少年犯罪 少年犯罪の概要

少年犯罪

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/21 03:28 UTC 版)

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各国の刑事手続

日本

日本では、少年法2条1項に定義されている少年、すなわち20歳に満たない者(男女とも)が犯した、または犯したとされる犯罪に対してこの言葉を用いる。

法務省が発行する犯罪白書では、殺人と強盗を「凶悪犯」としている。一方、「警察白書」では、殺人強盗放火強姦を「凶悪犯罪」としている。

少年法により、成人とは違った特別の措置が講ぜられる(2007年(平成19年)11月1日改正)。

  • 14歳未満の場合、児童相談所へ通告。必要な場合により児童相談所経由で家庭裁判所へ送致。
  • 14歳以上の場合、成人と同様に扱い警察や検察庁の捜査が行われ家庭裁判所に送致。

家庭裁判所の審判の結果により、不処分、保護観察、児童自立支援施設、少年院、少年刑務所から、最もふさわしい処分が選択される。特に凶悪な場合は、逆送が行われ検察官により起訴され、地方裁判所にて刑事裁判として執り行われる。

なお、少年院に送致可能な年齢の下限を設け、おおむね12歳以上とすることを盛り込んだ。11歳は「おおむね12歳以上」に含まれ少年院に送致される可能がある。

1997年以降、マスコミでは少年犯罪の凶悪化が報じられることが多くなった。また、犯罪被害者の心情を重視する論調が強まるようにもなっている。以上の背景から、現行の少年法は抑止力にならないのではないかという傾向の世論が強まり、司法の現場においてもそれを受ける形でいわゆる厳罰化の傾向にある。産経新聞の2006年12月30日記事によると、死刑判決が急増した理由としてある現役裁判官は「平成12年(2000年)の改正刑事訴訟法施行により、法廷で遺族の意見陳述が認められたことが大きいと思う。これまでも遺族感情に配慮しなかったわけではないが、やはり遺族の肉声での訴えは受ける印象がまったく違う。」とコメントしている[1]

アメリカ合衆国

アメリカ合衆国の少年事件に対する刑事手続は州ごとに異なる[2]

少年裁判所が扱う事件の対象年齢は多くの州で18歳を上限としている[2]。重大犯罪については、少年裁判所の管轄から外して刑事裁判所の専属管轄とする州や少年裁判所から刑事裁判所への移送を定めている州もある[2]

少年事件に対する処遇としては、保護観察、矯正施設送致、助言、違反金、社会奉仕活動などが定められる[2]

イギリス

イギリスでは少年裁判手続の対象年齢は10歳から17歳までである[2]

少年裁判手続の管轄は青少年裁判所であるが、非公開手続と両親などの出頭の特則があるほかは手続の流れは成人とほぼ同様である[2]

青少年裁判所の構成は3人以下の治安判事または1人の有給治安判事による[2]

青少年裁判所の科刑範囲は犯罪が1個の場合は6か月以下、犯罪が2個以上の場合は合計12か月以下に限定されている[2]。青少年裁判所による有罪認定の後、一定の事件(15歳から17歳までの事件で6か月を超える拘禁刑に相当する罪)については量刑の審理のため刑事法院に移送でき、特定の重大犯罪等(拘禁刑14年以上の法定刑の犯罪)は量刑は刑事法院で審理される[2]

少年裁判手続における処遇としては、無条件釈放、条件付釈放、罰金、社会内処遇、親の誓約及び施設収容処分などが定められている[2]

フランス

フランスでは被疑者が18歳未満であるときは、少年係判事、少年裁判所及び少年重罪院のいずれかの管轄となる[3]

少年係判事は少年の軽罪、第5級違警罪の予審及び審判を管轄する[3]。少年係判事が単独で判決を行う場合には非公開とされ、教育的又は監護的措置のみ言い渡すことができ、保護施設等への収容を決定することはできない[3]

少年裁判所は少年の軽罪、第5級違警罪、16歳未満の少年の重罪にあたる事件を管轄する[3]。少年係判事及び参審員2名の合議による[3]。13歳以上の少年に対しては刑事処分を選択できる[3]

少年重罪院は16歳以上18歳未満の重罪にあたる事件を管轄する[3]。職業裁判官3名(うち少年係判事2名)及び陪審員9名の合議による[3]

ドイツ

ドイツでは少年裁判所法が制定されており、行為時を基準に14歳以上18歳未満の少年(Jugendlicher)と18歳以上21歳未満の年長少年(Heranwachsender)には少年裁判所法が適用される[3]

少年に対する手続は非公開であり、処分としては教育措置や懲戒手続、少年刑が定められている[3]

年長少年に対する手続は原則公開であるが、少年に対する手続や処分を広く適用できる[3]

フィリピン

フィリピンでは、2016年6月に就任したロドリゴ・ドゥテルテ大統領が厳罰化を提案、刑事責任を問う年齢を15歳から9歳に引き下げる改正法案が提出された。

日本の現状

日本における少年刑法犯の検挙人員の推移 (総数、運転致死傷、窃盗、横領、傷害、暴行)[4][5]
日本における少年刑法犯の主要罪名別検挙人の推移 (殺人)[4][5]
日本における少年刑法犯の主要罪名別検挙人の推移 (強盗)[4][5]

『Q&A犯罪白書入門98』(法務省法務総合研究所刑事政策研究会)のQ28にて、「長期間にわたっておおむね減少ないし横ばいの傾向が続いており、近年の数値も、ピーク時と比較すれば低い水準にあると言えます。」としている。また、「昭和30年代後半以降の増加は、交通関係業過によるところが大きい」という(平成9年版 犯罪白書、p.113[6])。

以上のように、少年の非行は減少、または横ばいだが、窃盗横領1980年代まで増加し、その後減少している。実際の横領は、「ほぼ100%遺失物等横領であり、その大半は放置自転車の乗り逃げ」(平成9年版 犯罪白書、p.118[6])だという。

また、「殺人等の凶悪な犯罪を犯した少年の予後(再犯率など)」は、「凶悪事犯で保護処分になった者の予後は、その他のものと比較して概して悪くないといえます」としている(前掲『Q&A犯罪白書入門98』のQ52)。また、保護処分ではないが、凶悪犯罪を犯した少年院出院者の再犯率は窃盗及び粗暴犯罪を犯した少年院出院者より刑事処分を受けた者の割合は低く、実刑になった者の割合も顕著に低い。また、凶悪犯罪を犯した少年院出院者が再び凶悪犯罪を犯した者の割合は、約2.3%(87人中2人)であった[7]

刑法犯検挙は、人数、比率ともに減少傾向にあるという[8]。殺人、放火、強姦などが特に減少しているが、「平成7年になって傷害致死や強盗傷人の非行が目立っている。」という[9]。また、2019年振り込め詐欺で検挙される少年が519人おり、前年(746人)に比べれば約3割減少しているが、2010年(51人)と比べて、約10.2倍と激増している[10]

碓井真史新潟青陵大学・福祉心理学科)は、平成9年版犯罪白書より、「少年犯罪が増加、凶悪化しているとは一概に言えない」と指摘している[11]

2020年9月8日警察庁発表の"令和元年中における少年の補導及び保護の概況"と2020年3月発表の"令和元年における少年非行、児童虐待及び子供の性被害の状況"によれば、刑法犯(交通事故、道路交通法除く)少年(14~19歳)人口比の数字が2010年以降から10年連続で減少しており、2019年の人口比は1,000人当たり2.9人であり、1949年以降最小であった[12][10]


  1. ^ “死刑宣告、過去最多45人 世論が厳罰化後押し”. 産経新聞. (2006年12月30日). http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/trial/33377/ [リンク切れ]
  2. ^ a b c d e f g h i j 諸外国の司法制度概要 1”. 首相官邸. 2017年9月9日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j k 諸外国の司法制度概要 2”. 首相官邸. 2017年9月9日閲覧。
  4. ^ a b c 法務省 (2019) (Excel). 令和元年版犯罪白書第 第2編 平成における犯罪・少年非行の動向 第2章 少年非行の動向 第1節 少年による刑法犯 3 罪名別動向 第2章 少年非行の動向 2-2-1-7図 少年による刑法犯 検挙人員の罪名別構成比 (Report). http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/66/nfm/n66_2_2_2_1_3.html#h2-2-1-07 2020年2月20日閲覧。. 
  5. ^ a b c 法務省 (1947). 昭和22年度刑事警察統計書 第二 靑少年犯罪者調 (Report). https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1272803/40 2020年8月8日閲覧。. 
  6. ^ a b 法務省 (1997). 平成9年版犯罪白書 第1編 憲法施行50年の犯罪動向  第5章 少年非行の動向 第1節 概説 1 少年刑法犯の動向 (Report). http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/38/nfm/n_38_2_1_5_1_1.html 2019年3月20日閲覧。. 
  7. ^ 法務省 (2011). 平成23年版犯罪白書第 第7編 少年・若年犯罪者の実態と再犯防止 第3章 少年院出院者の犯罪 第3節 少年院出院後の犯罪状況の分析 2 少年時の非行内容による分析 (1)概況 7-3-3-2-1表 非行群別刑事処分状況等 (Report). http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/58/nfm/n_58_2_7_3_3_2.html#h7-3-3-2-01 2019年3月20日閲覧。. 
  8. ^ 守屋克彦『現代の非行と少年審判』1998年、5頁。
  9. ^ 守屋克彦『現代の非行と少年審判』1998年、6頁。
  10. ^ a b 警察庁庁生活安全局少年課 (2019-03-12) (PDF). 令和元年における少年非行、児童虐待及び子供の性被害の状況 第1 少年非行 1 刑法犯少年(1,2ページ、PDF7,8ページ) (Report). https://www.npa.go.jp/safetylife/syonen/hikou_gyakutai_sakusyu/R1.pdf 2020年3月12日閲覧。. 
  11. ^ 少年犯罪は増加、凶悪化?(犯罪白書を読んで)
  12. ^ 警察庁庁生活安全局少年課 (2020-09-08) (PDF). 令和元年中における少年の補導及び保護の概況 第1章 少年の非行等 第2節 非行少年 1 犯罪少年 ⑴ 刑法犯少年 ア 検挙人員、人口比及び少年の占める割合の推移 1-2-1-1図 昭和24年以降における刑法犯少年の検挙人員及び人口比の推移(2ページ、PDF17ページ) (Report). https://www.npa.go.jp/safetylife/syonen/hodouhogo_gaikyou/R01.pdf 2020年9月12日閲覧。. 
  13. ^ 田宮裕・廣瀬健二『注釈少年法』489頁。民事で不法行為が認められ、確定した事例として大阪地判平成11年6月9日。
  14. ^ 『朝日新聞』2004年6月21日朝刊30面「朝日新聞指針『事件の取材と報道2004』 4年ぶり全面改訂」
  15. ^ 朝日新聞』2011年3月11日朝刊1面「元少年3人死刑確定へ 最高裁 4人殺害『責任重大』」
  16. ^ 読売新聞』2011年3月11日朝刊1面「元少年3人死刑確定へ 連続リンチ殺人 最高裁、上告棄却」
    『読売新聞』2011年3月11日朝刊37面「元少年3人の死刑確定へ 実名、報道すべき関心事」
  17. ^ 産経新聞』2011年3月11日東京朝刊1面「元少年3人、死刑確定へ 最高裁 連続リンチ殺人、上告棄却」
    『産経新聞』2011年3月11日大阪朝刊1面「元少年3人死刑確定へ 連続リンチ殺人 上告棄却 最高裁『執拗かつ残虐』」
  18. ^ 日本経済新聞』2011年3月11日朝刊43面「元少年3人死刑確定へ 連続リンチ殺人 最高裁上告棄却『4人次々 結果重大』」
  19. ^ 田宮裕・廣瀬健二『注釈少年法』489頁。





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