ハンガリー 交通

ハンガリー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/25 06:49 UTC 版)

交通

科学技術

ルービックキューブ

ハンガリーは歴史的に多数の科学者を輩出している。同国出身の科学者は核兵器やコンピュータの開発に貢献したことで世界的に知られており、ナイマン・ヤーノシュ(ジョン・フォン・ノイマン)はコンピュータの開発に貢献した。ケメーニィ・ヤーノシュは米国人計算機科学者のトーマス・E・カーツ英語版とともにBASIC を開発した。

傍ら、ハンガリー人にはさまざまな分野で後世に影響を与える発明をしている人物が多い。ハンガリー人の発明にはルビク・エルネーによるルービックキューブブローディ・イムレによるクリプトン電球などがある。

国民

民族

[18]
民族構成(ハンガリー)
マジャル人
  
86%
ロマ
  
3.2%
ドイツ人
  
1.9%
その他
  
8.9%

ハンガリーの国民の86%以上はマジャル人ハンガリー人)である。マジャル人はフィン・ウゴル語族ハンガリー語(マジャル語)を母語とし、ウラル山脈の方面から移ってきた民族である。マジャル人の人名は、正式に表記した際にが名の前につく。

マジャル人は旧ハンガリー王国領に広まって居住していたため、セルビアヴォイヴォディナクロアチア北部、スロバキア南部、ルーマニアトランシルヴァニアなどにもかなりのマジャル人人口が存在している。また、マジャル人の中にはモルダヴィアチャーンゴー、トランシルヴァニアのセーケイや、ハンガリー共和国領内のヤース、マチョー、クンパローツなどの文化を持つサブグループが知られるが、ヤース人がアラン人の末裔、クン人がクマン人の末裔であることが知られるように、これらはさまざまな出自を持ち、ハンガリー王国に移住してハンガリーに部分的に同化されていった人々である。

その他の民族では、有意の人口を有するロマ(ジプシー)とドイツ人が居住する。ハンガリー科学アカデミーの推計では、人口約1,000万人のうち約60万人がロマとされる。また、ドイツ人は東方植民地運動の一環としてハンガリー王国に移り住んできた人々の子孫で、トランシルヴァニアのサース人(ザクセン人)やスロヴァキアのツィプス・ドイツ人のように、ハンガリー王国の中で独自の民族共同体を築いた人々もいる。

その他の民族では、ルテニア人ウクライナ人)、チェコ人クロアチア人ルーマニア人などもいるが、いずれもごく少数である。第二次世界大戦以前には、ユダヤ人人口もかなりの数にのぼったが、第二次世界大戦中の迫害などによってアメリカ合衆国イスラエルに移住していった人が多い。

近年のDNA分析によるとハンガリー人はコーカソイド(白人)に分類されるが、わずかにモンゴロイド(黄色人種)特有のアセトアルデヒド脱水素酵素D型が検出されることから、モンゴロイドとの混血により遺伝子の流入があったと考えられる[19][注釈 4]

ファシズムの研究で知られるオックスフォード・ブルックス大学ロジャー・グリフィン英語版は、「ハンガリーはアジア系のマジャル人が建国し、独特の言語を持っている。オスマン帝国オーストリア帝国旧ソ連の圧力を受けてきた。ハンガリーはEUの中の孤島だ」と述べている[20]

2010年、フィデス=ハンガリー市民同盟により、国外のハンガリー系住民へハンガリー国籍付与の道を開いたが、隣国のスロバキアはこれに反発し、二重国籍禁止法案を可決している[21]ルーマニアには、約160万人のハンガリー系少数民族がおり、その多くは、ハンガリーとの領有権問題を抱えるトランシルヴァニア、特にティミショアラに居住している[22]

言語

ハンガリー語話者の分布

言語的にはハンガリー語が優勢で、少数民族のほとんどもハンガリー語を話し、ハンガリー語人口は98%に上る [23]。国内の少数民族としては、13万人を擁するドイツ人が最大で、このうちおよそ10万人(国内の人口の約1%に相当)が家庭内でドイツ語を使用する[24]。ハンガリーは旧オーストリア=ハンガリー帝国の中核的地域でドイツ人との結びつきが強いうえに、第二次世界大戦時もハンガリーが枢軸国に加担した結果、ハンガリー人によるドイツ人追放がほとんど起こらなかった(ソ連による追放はある程度行われた)ため、ドイツ人の居住人口が今なお多い。

宗教

宗教カトリック(39%)が多数を占め、カルヴァン派もかなりの数にのぼる(12%)。その他、ルター派(5%)やユダヤ教(0.2%)も少数ながら存在する。

婚姻

婚姻時の姓は、自己の姓(夫婦別姓)、相手の姓、複合姓(順序はいずれでもよい。ハイフンでつなぐ)、自らのフルネームを相手のフルネームにnéを付加したものに変更する(この場合は出生時の姓名はともに失われる)、相手のフルネームにnéを付加したものに自己のフルネームを加えたものを自己のフルネームとする(この場合は、フルネームは4つの名からなる)、自己の姓の前に相手の姓にnéを付加したものを追加する(自己の姓は中間姓となる)、などより選択することが可能である[25]

伝統的には、妻が相手のフルネームにnéを付加したフルネームに改名し、出生時の名前は失われていた。その後、1895年、1953年、1974年、2004年などの改正を経て、現在では男女の公平性が高められ、選択肢の多い制度となった[25]。なおハンガリーでは、日本と同様に姓が最初にくる[25]

教育

ハンガリーの教育制度の特徴は、制度的構造と教育プログラムの構造が一致していない点にある。システム自体の制度的構造と早期選択を可能にするプログラムの存在は、中央ヨーロッパおよび元社会主義国との類似性を示している。

同国は優れた数学教育が続いていることから、国際的なレベルの教育において知名度の高い国となっている。ただし優れた数学教育で有名である反面、現今においてフィールズ賞受賞者はいまだ出ていない。有名な数学者にはエルデーシュ・パールフランクル・ペーテルらがいる。

保健

医療

治安

ハンガリーの治安情勢は全般的に良好で、犯罪認知件数も減少傾向にある。2019年における国内の犯罪認知件数は16万5,648件で、5年前の2014年と比較すると約1/3ほど減少している。しかし、人口比で見ると犯罪発生率は日本よりも高いため、油断をすることは許されない。

全体としては財産犯が多くを占め、その中でも窃盗犯(侵入盗、スリ置き引きなど)が多く、日本人観光客から寄せられる犯罪被害連絡のほとんどは窃盗被害となっている点が特徴ともなっている[26]

人権


注釈

  1. ^ ハンガリー語: ékezetアクセント
  2. ^ ナチス・ドイツ主導によるチェコスロバキア共和国(Second Czechoslovak Republic)解体(チェコスロバキア併合)の課程でカルパト・ウクライナは独立しカルパトのシーチウクライナ語版軍が守っていたが、独立直後にハンガリー王国はカルパト・ウクライナへ侵攻し、併合した。
  3. ^ 観光客は推計1067.5 万人、観光の経済効果はおよそ5,1億米ドル。 (2013年)UNWTO World Tourism Barometer”. World Tourism Organization. 2016年9月20日閲覧。
  4. ^ 下戸遺伝子とは、アセトアルデヒド脱水素酵素 (ALDH) の487番目のアミノ酸を決める塩基配列がグアニンからアデニンに変化したもので、モンゴロイド特有の遺伝子であり、コーカソイド(白人)・ネグロイド(黒人)・オーストラロイド(オーストラリア原住民など)には存在しない。よってこの遺伝子を持つということは、黄色人種であるか、黄色人種との混血であることの証明となる原田勝二 (筑波大学社会医学系助教授) (2005年). “北海道・東北・九州・沖縄に酒豪が 中部・近畿に下戸が多いそのわけは…。”. at home. 2016年9月20日閲覧。

出典

  1. ^ a b UNData” (英語). 国連 (2021年10月). 2021年11月5日閲覧。
  2. ^ a b c d e f Report for Selected Countries and Subjects: October 2021”. 2021年11月5日閲覧。
  3. ^ 農林水産省. “ハンガリーの農林水産業概況” (HTML). 2008年8月9日閲覧。
  4. ^ 在ハンガリー日本国大使館案内. “ハンガリーの国名変更” (HTML). 2012年1月15日閲覧。
  5. ^ Kristó Gyula – Barta János – Gergely Jenő: Magyarország története előidőktől 2000-ig (History of Hungary from the prehistory to 2000). Pannonica Kiadó, Budapest. (2002). ISBN 963-9252-56-5 
  6. ^ 「鉄のカーテン」 撤去までの道のり”. AFP (2020年11月7日). 2020年5月12日閲覧。
  7. ^ 先週のハンガリー 2008年7月6日~12日 (北海道大学ハンガリー文化センター)リンク切れ
  8. ^ 外務省 ハンガリー基礎データ
  9. ^ ウクライナ軍事支援を拒否 ロシアに融和的―ハンガリー首相”. 時事通信 (2022年3月26日). 2022年3月27日閲覧。
  10. ^ EUなのに親ロ路線?「ハンガリーのプーチン」のしたたかな外交戦略”. JBpress (2022年4月22日). 2022年5月26日閲覧。
  11. ^ Hungary:A Growing Tolerance for Anti-Semitism”. 名誉毀損防止同盟 (1991年). 2016年9月20日閲覧。
  12. ^ ANALYSIS - Hungary in the Organization of Turkic States: A Bridge between East and West”. www.aa.com.tr (2021年11月18日). 2022年12月22日閲覧。
  13. ^ Search – Global Edition – The New York Times”. International Herald Tribune (2009年3月29日). 2009年9月20日閲覧。
  14. ^ Magyarország közigazgatási helynévkönyve, 2012. január 1.” [Gazetteer of Hungary, 1st January 2012]. Hungarian Central Statistical Office. 2022年2月22日閲覧。
  15. ^ 独立行政法人日本貿易振興機構 (2019年12月25日). “EU 基礎的経済指標” (Excel). 2020年1月22日閲覧。
  16. ^ 世帯調査からの推計に基づく貧困ライン以下で生活する人口の割合。Poverty headcount ratio at national poverty lines (% of population)”. 世界銀行. 2016年9月20日閲覧。
  17. ^ 赤と白と緑”. ハンガリー政府観光局. 2016年9月20日閲覧。
  18. ^ “[https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/hungary/data.html ハンガリー(Hungary) 基礎データ]”. 外務省 (2018年6月1日). 2019年3月10日閲覧。
  19. ^ 科学朝日『モンゴロイドの道』朝日選書 (523)、1995年。 より。北方モンゴロイド特有の酒が飲めない下戸遺伝子 日本人: 44%、ハンガリー人: 2%、フィン人: 0%
  20. ^ 木村正人 (2015年9月11日). “難民の子供を蹴ったハンガリーの女性カメラマンが陥った「恐怖」と「嫌悪」のワナ”. オリジナルの2021年8月14日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20210814161428/https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20150911-00049424 
  21. ^ ドナウ挟み国民争奪 ハンガリー、国籍与える新法 スロバキアは二重国籍禁止法案可決 朝日新聞 2010年7月21日朝刊9ページ
  22. ^ ルーマニア』 - コトバンク
  23. ^ ハンガリー語はヨーロッパで最も話者の多い非インド・ヨーロッパ語族の言語である Globally speaking: motives for adopting English vocabulary in other languages – Google Books. Judith Rosenhouse、Rotem Kowner (編). Google Books. p. 82. https://books.google.com/books?id=nlWU3CkTAi4C&lpg=PA82&ots=wiY3TdhJ5F&dq=%22largest%20non-indo%20european%22%20europe%20hungarian&pg=PA82#v=onepage&q=%22largest%20non-indo%20european%22%20europe%20hungarian&f=false 2016年9月20日閲覧。 
  24. ^ Doppelt so viele Ungarndeutsche - Endergebnisse der Volkszählung 2011 in Ungarn veröffentlicht im Funkforum
  25. ^ a b c Fercsik Erzsébet: The Traditional and Modern Forms in the Naming of Hungarian Women., In: Maria Giovanna Arcamone – Donatella Bremer – Davide De Camilli – Bruno Porcelli (eds). Atti del XXII Congresso Internazionale di Scienze Onomastiche Pisa, 28 agosto – 4 settembre 2005. vol. IV. Antroponomastica. Edizioni Ets. Pisa., pp. 131-140.
  26. ^ ハンガリー 安全対策基礎データ”. 外務省. 2021年10月10日閲覧。
  27. ^ チャルカ『ハンガリーのかわいい刺しゅう』産業編集センター、2011年、19頁。 
  28. ^ a b c 田代文雄『東欧を知る事典』平凡社、2001年、692頁。 






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