アクリロニトリル アクリロニトリルの概要

アクリロニトリル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/28 01:02 UTC 版)

アクリロニトリル
識別情報
略称 AN
CAS登録番号 107-13-1
特性
化学式 C3H3N
モル質量 53.06 g/mol
示性式 CH2=CH-C≡N
外観 無色の液体
密度 0.81 g/cm3
融点

-84 °C(189K)

沸点

77°C(350 K)

への溶解度 7 g/100 mL at 20 °C
危険性
主な危険性 可燃性,
反応性,
毒性
関連する物質
関連物質 アクリル酸,
アクロレイン
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

性質

無色透明で特有の刺激臭のある液体分子量 53.06 g/mol、融点 -83.55 沸点77.6 ℃から77.7 ℃。20 ℃の水に対する溶解度は100 mLあたり7.3 g[1]有機溶媒の多くのものと任意の割合で混じり合う。

引火性が強い(引火点 0 ℃)だけでなく、毒性が強いため空気中に20 ppm以上含まれると危険である[1]。日本では、毒物及び劇物取締法により劇物に指定されている[2]。光や酸素、アルカリの作用により重合を起こすため、保存にも注意を要する。重合禁止剤としては炭酸アンモニウムなどが用いられる[1]

反応

アクリロニトリルは各種求核試薬のマイケル付加を受けやすい。すなわち、シアノエチル化の反応試剤である。特に芳香族アミンのシアノエチル化には酢酸銅(II)が触媒に用いられる[3]

は求核剤)

また、ビニル基の部分がアルケンとしての性質を示すため、ジエンとの間でディールス・アルダー反応を起こして環化する[1]

製造

アクリロニトリルは、工業的にはプロピレンから、金属酸化物 (例:MoO3-Bi2O3-Fe2O3) 触媒の存在下にアンモニア酸素を作用させて生産される。この方法は ソハイオ法 (Sohio process) もしくはアンモ酸化 (ammoxidation) と呼ばれる。

ソハイオ法は、副生物としてシアン化水素 (HCN)、アセトニトリル (CH3CN) も得られるため、それらの製法としても利用されている。

エチレンシアンヒドリン脱水、またはアセチレンに対するシアン化水素付加反応によっても、アクリロニトリルを得ることができる。

製造量

2009年末時点で、世界のアクリロニトリル総生産能力は600万トン強。国別の生産量では、アメリカ合衆国中国日本韓国台湾の順位であった。中国は2009年の生産量が101万トンであったが、設備改造による能力アップが続き[4]、2011年に生産量が111万トンで首位となった。

2013年末の、世界のアクリロニトリル総生産能力は、旭化成ケミカルの韓国や中国石油化工集団安慶の増設によって約680万トンとなり、総生産量は約533万トンとなった[5]

2012年の日本国内生産量は553,908トン、出荷量は552,452トン、2013年の日本国内生産量は517,869トン、出荷量は526,014トンであった[6]

主要メーカー


注釈

  1. ^ 消防法 別表第一では危険物を分類しており、第1石油類は「アセトン、ガソリンその他一気圧において引火点が二一度未満のもの」と定義されている[16]

出典

  1. ^ a b c d e 簱野昌弘 著、化学大辞典編集委員会(編) 編『化学大辞典』 1巻(縮刷版第26版)、共立、1981年10月、43頁頁。 
  2. ^ a b c 安全データシート アクリロニトリル”. 職場のあんぜんサイト. 厚生労働省. 2018年3月17日閲覧。
  3. ^ 友田修司、「シアノエチル化」『世界大百科事典』、CD-ROM版、平凡社、1999。
  4. ^ 『中国石化報』「調整加工路線 讓丙烯腈更掙錢」、2010年6月1日
  5. ^ 化学工業日報社、「13年世界需要が過去最高」『化学工業日報』、2014年4月28日、東京、化学工業日報社
  6. ^ 経済産業省生産動態統計年報 化学工業統計編 経済産業省
  7. ^ 小原正美、日野哲雄「アミノ酸の製造について」『有機合成化学』第20巻第7号、有機合成化学協会、1962年7月1日、676-687頁、doi:10.5059/yukigoseikyokaishi.20.6762023年8月12日閲覧 
  8. ^ ICSC 0092 - アクリロニトリル ICSCデータベース 国際化学物質安全性カード (ICSCs)
  9. ^ 有害物質運ぶ列車が脱線・炎上、住民5000人避難 米テネシー州”. AFP BB. フランス通信社 (2015年7月2日). 2023年8月12日閲覧。
  10. ^ 毒物及び劇物取締法施行令(昭和三十年政令第二百六十一号)別表第二”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局 (2019年6月28日). 2020年1月31日閲覧。 “令和元年政令第四十四号改正、2019年7月1日施行分”
  11. ^ 労働安全衛生法施行令(昭和四十七年政令第三百十八号)別表第三 特定化学物質(第六条、第九条の三、第十七条、第十八条、第十八条の二、第二十一条、第二十二条関係)”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局 (2019年6月5日). 2020年1月31日閲覧。 “令和元年政令第十九号改正、2019年6月5日施行分”
  12. ^ 一般高圧ガス保安規則(昭和四十一年通商産業省令第五十三号)第2条: 用語の定義”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局 (2020年12月20日). 2020年1月31日閲覧。 “令和元年経済産業省令第五十四号改正、2019年12月20日施行分”
  13. ^ 大気汚染防止法の一部を改正する法律の施行について”. 環境庁. 2012年2月28日閲覧。
  14. ^ 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律施行令(昭和四十六年政令第二百一号)別表第一(第一条の二関係)二 Y類物質等”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局 (2019年4月26日). 2020年1月31日閲覧。 “平成三十一年政令第百六十三号改正、2020年1月1日施行分”
  15. ^ Acrylonitrile (stabilized with MEHQ) > 法規情報”. 東京化成工業株式会社. 2020年1月31日閲覧。 “「消防法 危-4-1-II」”
  16. ^ 消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局 (2018年6月27日). 2020年1月31日閲覧。 “平成三十年法律第六十七号改正、2019年7月1日施行分”


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