古代ギリシア語 音韻論

古代ギリシア語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 05:03 UTC 版)

音韻論

正書法は古い時代の特徴を残していたが、後古典ギリシア語の発音は古代ギリシア語から大きく変異した。古代の発音を完全に再建することはできないが、ギリシア語は特にこの時代からかなりの記録が残されており、音価の一般的な性質に関しても言語学者の間に見解の相違はほとんど見られない。

以下の例では、紀元前5世紀のアッティカ方言を代表として取りあげている。

母音

母音のいくつかは長短の区別があった。

前舌母音 後舌母音
非円唇母音 円唇母音 非円唇母音 円唇母音
狭母音 /i/ /iː/ /y/ /yː/
半狭母音 /e/ /eː/ /o/ /oː/
半広母音 /ɛː/ /ɔː/
広母音 /a/ /aː/

/oː/ はおそらく紀元前4世紀までに [uː] に変化した。

代償延長

代償延長に関しては、どの位置で発生したかで異なる見解がある。/a/[aː][ɛː] のどちらになるのか、/e/, /o/ は半狭の [eː], [oː] と半広の [ɛː], [ɔː] のどちらになるのか、というのがその争点である。

子音

両唇音 歯茎音 軟口蓋音 声門音
破裂音 /p/ /b/ /t/ /d/ /k/ /g/
有気音 /pʰ/ /tʰ/ /kʰ/
鼻音 /m/ /n/ ŋ
ふるえ音 [r̥] /r/
摩擦音 /s/ /z/ /h/
側面音 /l/

[ŋ] は、軟口蓋音の前では /n/ の、鼻音の前では /g/ の異音として現れた。 と表記される [r̥] は、おそらく /r/ の無声の異音として語頭で用いられた。

子音の分類

子音には主に以下の3種類があった。

  • 閉鎖音 - 軟口蓋音 /k/, /g/, /kʰ/、両唇音 /p/, /b/, /pʰ/、歯茎音 /t/, /d/, /tʰ/
  • 鼻音 - /m/, /n/, /l/, /r/
  • 摩擦音 - /s/, /h/

融合

動詞を活用する際、子音が他の子音とぶつかることがある。このとき様々な規則が適用されるが、原則として

  • 2つの音が隣り合うとき、初めの子音は後続の子音と有声性・帯気性の点で同化(逆行同化)する。

ただし、これが適用されるのは閉鎖音に対してのみである。摩擦音は有声化ないし無声化の方向でしか同化せず、共鳴音は同化しない。例としては

  • /s/(未来、アオリストの語幹)の前で、軟口蓋音は [k] に、両唇音は [p] になり、歯茎音は消失する。
    例) g+s > ks, b+s > ps, d+s > s
  • /tʰ/(受動態アオリストの語幹)の前で、軟口蓋音は [kʰ] に、両唇音は [pʰ] に、歯茎音は [s] になる。
    例) k+ > kʰtʰ, p+ > pʰtʰ, t+ > stʰ
  • /m/(中動態完了の1人称単数、1人称複数、分詞)の前で、軟口蓋音と、鼻音+軟口蓋音は [g] に、両唇音は [m] に、歯茎音は [s] になる。その他の共鳴音はそのまま維持される。

注釈

  1. ^ 裏付けは完全とは言えず、またアルファベットではなく音節文字表(線文字B)で書かれているため、一部は再建による。
  2. ^ 具体的にはペリクレースの死(前429年)からデーモステネースの死(前322年)までの約100年間。

出典

  1. ^ Roger D. Woodard, “Greek dialects,” The Ancient Languages of Europe, R. D. Woodard (ed.), Cambridge: Cambridge UP, 2008, p. 51.
  2. ^ 高津春繁『ギリシア語文法』による。最新版『ブリタニカ百科事典』のように、これより簡略な分類がされる場合もある。マケドニア方言の位置は、現在主流となっている最新の学説を元に配置した。
  3. ^ Roisman, Worthington, 2010, "A Companion to Ancient Macedonia", Chapter 5: Johannes Engels, "Macedonians and Greeks", p. 95:"This (i.e. Pella curse tablet) has been judged to be the most important ancient testimony to substantiate that Macedonian was a north-western Greek and mainly a Doric dialect".






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