恒等とは? わかりやすく解説

恒等写像

(恒等 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/05 07:54 UTC 版)

ナビゲーションに移動 検索に移動

数学における恒等写像(こうとうしゃぞう、: identity mapping, identity function)、恒等作用素(こうとうさようそ、: identity operator)、恒等変換(こうとうへんかん、: identity transformation)は、その引数として用いたのと同じ値を常にそのまま返すような写像である。集合論の言葉で言えば、恒等写像は恒等関係(こうとうかんけい、: identity relation)である。

定義

厳密に述べれば、M集合として、M 上の恒等写像 f とは、定義域および終域がともに M であるような写像であって、M の任意の元 x に対して

f(x) = x

を満たすものを言う[1]。言葉で書けば、M 上の恒等写像は、M の各元 xx 自身を対応させて得られる M から M への一つの写像である[2]

M 上の恒等写像はしばしば idM1M などで表される。

写像を二項関係と見るならば、恒等写像は恒等関係と呼ばれる函数関係英語版、即ち M の対角集合 (diagonal set) Δ = {(x, x) | xM} で与えられる[3]

性質

f: MN を任意の写像とすると、

が成り立つ("∘" は写像の合成)。特に、idMM から M への写像(M 上の変換)全体の成す集合が合成に関して成す半群M 上の全変換半群英語版TM における単位元(中立元)であり、従って TMモノイドを成す。

モノイドの単位元はただ一つであるから、M 上の恒等写像の別な定義として、全変換モノイドの単位元として定めることも可能である。このような定義は、圏論における恒等射の概念に一般化することができる。この文脈では M 上の自己型射が写像である必要はない。

集合上の構造との関係

  • 正整数全体の成す乗法モノイドの上で恒等写像を考えると、それは本質的に 1-倍写像であり、また数論的函数の意味で完全乗法的英語版である[4]
  • ベクトル空間上の恒等写像は線型写像である[5]n-次元線型空間上の恒等写像は n × n 単位行列 In を表現行列に持つが、これは基底の取り方に依らない[6]
  • 距離空間における恒等写像は自明な意味で等長写像である。いかなる対称性も持たない任意の対象が、恒等写像のみからなる自明群対称変換群英語版として持つ(対称型が C1 である)[7]
    • 単に台集合 X 上の恒等写像 idX を考えた場合、X 上の異なる距離 d1, d2 に関して、恒等写像 idX は二つの距離空間 (X, d1), (X, d2) の間の等距変換とはならない。
  • 位相空間 (X, τ1), (X, τ2) と台集合 X 上の恒等写像 IX を考えたとき、IX が連続写像となるための必要十分条件は、τ1τ2 よりも細かいことである。

注記

  1. ^ (Knapp 2006)
  2. ^ (松坂 1968, p. 28)
  3. ^ (ブルバキ 1984, p. 10)
  4. ^ (Marshal, Odell & Starbird 2007)
  5. ^ (Anton 2005)
  6. ^ (Shores 2007)
  7. ^ (Anderson 2005)

参考文献

関連項目

外部リンク


恒等

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 02:12 UTC 版)

等号」の記事における「恒等」の解説

詳細は「合同記号」を参照 常に等号成り立つ恒等式を、方程式明確に区別したいとき「≡」が使われる。ただし「=」使って間違いではない。 A ≡ B (A と B は恒等的に等しい) 「=」と「≡」の違い次の例でわかりやすい。 x + 1 = 0 (方程式)x + 1 ≡ 1 + x (恒等式また、定義を通常の等式区別したいときも「≡」が使われる。ただし「=」使って間違いではない。 A ≡ B (A を B と定義するこの他の定義の表し方については#定義を参照

※この「恒等」の解説は、「等号」の解説の一部です。
「恒等」を含む「等号」の記事については、「等号」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「恒等」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

「恒等」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「恒等」の関連用語

恒等のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



恒等のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの恒等写像 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの等号 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS