物性物理学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/22 18:08 UTC 版)
歴史
18世紀以前において、物理学は物体の運動や天体の運行など解析学や幾何学によって説明できる分野を中心としていた。これに対して化学は物質の性質をあるがままに、すなわち博物学的に記述することが一般的であった。
18世紀に発展した熱力学は、物質としての気体の性質を巨視的な観点から現象論的に体系づけたものであり、これが物性物理学の基礎となった。19世紀後半になると物質の熱力学特性を、より微視的な立場から体系的に記述する統計力学の考え方が本格的に導入され、現象論に過ぎなかった熱力学に基礎付けがなされた。さらに20世紀前半には量子力学が確立し、固体の結晶構造や化学反応を記述できるようになった。
また最近では高分子や液晶、コロイド等を対象とするソフトマター物理学も物性物理学の一つの分野となっている。ただし、日本において物性論あるいは物性物理学という言葉が使われるようになったのは1940年代以降である。
理論
物性理論は、理論モデルを用いた物質状態の性質の理解と関連する分野である。これには、固体の電子状態モデルの研究、例えば、ドルーデモデル・バンド構造・密度汎関数理論といったものが含まれる。また、相転移の物理の理論モデルの研究(例えば臨界指数の理論やギンツブルグ-ランダウ理論など)や、量子場の理論や繰り込み群に使われる数学的手法を応用するといった分野も発展している。現代的な理論研究は、電子状態の数値計算や、高温超伝導・トポロジカル秩序・ゲージ対称性等の現象理解のための数学の利用とも関係している。
実験
物性実験は、実験装置を用いて物質の新しい性質を発見することに関連する分野である。例えば、電磁場を作用させて周波数特性や熱伝導特性、温度を測定したりする[1]。よく用いられる実験手法には、X線や赤外線、非弾性中性子散乱を利用した(広義の)分光法や、熱的応答の研究、つまり比熱や伝導による輸送熱の測定といったものがある。
関連分野
注釈
出典
- ^ Richardson, Robert C. (1988). Experimental methods in Condensed Matter Physics at Low Temperatures. Addison-Wesley. ISBN 978-0-201-15002-5
- ^ Cohen, Marvin L. (2008). “Essay: Fifty Years of Condensed Matter Physics”. Physical Review Letters 101 (25): 250001. Bibcode: 2008PhRvL.101y0001C. doi:10.1103/PhysRevLett.101.250001. PMID 19113681 2012年3月31日閲覧。.
- ^ Condensed-Matter Physics, Physics Through the 1990s. National Research Council. (1986). ISBN 978-0-309-03577-4
- ^ Committee on CMMP 2010; Solid State Sciences Committee; Board on Physics and Astronomy; Division on Engineering and Physical Sciences, National Research Council (21 December 2007). Condensed-Matter and Materials Physics: The Science of the World Around Us. National Academies Press. ISBN 978-0-309-13409-5
- ^ a b c Yeh, Nai-Chang (2008). “A Perspective of Frontiers in Modern Condensed Matter Physics”. AAPPS Bulletin 18 (2) 2018年6月19日閲覧。.
物性物理学と同じ種類の言葉
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