岡山電気軌道 概要

岡山電気軌道

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/10 01:40 UTC 版)

概要

長崎電気軌道などとともに、明治時代創業の日本の鉄道会社の中で創業時から社名を一回も変更していない珍しい鉄道会社で2010年(平成22年)6月9日に創立100周年を迎えた(同年7月31日には親会社の両備ホールディングスが創立100周年を迎える)。

戦前は岡山市周辺の乗合バス事業で西大寺鉄道(後の両備バス、現在の両備ホールディングス)とお互いの傘下のバス会社同士が競争していたが、1935年に岡電・西大寺鉄道両者傘下のバス会社が合併して岡山バスが発足したことで終結にむかい、戦後1960年に両備バス出身の社長を迎えて以来(役員としては1952年から)、資本的にも人的にも両備ホールディングスとの繋がりが深い。現在は両備ホールディングスが岡山電気軌道の筆頭株主であり、また岡山電気軌道が両備ホールディングスの筆頭株主でもある。両備グループ代表で両備ホールディングス会長兼CEOの小嶋光信が社長を兼務し、両備グループの中核企業の一つとなっている。

バス事業

長年岡電バスが市内線、両備バスが郊外線および長距離バス・観光バスという棲み分けがされてきた。岡山市街の拡大に合わせて路線は広がったが、両備が持つ西大寺・玉野などのような高収益路線がなく、経営状況は必ずしも良好ではなかったため、1980年代には労使紛争も多発し、ストライキで市内交通が麻痺することもしばしば起きた。

その後不採算路線の廃止などの合理化で経営状況が安定する一方、両備グループがグループ経営を強化し、よりグループ内での結びつきが強くなっている。これは、下津井電鉄とは比較的関係が良好であるが、中鉄バスとは対立することが多いなど岡山県内のバス会社同士の関係が必ずしも良好ではないことから両備としては味方を増やし発言力を強める意味合いもある。

2003年4月に実施された中国ジェイアールバス両備線の運行移管時の協議のこじれが発端で、中鉄バスとの間に競合関係(岡山駅 - 中庄駅間の場合、同じ区間に両備バス・岡電・下津井電鉄の共同運行系統と中鉄単独系統の2系統が運行されている〈中鉄バスが2016年1月31日に撤退〉)が生じ、その後中鉄バスが運行していた岡山空港リムジンバスへの参入や、お互いの営業エリアに競合する新規路線を開設している。

2005年2月中鉄バスと神姫バスの共同運行で運行している岡山 - 神戸間の高速バス路線に、岡山電気軌道の単独運行で高速バス路線を開設して同路線に参入するなど、さらに熾烈さを増していた。

しかし、両備グループ2社(両備バス・岡山電気軌道)及び中鉄バスの3社が岡山県の公共交通システムを互いに協力することを目的として、2005年7月11日に両社社長の初回会談が行われ、2006年2月6日に調印式が行われた。2007年1月1日に岡山空港リムジンバスが中鉄バス・岡電バスの共同運行となり、1月4日に岡南飛行場線・労災病院線を岡電バスに、半田山ハイツ・津高台団地線・免許センター線を中鉄バスにそれぞれ一本化し、中鉄バスが運行していた新保・万倍線と泉田・福富西三丁目線、労災病院線(普通便)は岡電バスへ運行を移管した。2008年2月1日には、岡山 - 神戸間の高速バスも両備グループ内の高速バス事業効率化のため、両備ホールディングス(両備バス)へ運行移管した。2008年7月22日からは、国道53号線で岡電バスと中鉄バスがそれぞれ運行していた津高営業所線(岡電バス運行)、半田山ハイツ線・津高台団地線、国立病院線、運転免許センター線(いずれも中鉄バス運行)の4路線を両社の共同運行[注釈 3]とし、国道180号線を運行する岡山駅 - 万成間を中鉄バスとの運行本数調整のために運行を休止した。

軌道事業

軌道事業については路線長が短く、日本全国で最小規模とされる。懸案であった岡山駅構内への延伸が具体化している。加えて岡山市役所岡山大学病院方面への延伸など様々な構想が浮かんでいる。

また2004年に鉄道事業廃止提出書を提出し、廃止が予定されていた南海電気鉄道貴志川線の事業を引き継ぐことを2005年4月28日に発表し、子会社の和歌山電鐵2006年4月1日に貴志川線の事業を南海電気鉄道から引き継いだ。他にも名古屋鉄道の岐阜地区600V線区(岐阜市内線揖斐線美濃町線田神線)や日立電鉄北海道ちほく高原鉄道の廃止後の受け皿として名前が浮上したが、これらは実現することなく廃線となっている(詳細は「事業撤退が表明された鉄道路線の運行支援」の節を参照)。

スルッとKANSAI協議会に加盟していて、2006年10月1日から両備ホールディングス(両備バス)・下津井電鉄と同時に非接触ICカードシステム「Hareca」(ハレカ)を導入し、PiTaPaICOCAの利用も可能になった。2017年10月1日からは、Hareca・PiTaPa・ICOCA以外のSuicaなどの交通系ICカード全国相互利用サービス対応のICカードも使用できるようになった[4]。ただし、バス・路面電車内でチャージできるのはHarecaのみで、それ以外のICカードは運賃の支払いのみとなる(運賃表示器の下にチャージはHarecaのみ行う旨を記載した紙が貼られている)。そのためHareca以外のICカードを利用する場合は、乗車前にICOCA等対応の駅、バス停近所のコンビニ、イオン系列のスーパー(イオンザ・ビッグ山陽マルナカ)でチャージしておく必要がある。なお、ICOCAで運賃を支払って利用明細(利用履歴)をJR西日本の駅で印字すると、利用駅欄の入場駅部分に「バス等」、出場駅部分にはバスに乗った場合には「岡電バ」、路面電車に乗った場合には「岡電軌」と表示される。


注釈

  1. ^ 両備グループ代表・和歌山電鐵代表取締役社長などを兼務。
  2. ^ 和歌山電鐵代表取締役専務を兼務。
  3. ^ 共同運行時に、津高営業所線が半田山ハイツ線・津高台団地線に統合され、路線数としては3路線となった。
  4. ^ 三菱ふそうエアロバスKL-MS86MP、西日本車体工業製のボディ
  5. ^ 移管と同時に愛称名を「リョービエクスプレス」に改称。
  6. ^ 共同運行後は3路線。
  7. ^ 天満屋バスセンター - 岡山駅 - 市役所前 - 大元駅法務局入口 - おおもと病院 - 今五丁目 - 西市本村公園 - 平田中央 - 中仙道 - 北長瀬駅前
  8. ^ 新岡山港、ふれあいセンター、山陽学園大学、湊・倉益、岡大付属小学校、妹尾、重井病院、コンベックス、中庄、RSKバラ園、清心高校、クラーク高校の各路線で、免許距離 30.8km。
  9. ^ 両備ホールディングス(両備バス)・下津井電鉄でも同時にサービス開始。
  10. ^ 140円は1989年(平成1年)10月1日改定。120円区間は1999年(平成11年)12月14日設定(当初は100円)、2022年(令和4年)10月1日改定。
  11. ^ a b 「たま電車」は2010年10月13日の項目では7101号だったが、2013年3月15日の項目では7001号となっている[27]
  12. ^ 岡山駅西口の場合、券売機は2台置いてあるが、IC対応はそのうちの1台だけ。
  13. ^ 循環運行時には、岡大入口 → 岡大西門 → 福居入口 → 岡大北口 → 津島東三丁目 → 岡山理科大学 → 津島東三丁目 → 保育所前 → 岡大西門 → 岡大入口の順に運行。
  14. ^ 問屋町 → 西小学校前の順に運行。
  15. ^ 伊福町三丁目 → 伊島校前 → 生涯学習センター(サイピア) → 京山 → 別所 → 伊福町三丁目の順に運行。伊福町三丁目 → 伊島校前間で京山入口には停車しない。
  16. ^ 停留所名は後楽園・藤原団地方面バス停が「RSK本社前・美術館前」、天満屋BS・岡山駅方面バス停が「美術館前・RSK本社前」。
  17. ^ 団地入口 → 藤原光町 → 藤原団地 → 清水 → 団地入口の順に運行。
  18. ^ 岡南産婦人科入口 → 福吉町 →福島郵便局前 → 海岸通 → エブリイOkanaka岡南築港店前築港元町 → 三浜町の順に運行。
  19. ^ 岡南産婦人科入口 → 福吉町 →福島郵便局前 → クラレ岡山前 → 北浦渡船場 → 中央市場 → エブリイOkanaka岡南築港店前 → 築港元町 → 三浜町の順に運行。
  20. ^ 急行運転区間は、運行開始当初は岡山駅 - 洲崎間だったが、その後岡山駅 - 豊成間に短縮され、さらに岡山駅 - 清輝橋間に短縮された。
  21. ^ 岡山ろうさい病院入口 → 岡山ろうさい病院 → 第一ひかりこども園前の順に運行。
  22. ^ 新保北 → 新保南 → 新保 → 西市デイサービスセンター前 → 西市団地 → 泉田北 → 新保北の順に運行。

出典

  1. ^ a b c d e f 鉄道統計年報平成29年度版 - 国土交通省
  2. ^ 岡山電気軌道 - 両備グループ新卒採用サイト
  3. ^ 国土交通省鉄道局監修『鉄道要覧』令和元年度版、電気車研究会・鉄道図書刊行会
  4. ^ a b 10月1日から岡山地区のバス・路面電車で利用可能なICカードを拡大 - 鉄道ファン・railf.jp 鉄道ニュース、2017年9月27日
  5. ^ 岡山電気軌道 会社概要
  6. ^ 両備岡電デジタルのりもの博物館 岡山電気軌道 路面電車のあゆみ
  7. ^ a b 『電気協会中国支部十五年史』(国立国会図書館デジタルコレクション)
  8. ^ 『電気事業要覧. 第9回』(国立国会図書館デジタルコレクション)
  9. ^ 『電気事業要覧. 第18回 昭和2年2月』(国立国会図書館デジタルコレクション)
  10. ^ 岡山電気軌道 新・路面電車ロケーションシステムを設置』(プレスリリース)岡山電気軌道、2016年4月5日https://ryobi.gr.jp/news/229/2022年6月8日閲覧 
  11. ^ 岡山電気軌道株式会社申請の軌道事業の特許 〜路面電車が岡山駅前広場に乗り入れ、利用者利便性が向上します〜』(PDF)(プレスリリース)国土交通省鉄道局都市鉄道政策課、2020年3月11日。 オリジナルの2020年9月14日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20200914055315/https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001332245.pdf2020年9月14日閲覧 
  12. ^ 両備ホールディングス ニュースリリース 2009.6.29
  13. ^ 両備グループ、不採算31路線で廃止届 バス主力路線の他社参入に反発 - 日本経済新聞、2018年2月9日
  14. ^ 両備、バス廃止届撤回へ 自治体との協議会開催で - 日本経済新聞、2018年3月14日
  15. ^ 岡山電気軌道・両備HDによる共同経営が、4月1日から始まります 〜独占禁止法特例法に基づき共同経営を認可〜』(PDF)(プレスリリース)国土交通省総合政策局地域交通課、2021年3月25日。 オリジナルの2021年3月25日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20210325133232/https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001394679.pdf2021年3月25日閲覧 
  16. ^ NPO法人公共の交通ラクダ
  17. ^ 「エコ公共交通大国おかやま構想実現の提言」 ~世界一のエコ公共交通都市を岡山市において実現~
  18. ^ 岡山市路面電車ネットワーク計画
  19. ^ 路面電車乗り入れ事業費が倍増 完成時期ずれ込み、岡山市試算 - 山陽新聞、2022年1月15日
  20. ^ 令和4年2月14日市長記者会見
  21. ^ 岡山電気軌道、「チャギントン」とコラボ 路面電車に観光車両導入へ - 産経ニュース、2018年1月13日
  22. ^ 岡山電軌、観光電車「チャギントン電車」を導入『鉄道ファン』交友社 railf.jp鉄道ニュース 2018年1月19日
  23. ^ a b 岡山電気軌道「おかでんチャギントン」キャラクターを観光電車に”. マイナビニュース. マイナビ (2019年3月15日). 2019年12月30日閲覧。
  24. ^ “赤と青「チャギントン」電車出発 岡山市中心部走る予約制観光車両”. 山陽新聞. (2019年3月16日). https://www.sanyonews.jp/article/880660 2019年12月30日閲覧。 
  25. ^ 「おかでんチャギントン電車」誕生!』(プレスリリース)両備グループ、2018年10月25日https://ryobi.gr.jp/message/5103/2018年11月11日閲覧 
  26. ^ おかでんチャギントン”. 岡山電気軌道 (2018年10月1日). 2018年11月11日閲覧。
  27. ^ 岡山電気軌道株式会社News(2013年3月18日閲覧)
  28. ^ バスで”. 岡山桃太郎空港. 2019年8月4日閲覧。
  29. ^ 岡山電気軌道 空港リムジンバスにチャギントンラッピング車両登場』(プレスリリース)両備グループ、2019年10月22日https://www.ryobi.gr.jp/news/5540/2019年12月29日閲覧 
  30. ^ 路線経路変更のご案内” (PDF). 岡電バス (2019年1月10日). 2019年1月18日閲覧。
  31. ^ 岡山電気軌道が「うどん屋」開業!出汁にこだわり、店名は「たま駅長」由来……って、それは和歌山の路線じゃないの? - 鉄道ニュース 2022年10月28日
  32. ^ 『おかでん七十年の歩み』岡山電気軌道、1980年、173頁






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