ハンガリー 経済

ハンガリー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/02/15 17:18 UTC 版)

経済

国際通貨基金(IMF)による統計では、2018年現在でGDPは1,612億ドル、一人あたりのGDP(為替レート)は1万6,484ドルであり、EU平均の約45%、世界水準の約1.4倍である[2][15]

ハンガリーは1989年の体制転換以来、外国資本を受け入れて積極的に経済の開放を進めた。その結果、1997年以降年間4%以上の高成長を続けるとともに、2004年には経済の民間部門が国内総生産(GDP)の80%以上を占め、「旧東欧の優等生」と呼ばれるほどであった。また2004年の欧州連合加盟は、当時のハンガリー経済にとって追い風になった。

しかしその後、インフレーション失業率が増加して貧富の差が広がり[16]、社会問題として常態化した。また巨額の財政赤字も重要な課題であり、現政権が目標とするユーロ導入への見通しは立っていない。

伝統的な産業ではアルコールが強い。特にワインは有名で、ブルゲンラントショプロン、ヴィッラーニなど著名な産地があるが[17]、中でもトカイトカイワインはワインの王と言われる。農業ではパプリカが名産品で、ハンガリー料理にもふんだんに使われる。ガチョウの飼育も盛んであり、ドナウ川西岸(ドゥナーントゥールハンガリー語版地方)が主産地である。ハンガリー産のフォアグラもよく輸出されている。

工業

北部の都市エステルゴムにあるスズキ工場は6,000人の従業員を抱える

第二次世界大戦前のハンガリーは肥沃な土壌と計画的な灌漑設備により、農業国として成立していた。そのため、食品工業を中心とした軽工業が盛んであった。第二次世界大戦後、社会主義下の計画経済によって重工業化が進められた。特に車両生産、一般機械が優先され、化学工業と薬品工業がそれに次いだ。しかし、有機鉱物資源とボーキサイトを除くと工業原材料には恵まれておらず、輸入原材料を加工し輸出するという形を取った。1970年代には工業を中心とする貿易が国民所得の40%を占めるまで成長した。

共産主義体制から資本主義体制に転換後、1990年代初頭においては、化学工業の比重が次第に大きくなっていく傾向にあった。2003年時点では全産業に占める工業の割合がさらに高まっており、輸出額の86.8%を工業製品が占めるに至った。さらに貿易依存度は輸出54.5%、輸入59.2%まで上がっている。品目別では機械工業が再び盛んになっており、輸出に占める比率は電気機械36.1%、機械類16.2%、自動車8.2%である。世界シェアに占める比率が高い工業製品は、ワイン(1.7%、49万トン)、硝酸(1.5%、31万トン)である。

鉱業

ハンガリーの鉱業は、燃料に利用できる亜炭ボーキサイトが中核となっている。有機鉱物資源では、世界シェアの1.5%を占める亜炭(1391万トン、2002年)、原油(107万トン)、天然ガス(115千兆ジュール)を採掘する。有力な炭田は南東部ベーチ近郊、首都ブダペストの西方50キロに位置するタタバーニャ近郊の2か所に広がる。油田は中央南部セゲド近郊と、スロベニア、クロアチア国境に接する位置にある。

金属鉱物資源ではボーキサイト(100万トン)が有力。バラトン湖北岸からブダペストに向かって北東に延びる山地沿いで採掘されている。ただし、採掘量は減少傾向にある(1991年には203.7万トンが採掘されていた)。このほか、小規模ながらマンガンウランの採掘も見られる。

通貨単位の変遷


注釈

  1. ^ ハンガリー語: ékezetアクセント
  2. ^ ナチス・ドイツ主導によるチェコスロバキア共和国(Second Czechoslovak Republic)解体(チェコスロバキア併合)の課程でカルパト・ウクライナは独立しカルパトのシーチウクライナ語版軍が守っていたが、独立直後にハンガリー王国はカルパト・ウクライナへ侵攻し、併合した。

出典

  1. ^ a b UNData” (英語). 国連 (2021年10月). 2021年11月5日閲覧。
  2. ^ a b c d e f Report for Selected Countries and Subjects: October 2021”. 2021年11月5日閲覧。
  3. ^ 農林水産省. “ハンガリーの農林水産業概況 (HTML)”. 2008年8月9日閲覧。
  4. ^ 在ハンガリー日本国大使館案内. “ハンガリーの国名変更 (HTML)”. 2012年1月15日閲覧。
  5. ^ Kristó Gyula – Barta János – Gergely Jenő: Magyarország története előidőktől 2000-ig (History of Hungary from the prehistory to 2000). Pannonica Kiadó, Budapest. (2002). ISBN 963-9252-56-5 
  6. ^ 「鉄のカーテン」 撤去までの道のり”. AFP (2020年11月7日). 2020年5月12日閲覧。
  7. ^ 先週のハンガリー 2008年7月6日~12日 (北海道大学ハンガリー文化センター)リンク切れ
  8. ^ 外務省 ハンガリー基礎データ
  9. ^ ウクライナ軍事支援を拒否 ロシアに融和的―ハンガリー首相”. 時事通信 (2022年3月26日). 2022年3月27日閲覧。
  10. ^ EUなのに親ロ路線?「ハンガリーのプーチン」のしたたかな外交戦略”. JBpress (2022年4月22日). 2022年5月26日閲覧。
  11. ^ Hungary:A Growing Tolerance for Anti-Semitism”. 名誉毀損防止同盟 (1991年). 2016年9月20日閲覧。
  12. ^ ANALYSIS - Hungary in the Organization of Turkic States: A Bridge between East and West”. www.aa.com.tr (2021年11月18日). 2022年12月22日閲覧。
  13. ^ Search – Global Edition – The New York Times”. International Herald Tribune (2009年3月29日). 2009年9月20日閲覧。
  14. ^ 観光客は推計1067.5 万人、観光の経済効果はおよそ5,1億米ドル。 (2013年)UNWTO World Tourism Barometer”. World Tourism Organization. 2016年9月20日閲覧。
  15. ^ 独立行政法人日本貿易振興機構 (2019年12月25日). “EU 基礎的経済指標 (Excel)”. 2020年1月22日閲覧。
  16. ^ 世帯調査からの推計に基づく貧困ライン以下で生活する人口の割合。Poverty headcount ratio at national poverty lines (% of population)”. 世界銀行. 2016年9月20日閲覧。
  17. ^ 赤と白と緑”. ハンガリー政府観光局. 2016年9月20日閲覧。
  18. ^ “[https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/hungary/data.html ハンガリー(Hungary) 基礎データ]” (日本語). 外務省 (2018年6月1日). 2019年3月10日閲覧。
  19. ^ 科学朝日 『モンゴロイドの道』朝日選書 (523)、1995年。 より。北方モンゴロイド特有の酒が飲めない下戸遺伝子 日本人: 44%、ハンガリー人: 2%、フィン人: 0%
  20. ^ 下戸遺伝子とは、アセトアルデヒド脱水素酵素 (ALDH) の487番目のアミノ酸を決める塩基配列がグアニンからアデニンに変化したもので、モンゴロイド特有の遺伝子であり、コーカソイド(白人)・ネグロイド(黒人)・オーストラロイド(オーストラリア原住民等)には存在しない。よってこの遺伝子を持つということは、黄色人種であるか、黄色人種との混血であることの証明となる原田勝二 (筑波大学社会医学系助教授) (2005年). “北海道・東北・九州・沖縄に酒豪が 中部・近畿に下戸が多いそのわけは…。”. at home. 2016年9月20日閲覧。
  21. ^ 木村正人 (2015年9月11日). “難民の子供を蹴ったハンガリーの女性カメラマンが陥った「恐怖」と「嫌悪」のワナ”. オリジナルの2021年8月14日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20210814161428/https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20150911-00049424 
  22. ^ ドナウ挟み国民争奪 ハンガリー、国籍与える新法 スロバキアは二重国籍禁止法案可決 朝日新聞 2010年7月21日朝刊9ページ
  23. ^ ルーマニア』 - コトバンク
  24. ^ ハンガリー語はヨーロッパで最も話者の多い非インド・ヨーロッパ語族の言語である Globally speaking: motives for adopting English vocabulary in other languages – Google Books. Judith Rosenhouse、Rotem Kowner (編). Google Books. p. 82. https://books.google.com/books?id=nlWU3CkTAi4C&lpg=PA82&ots=wiY3TdhJ5F&dq=%22largest%20non-indo%20european%22%20europe%20hungarian&pg=PA82#v=onepage&q=%22largest%20non-indo%20european%22%20europe%20hungarian&f=false 2016年9月20日閲覧。 
  25. ^ Doppelt so viele Ungarndeutsche - Endergebnisse der Volkszählung 2011 in Ungarn veröffentlicht im Funkforum
  26. ^ a b c Fercsik Erzsébet: The Traditional and Modern Forms in the Naming of Hungarian Women., In: Maria Giovanna Arcamone – Donatella Bremer – Davide De Camilli – Bruno Porcelli (eds). Atti del XXII Congresso Internazionale di Scienze Onomastiche Pisa, 28 agosto – 4 settembre 2005. vol. IV. Antroponomastica. Edizioni Ets. Pisa., pp. 131-140.
  27. ^ ハンガリー 安全対策基礎データ”. 外務省. 2021年10月10日閲覧。
  28. ^ チャルカ 『ハンガリーのかわいい刺しゅう』産業編集センター、2011年、19頁。 
  29. ^ a b c 田代文雄 『東欧を知る事典』平凡社、2001年、692頁。 






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