ルジャンドル多項式 ルジャンドル多項式の概要

ルジャンドル多項式

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/07 03:16 UTC 版)

定義

解析学においてルジャンドルの微分方程式

n = 5 までのルジャンドル多項式のグラフ

λ が非負整数 n = 0, 1, 2, … のときの解は x = ±1 の両点においても正則であり、かつ級数は途中で止まって多項式となる。さらに 、x = 1 において値 1 を取るという初期条件を課すと、解は一意に定まる。これを n次のルジャンドル多項式と呼び、普通は Pn(x) と記す[1]。また、全ての非負整数についての n次のルジャンドル多項式全体が成す関数族を総称的にルジャンドル多項式と呼ぶ。ルジャンドル多項式は後述する関数空間内積に関して直交系を成す。ただし、この内積についての各 Pn(x) の大きさは 1 ではないため (これは Pn(1) = 1 という初期条件を課したためである)、正規直交系にはなっていない点は注意を要する。各ルジャンドル多項式 Pn(x)n次多項式で、ロドリゲスの公式

で表すことができる。

ルジャンドル多項式がルジャンドルの微分方程式を満たすことは、恒等式

の両辺を n + 1 回微分して、高階微分に関する一般ライプニッツ則を適用すればわかる[2]。各ルジャンドル多項式 Pn は以下のテイラー級数

(1)

の係数として定義することもできる[3]。この母函数物理学において多重極展開英語版に利用される。

帰納的定義

上記の式 (1) で与えられたテイラー展開の最初の 2 項から、最初の 2 つのルジャンドル多項式が

となることがわかる。残りの多項式を得るのには、上記のテイラー展開を直截に計算するよりも、ボネの漸化式

を用いるのが適当である。この漸化式は、式 (1) の両辺を t に関して微分したものを整理して得られる等式

の分母に現れる平方根を式 (1) で置き換えて、t の冪に対する係数比較英語版を行えば得られる。漸化式に初期条件としてすでに得られている P0, P1 を当てはめれば、全てのルジャンドル多項式が帰納的に生成される。

漸化式を解いて陽に表せば

などのように書くことができる。後段はルジャンドル多項式を単に単項式として表して二項係数の乗法公式を使えば、漸化式から直ちに得られる。

具体的に最初のいくつかのルジャンドル多項式を挙げれば以下のようになる:

n
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10

直交性

ルジャンドル多項式の重要な性質の一つは、これらが閉区間 [−1, 1] 上の L2-内積に関して直交すること、即ち以下の式を満たすことである。

ここで δmnクロネッカーのデルタ、即ち m = n のとき 1 で、それ以外のときは 0 である。すなわち、関数系 {1, xx2,...} にシュミットの直交化法を適用することによってルジャンドル多項式を導出法とすることが可能である。この直交性により、ルジャンドル多項式系がエルミート微分作用素

の固有値 λ = n(n + 1) に属する固有関数系となるようなスツルム・リウヴィル理論としてルジャンドルの微分方程式を捉えることができる。


  1. ^ 永宮健夫 『応用微分方程式論』、共立出版社、1967年、pp46-52。
  2. ^ Courant & Hilbert 1953, II, §8
  3. ^ George B. Arfken, Hans J. Weber (2005), Mathematical Methods for Physicists, Elsevier Academic Press, p. 743, ISBN 0-12-059876-0, https://books.google.fr/books?id=qLFo_Z-PoGIC&printsec=frontcover&hl=ja&source=gbs_ge_summary_r&cad=0#v=onepage&q&f=false 
  4. ^ M. Le Gendre, “Recherches sur l'attraction des sphéroïdes homogènes”, Mémoires de Mathématiques et de Physique, présentés à l'Académie Royale des Sciences, par divers savans, et lus dans ses Assemblées, Tome X, pp. 411-435 (Paris, 1785). [注: ルジャンドルは彼の発見を1782年に科学アカデミーに提出したが、出版されたのは1785年であった。]
  5. ^ Jackson, J.D. Classical Electrodynamics, 3rd edition, Wiley & Sons, 1999. page 103
  6. ^ George B. Arfken, Hans J. Weber (2005), Mathematical Methods for Physicists, Elsevier Academic Press, p. 753, ISBN 0-12-059876-0, https://books.google.fr/books?id=qLFo_Z-PoGIC&printsec=frontcover&hl=ja&source=gbs_ge_summary_r&cad=0#v=onepage&q&f=false 
  7. ^ 日本測地学会 2004






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