松尾観音寺
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/24 03:32 UTC 版)
概要
伊勢市街地の東側、倉田山と呼ばれる緩やかな丘陵地に位置する[3]。平時の境内は静けさが保たれ、近くには夫婦龍神伝説のある二ツ池がある[4]。厄除開運のみならず、縁結びにも利益(りやく)があるという[1]。
行基作と伝わる十一面観音を本尊とし、本尊を安置する本堂は、般若心経1万巻を納めた青銅製の擬宝珠を屋根に戴く[3]。拝観時間は8時から16時まで[5]。
歴史
寺伝によれば、712年(和銅4年)行基の開創とされ[6]、伊勢神宮へ参拝に訪れた行基が[1]、自ら十一面観音像を刻んで本尊としたという[3]。その後は伊勢国司の北畠氏や北畠一族の木造氏によって庇護を受けた[7]。
龍神伝説
応永10年5月4日(ユリウス暦:1403年5月24日)、本堂から出火すると近くの二ツ池から雌雄の龍が現れ、雄の龍が火の中から十一面観世音を救出し、雌の龍が水を吹きかけて消火活動を行った[6]。大火から龍神が観音を守ったとの伝説から、毎月末には僧侶が龍神の好物という酒と卵を供える[4]。この伝説をきっかけに、伊勢の写真家・中野晴生は北海道から沖縄県まで全国50の湖沼とそれにまつわる説話を集め、写真集『湖沼の伝説』を新潮社から2000年(平成12年)に出版した[8]。
1982年(昭和57年)、上記の龍神伝説にちなみ、紅白のキリシマツツジ300本を龍の形に植えた[5]。毎年春に先行して咲く赤い花を追うように白い花が咲く[5]。
2006年(平成18年)頃には本堂の床板から龍のような模様が発見され、参拝者の間で「一目見て、触れると願いが叶う」などと話題となり、新たな龍神伝説が生まれた[6]。
行事
毎月18日が縁日であり[2]、この日には「観音市」が開かれる[1]。観音市は地元有志で作る十八会が主催する[6]。出展者の手作りの品を販売する「手作り市」や骨董市を同時開催することがある[9]。
初午大祭
松尾観音寺が最も賑う祭りであり、厄除けのために[3]6万人超の人が訪れる[1]。毎年3月の初午の2日間催行され、露店も多数出店する[2]。特に災いを弾き去るという「猿はじき」(縁起物の玩具)を買い求める人が多く見られる[2]。また、「身に付けているものを1つ落としていくと、厄を落とすことができる」という信仰から、ハンカチを置いていく参拝者が見られる[10]。
境内では奉納演奏、福引きなども行われ、何本もの幟が祭りの雰囲気を盛り上げる[3][4]。祭りの間に執り行われる厄払いは、1年でこの時のみの特別な秘法で行われる[11]。
百万遍念仏大連珠繰り
毎年8月9日に百万遍念仏が行われている[2]。『伊勢市史第八巻』によれば、参拝客は伊勢市や鳥羽市の人が多いが、伊勢市内で百万遍念仏が行われていることはあまり知られていないという[2]。
- ^ a b c d e 伊勢文化舎(2008):107ページ
- ^ a b c d e f 伊勢市 編(2009):530ページ
- ^ a b c d e 伊勢志摩編集室 編(1998):88ページ
- ^ a b c 伊勢志摩出版社(1982):32ページ
- ^ a b c 中平雄大"中日新聞:伊勢の松尾観音寺でツツジ見頃:三重"<ウェブ魚拓>中日新聞2013年4月21日(2013年5月13日閲覧。)
- ^ a b c d “「竜」出現?竜神伝説残る伊勢の松尾観音寺-口コミで話題広がる”. 伊勢志摩経済新聞 (2008年5月15日). 2013年5月2日閲覧。
- ^ 特定非営利活動法人サルシカ"伊勢市『松尾観音寺』"<ウェブ魚拓>ゲンキ3ネット(2013年5月13日閲覧。)
- ^ "湖沼の伝説、写真に 伊勢出身の写真家・中野晴生さんが出版"朝日新聞2000年9月28日付朝刊、三重版24ページ
- ^ 特定非営利活動法人サルシカ"観音さんの「手づくり市と骨董市」/松尾観音寺 "<ウェブ魚拓>ゲンキ3ネット(2013年5月13日閲覧。)
- ^ "ハンカチ落とし厄落とす 伊勢・松尾観音寺"朝日新聞2011年3月4日付朝刊、三重版31ページ
- ^ a b ミナミエnet(2013)"龍池山松尾観音寺の初午大祭"<ウェブ魚拓>(2013年5月13日閲覧。)
- ^ a b 三重県観光連盟"松尾観音寺の観光施設・周辺情報"<ウェブ魚拓>観光三重(2013年5月13日閲覧。)
- ^ 公益社団法人伊勢志摩観光コンベンション機構"松尾観音寺 - スポット詳細"<ウェブ魚拓>(2013年5月13日閲覧。)
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