複素指数関数とは? わかりやすく解説

複素指数函数

(複素指数関数 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/16 18:33 UTC 版)

複素指数函数(ふくそしすうかんすう、: complex exponential function)とは、数学複素解析における複素関数で、実関数としての自然指数関数 y = ex = exp(x)eネイピア数)を複素数全体に解析接続したものである[1]

概説

複素指数函数のグラフ:
  • 明度は函数の絶対値を表す: 虚軸方向の変化に対して一定であり、実軸方向では右へ行く(引数の実部が大きい)ほど明るくなっているのが分かる。
  • 色相は函数の偏角を表す: 実軸方向の変化に対して一定であり、虚軸方向では引数の虚部に対する周期性が色相の繰り返しパターンから読み取れる。

具体的には、複素指数函数は次の冪級数で与えられる:

exp(x + iy) の実部
exp(x + iy) の虚部

複素指数函数の定義の仕方は大まかに2通りある。

級数による定義[6]
任意の複素数 z に対して
exp(x + iy) の絶対値
exp(x + iy) の偏角

x, y は実数として、z = x + yi = |z|earg z と書く。以下の性質は定義から直ちに確認できる:[2][7]

  • y = 0 のとき明らかに exp(z) = exp(x) = ex は実指数函数であり、したがって複素指数函数は実指数函数の複素変数への拡張である。また特に exp(0) = e0 = 1 が成り立つ。
  • 周期性: 任意の複素数 z に対して exp(z + 2πi) = exp(z) が成り立つ。すなわち、複素指数函数は周期(実は基本周期)2πi を持つ周期函数である。一般に任意の整数 n に対して exp(z + 2nπi) = exp(z) が成り立つ。この周期性のために、逆函数となるべき対数函数の複素数への拡張は無限多価となる。
  • 絶対値に関して、|exp(z)| = |ex| および |exp(iy)| = 1 が成り立つ。すなわち、複素指数函数の絶対値は引数の実部のみによって決まり、引数の虚部の影響を受けない。また特に任意の z に対して exp(z) ≠ 0 が言える。
  • 複素共役に関して、exp(z) = exp(z) が成り立つ。

さらに以下の性質は重要である:[2][7]

これらは三角函数の性質から導くこともできるし、級数による定義に対してコーシー積を直接計算しても示せる。あるいは実指数函数の対応する性質に解析接続の一般論を適用しても示せる。

出典

  1. ^ 高木 1983, p. 230.
  2. ^ a b c d 木村 & 高野 1991, p. 25.
  3. ^ a b ブルバキ 1968, p. 96, 第3章 §1.5. 複素指数関数.
  4. ^ a b ブルバキ 1968b, p. 97.
  5. ^ ブルバキ 1968, pp. 98–99, 第3章 §1.7 複素対数関数.
  6. ^ 高木 1983, p. 193.
  7. ^ a b ブルバキ 1968, p. 97, 第3章 §1.6. 関数 ez の性質.

参考文献

関連項目

外部リンク


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複素指数関数

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/03 14:38 UTC 版)

指数関数」の記事における「複素指数関数」の解説

詳細は「複素指数函数」を参照変数指数函数対すテイラー級数において、変数そのまま複素数取り換えることによってガウス平面 C 上の複素函数得られる。すなわち、複素指数函数は、任意の複素数 z に対して exp ⁡ z = ∑ n = 0 ∞ 1 n ! z n {\displaystyle \exp z=\sum _{n=0}^{\infty }{\frac {1}{n!}}z^{n}} によって定まる整関数である。実指数関数について成り立つ性質いくつかは複素指数関数に対してそのまま成り立つ。また、変数 x の純虚指数函数cis ⁡ ( x ) := exp ⁡ ( i x ) ( = cos ⁡ x + i sin ⁡ x ) {\displaystyle \operatorname {cis} (x):=\exp(ix)(=\cos x+i\sin x)} で定義される変数複素数函数である(オイラーの公式の項も参照)。

※この「複素指数関数」の解説は、「指数関数」の解説の一部です。
「複素指数関数」を含む「指数関数」の記事については、「指数関数」の概要を参照ください。

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