その他B1、B2、B6などのビタミン」
  17. ^ 消費・安全局消費者情報官消費者の部屋 (2012年1月). “甘酒と白酒の違いはなんですか。”. 消費者の部屋. 農林水産省. 2019年6月17日閲覧。
  18. ^ maruo (2016年2月29日). “【管理栄養士が教える】ひな祭りだけじゃない!離乳食に「甘酒」がオススメな理由 (2016年2月29日)”. It Mama (エキサイトニュース). https://www.excite.co.jp/news/article/ItMama_13587/ 2019年6月17日閲覧。 
  19. ^ 3月の行事”. 東白川村役場. 2019年6月17日閲覧。
  20. ^ 千葉いずみ (25 March 2015). 地域個性を活かした地域食生活再生計画に関するマネジメント実証研究 (博士(生物資源科学)甲第4980号). 日本大学. p. 26. doi:10.15006/32665A4980
  21. ^ 髙山卓美, 斉藤敦子, Pham Thi THU, Nguyen Thu VAN, Dan Hong ANH「ベトナムの伝統的な酒:(その1)吸管酒ズイウ・カン(Ruou Can)」『日本醸造協会誌』第110巻第6号、日本醸造協会、2015年、394-409頁、doi:10.6013/jbrewsocjapan.110.394ISSN 0914-7314NAID 130006729492 
  22. ^ CNS/JCM/AFPBB News (2018年9月24日). “中国の発酵食品「酒醸」 昔ながらの製法 写真4枚 国際ニュース:AFPBB News”. AFPBB. https://www.afpbb.com/articles/-/3190277 2019年6月15日閲覧。 
  23. ^ 甘酒(あまざけ)とは”. 日本大百科全書(ニッポニカ). 小学館. 2019年6月13日閲覧。
  24. ^ 酒醸(チューニャン)”. 業務用商品情報. ヒガシマル醤油. 2019年6月15日閲覧。
  25. ^ コリアネット ユン・ソジョン記者: “シッケ(식혜)、梅雀菓(매작과)”. 韓国料理レシピシリーズ. Korea.net : The official website of the Republic of Korea (2016年12月30日). 2019年6月17日閲覧。






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