フダンソウ フダンソウの概要

フダンソウ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/01 21:23 UTC 版)

フダンソウ
フダンソウ
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
: ナデシコ目 Caryophyllales
: ヒユ科 Amaranthatheae
: フダンソウ属 Beta
: フダンソウ B. vulgaris
変種 : B. v. var. cicla
学名
Beta vulgaris L. var. cicla L. (1753)[1]
和名
フダンソウ
英名
Chard
Swiss chard

名称

フダンソウの和名は、漢字で「不断草」と書き、暑さ寒さに強く四季を通じて栽培でき、ほぼ一年中葉を掻き取って収穫できることに由来する[2][4][5]。日本では、スイスチャードの名でも知られており[2]、葉柄が太くて葉に縮みが入る種類のことを特に指す[5]英語では chard (チャード)、フランス語では bette (ベット)、イタリア語では bietola (ビエトラ)という[5]

元禄10年(1697年)刊行された『農業全書』には、「四季絶えずあるゆえに不断草と名付るなるべし」と、名前の由来が記されている。伝統的な自家消費野菜として各地で栽培され、ホウレンソウに似ているが比較的季節に関係なく利用できるので、イツモヂシャ、トコナともよばれる[6]。「恭菜」という表記もある。他にも様々な地域名があり、岡山県ではアマナ、長野県ではトキシラズやキシャナ、兵庫県ではシロナ、京都府ではトウヂシャ(タウヂサ)、大阪府ではウマイナ、島根県ではオホバコヂサなど変わった呼び方がなされ[7]沖縄県ではンスナバーと呼ばれる[要出典]

歴史

ホウレンソウのなかまの野菜で[2]地中海沿岸からカスピ海周辺やペルシアを原産とするハマフダンソウ (Beta maritima L.) から葉菜として改良された種である[7][6]

フダンソウは紀元前1000年くらいにはシチリア島で栽培されていたといわれ[要出典]、2 - 3世紀からギリシア人やローマ人によって栽培されていた記録がある[7]。当時は葉の赤色の濃淡に着目して2種類に分けられ、濃い色を黒フダンソウ、淡い色を白フダンソウと呼んでいた[7]中国には6世紀ごろに栽培されていた記録があり[要出典]、『唐本草』(656 - 660年)に蒸食したという記録も残されている[7]。16世紀のスイスにおいて、広茎で白黄色、赤色、暗緑色の品種が認められている[7]

日本への渡来は、江戸時代に書かれた『本朝食鑑』(1697年)の記述に「近年華国より来たり」とあることや、「トウチシャ」と呼ばれたことなどから、17世紀ごろに中国から伝えられたと考えられている[7][6]明治初年になると、大葉で赤色や黄色の外観的に美しい品種がカエンサイ(火焰菜:ビート)として輸入されたが、現在では全く見られなくなっている[7]

形態

一年生または二年生(越年生)の草本[8]。株の全体が無毛で、長さは葉を含めて30センチメートル (cm) 程度。根は直根で肥大しない[7]。側根の発生が旺盛で、根は比較的浅いところに広がる[9]。根出葉で、葉身は幅10 cm前後で、長さ15 - 30 cmの卵形、もしくは長卵形で肉厚である[7]。葉柄の色は深緑色、白色、紅色、黄色、オレンジ色など多彩である[2][5]。葉柄は幅が広く多肉質になるが、東洋種は一般に幅が狭い傾向にある[10]

花期は初夏に抽台(薹立ち)が始まり、花茎を1メートル (m) ほど伸ばし、頂部に円錐花序をつける[7]には花弁がなく、5枚の花被、5本の雄しべ、1つの雌しべからなる花を纏まってつける[6]。果実は厚くてかたいこぶ状の宿存萼に包まれる[7]染色体数は2n=18, 19, 20, 27, 36, 42, 45のものが存在する[7]


注釈

  1. ^ 強いていえば、主に大阪を中心に栽培されている「ウマイナ」が品種名的なものといえる程度とされる[9]

出典

  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Beta vulgaris L. var. cicla L. フダンソウ 標準”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年6月26日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t 主婦の友社編 2011, p. 240.
  3. ^ 木村修次・黒澤弘光『大修館現代漢和辞典』大修館出版、1996年12月10日発行(441ページ)
  4. ^ a b c d e f g 金子美登 2012, p. 118.
  5. ^ a b c d e f g h i 講談社編 2013, p. 24.
  6. ^ a b c d e f 農文協編『地域食材大百科:第2巻 』農山漁村文化協会、2010年、330 - 332頁。ISBN 978-4-540-09262-6
  7. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 農文協編 2004, p. 291.
  8. ^ 農文協編 2011, p. 291.
  9. ^ a b c d e f g h i 農文協編 2004, p. 293.
  10. ^ a b c d e f g h i j k 農文協編 2004, p. 294.
  11. ^ a b 農文協編 2004, p. 203.
  12. ^ a b c d e f 農文協編 2004, p. 292.
  13. ^ a b c d e 金子美登 2012, p. 119.
  14. ^ a b c 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 61.
  15. ^ 『旬の食材 春・夏の野菜』講談社 ISBN 4-06-270135-9
  16. ^ 池上文雄、加藤光敏、河野博、三浦理代、山本謙治『からだのための食材大全』 NHK出版 2018 ISBN 978-4-14-011360-8 p.66.


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