山岳賞とは? わかりやすく解説

山岳賞

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/17 15:14 UTC 版)

山岳賞(さんがくしょう)とは、自転車ロードレースにおいて山岳部門賞を制した選手に与えられる賞である。この賞を制した選手を「山岳王(さんがくおう)」とも呼ぶ。

概要

自転車ロードレースにおいては、総合タイムの優劣で覇を競う総合成績とは別に、コースが丘や山脈を越える峠の頂上付近に山岳賞地点を設定し、その地点の通過順位によって与えられるポイントの合計によって争われる山岳部門賞がある。この山岳賞地点は、難度の高さに応じて、最も難度の高い地点を「カテゴリー超級」とし、以下順番に最も難度の低い地点をカテゴリー4級として設けて、その地点を通過した順に選手に高いポイントが付与されるが、各カテゴリーのポイント設定は難度に応じて異なり、超級のポイント設定は最も高い。そして完走した選手の中で、最もポイントを多く稼いだ選手が『山岳賞』を受賞し、“山岳王”の称号[1]を得る。

ツール・ド・フランスジロ・デ・イタリアでは1933年より山岳部門賞が設けられ、その後、その他のレースにおいても山岳賞が設けられるようになった。

グランツールなどのステージレース(複数の日数にわたって行われるレース)においては、総合優勝争いとは別にこの賞の争いも注目される。そして年によっては、同一の選手がこの賞と総合優勝の両方を獲得するケースもある。

ワンデーレース(一日のみのレース)の中にも山岳に占める割合が高く、山岳賞のあるレースが存在するが、山岳賞争いが注目されるのは一般的にはグランツールをはじめとしたステージレースである。

コースが山岳のみのヒルクライムでは優勝が山岳賞と同意義である。

各カテゴリーの目安

山岳地点の各カテゴリーは、基本的に各レースの主催者が独自の判断で付与するものであり、統一的な基準は定められていない。ただグランツールなどの本格的ステージレースの場合、おおむね次のような傾向を持っている。

  • 超級:標高差1000〜1500m以上
  • 1級:標高差600〜800m以上
  • 2級:標高差400m以上
  • 3級:標高差150〜200m以上
  • 4級:それ以下。主催者の判断に委ねられる。

この他、勾配の厳しさやコース中の位置なども考慮される。勾配は、平均で4〜5%以上、最大で6.5%以上あることが多い。ツール・ド・フランスでは、コース中最も厳しい勾配でも10%前後であるが、ジロ・デ・イタリアでは22パーセント(モンテ・ゾンコラン)、ブエルタ・ア・エスパーニャでは23.5パーセント(アングリル)といった、“激坂”とも呼ばれる厳しい勾配が登場することがある。

著名なる『山岳王』

グランツールにおける通算獲得回数上位選手

フェデリコ・バーモンテススペイン)…9回
ツール・ド・フランス 6回(1954, 1958, 1959, 1962, 1963, 1964)
ジロ・デ・イタリア 1回(1956)
ブエルタ・ア・エスパーニャ 2回 (1957, 1958)
ジーノ・バルタリイタリア)…9回
ツール・ド・フランス 2回(1938, 1948)
ジロ・デ・イタリア 7回(1935, 1936, 1937, 1939, 1940, 1946, 1947)
ルシアン・バンインプベルギー)…8回
ツール・ド・フランス 6回 (1971, 1972, 1975, 1977, 1981, 1983)
ジロ・デ・イタリア 2回(1982, 1983)

全グランツール受賞達成者

過去に2人達成している。

フェデリコ・バーモンテス(スペイン)…重複を避けるため、成績は上記参照
ルイス・エレラコロンビア
ツール・ド・フランス 2回(1985,1987)
ジロ・デ・イタリア 1回(1989)
ブエルタ・ア・エスパーニャ 2回(1987,1991)

グランツールにおける山岳賞受賞選手

各レース山岳賞受賞者
ツール・ド・フランス ジロ・デ・イタリア ブエルタ・ア・エスパーニャ
1933  ビセンテ・トルエバ アルフレッド・ビンダ -
1934 ルネ・ヴィエット レーモ・ベルトーニ -
1935 フェリシアン・フェルヴァーク ジーノ・バルタリ エドアルド・モリナール
1936 フリアン・ベレンデロ ジーノ・バルタリ サルバドール・モリナ
1937 フェリシアン・フェルヴァーク ジーノ・バルタリ -
1938  ジーノ・バルタリ  ジョヴァンニ・ヴァレッティ -
1939  シルヴェール・マース  ジーノ・バルタリ -
1940 - ジーノ・バルタリ -
1941 - - フェルミン・トルエバ
1942 - - フリアン・ベレンデロ
1945 - - フリアン・ベレンデロ
1946 - ジーノ・バルタリ エミリオ・ロドリゲス
1947 ピエッレ・ブランビッラ ジーノ・バルタリ エミリオ・ロドリゲス
1948 ジーノ・バルタリ ファウスト・コッピ ベルナルド・ルイス
1949 ファウスト・コッピ ファウスト・コッピ -
1950 ルイゾン・ボベ ユーゴ・コブレ エミリオ・ロドリゲス
1951 ラファエル・ジェミニアーニ ルイゾン・ボベ -
1952 ファウスト・コッピ ラファエル・ジェミニアーニ -
1953 ヘスス・ロロニョ パスクアーレ・フォルナーラ -
1954 フェデリコ・バーモンテス ファウスト・コッピ -
1955 シャルリー・ゴール ガストネ・ネンチーニ ジュゼッペ・ブラッティ
1956 シャルリー・ゴール シャルリー・ゴール
フェデリコ・バーモンテス
ニーノ・デフィリッピス
1957 ガストネ・ネンチーニ ラファエル・ジェミニアーニ フェデリコ・バーモンテス
1958 フェデリコ・バーモンテス ジャン・ブランカルト フェデリコ・バーモンテス
1959 フェデリコ・バーモンテス シャルリー・ゴール アントニオ・スアレス
1960 イメリオ・マッシニャン リック・ファン・ローイ アントニオ・カルマニ
1961 イメリオ・マッシニャン ヴィート・タッコーネ アントニオ・カルマニ
1962 フェデリコ・バーモンテス アンヘリノ・ソレル アントニオ・カルマニ
1963 フェデリコ・バーモンテス ヴィート・タッコーネ フリオ・ヒメネス
1964 フェデリコ・バーモンテス フランコ・ビトッシ フリオ・ヒメネス
1965 フリオ・ヒメネス フランコ・ビトッシ フリオ・ヒメネス
1966 フリオ・ヒメネス フランコ・ビトッシ グレゴリオ・サン・ミゲル
1967 フリオ・ヒメネス アウレリオ・ゴンサレス マリアーノ・ディアス
1968 アウレリオ・ゴンサレス エディ・メルクス フランシスコ・ガビカ
1969 エディ・メルクス クラウディ・ミケロット ルイス・オカーニャ
1970 エディ・メルクス マルタン・ファン・デン・ボスヘ アグスティン・タマメス
1971 ルシアン・バンインプ ホセ・マヌエル・フエンテ ヨープ・ズートメルク
1972 ルシアン・バンインプ ホセ・マヌエル・フエンテ ホセ・マヌエル・フエンテ
1973 ペドロ・トレス ホセ・マヌエル・フエンテ ホセルイス・アビジェイラ
1974 ドミンゴ・ペルレナ ホセ・マヌエル・フエンテ ホセルイス・アビジェイラ
1975 ルシアン・バンインプ フランシスコ・ガルドス
アンドレス・オリバ
アンドレス・オリバ
1976 ジャンカルロ・ベッリーニ アンドレス・オリバ アンドレス・オリバ
1977 ルシアン・バンインプ ファウスティノ・フェルナンデス ペドロ・トレス
1978 マリアーノ・マルティネス ウエリ・ズッター アンドレス・オリバ
1979 ジョヴァンニ・バッタリン クラウディオ・ベルトロット フェリペ・ヤネス
1980 レイモン・マルタン クラウディオ・ベルトロット フアン・フェルナンデス
1981 ルシアン・バンインプ クラウディオ・ベルトロット ホセ・ルイス・ラギア
1982 ベルナール・ヴァレ ルシアン・バンインプ ホセ・ルイス・ラギア
1983 ルシアン・バンインプ ルシアン・バンインプ ホセ・ルイス・ラギア
1984 ロバート・ミラー ローラン・フィニョン フェリペ・ヤネス
1985 ルイス・エレラ ホセ・ルイス・ナバロ ホセ・ルイス・ラギア
1986 ベルナール・イノー ペドロ・ムニョス ホセ・ルイス・ラギア
1987 ルイス・エレラ ロバート・ミラー ルイス・エレラ
1988 スティーブン・ルークス アンドリュー・ハンプステン アルバロ・ピノ
1989 ヘルト=ヤン・テュニス ルイス・エレラ オスカル・バルガス
1990 ティエリ・クラベイローラ クラウディオ・キアプッチ ホセ・マルティン・ファルファン
1991 クラウディオ・キアプッチ イニャキ・ガストン ルイス・エレラ
1992 クラウディオ・キアプッチ クラウディオ・キアプッチ カルロス・エルナンデス
1993 トニー・ロミンゲル クラウディオ・キアプッチ トニー・ロミンゲル
1994 リシャール・ヴィランク パスカル・リシャール リュク・ルブラン
1995 リシャール・ヴィランク マリアーノ・ピッコリ ローラン・ジャラベール
1996 リシャール・ヴィランク マリアーノ・ピッコリ トニー・ロミンゲル
1997 リシャール・ヴィランク ホセ・ハイメ・ゴンサレス ホセ・マリア・ヒメネス
1998 クリストフ・リネロ マルコ・パンターニ ホセ・マリア・ヒメネス
1999 リシャール・ヴィランク ホセ・ハイメ・ゴンサレス ホセ・マリア・ヒメネス
2000 サンティアゴ・ボテロ フランチェスコ・カーザグランデ カルロス・サストレ
2001 ローラン・ジャラベール フレディ・ゴンサレス ホセ・マリア・ヒメネス
2002 ローラン・ジャラベール フリオ・ペレス・クアピオ アイトール・オサ
2003 リシャール・ヴィランク フレディ・ゴンサレス フェリックス・カルデナス
2004 リシャール・ヴィランク ファビアン・ヴェークマン フェリックス・カルデナス
2005 ミカエル・ラスムッセン ホセ・ルハノ ホアキン・ロドリゲス
2006 ミカエル・ラスムッセン フアン・マヌエル・ガラーテ エゴイ・マルチネス
2007 マウリシオ・ソレール レオナルド・ピエポリ デニス・メンショフ
2008 なし
ベルンハルト・コール
(ドーピング違反により没収)
エマヌエーレ・セッラ ダヴィ・モンクティエ
2009 なし
フランコ・ペッリツォッティ
(ドーピング違反により没収)
ステファノ・ガルゼッリ ダヴィ・モンクティエ
2010 アントニー・シャルトー マシュー・ロイド ダヴィ・モンクティエ
2011 サムエル・サンチェス ステファノ・ガルゼッリ ダヴィ・モンクティエ
2012 トマ・ヴォクレール マッテオ・ラボッティーニ サイモン・クラーク
2013 ナイロ・キンタナ ステファノ・ピラッツィ ニコラ・ウデ
2014 ラファウ・マイカ ジュリアン・アレドンド ルイス・レオン・サンチェス
2015 クリス・フルーム ジョヴァンニ・ヴィスコンティ オマル・フライレ
2016 ラファウ・マイカ ミケル・ニエベ オマル・フライレ
2017 ワレン・バルギル ミケル・ランダ ダヴィデ・ヴィッレッラ
2018 ジュリアン・アラフィリップ クリス・フルーム トーマス・デ・ヘント
2019 ロメン・バルデ ジュリオ・チッコーネ ジョフリー・ブシャール
2020 タデイ・ポガチャル ルーベン・ゲレイロ英語版 ギョーム・マルタン英語版
2021 タデイ・ポガチャル ジョフリー・ブシャール マイケル・ストーラー英語版
2022 ヨナス・ヴィンゲゴー クーン・バウマン リチャル・カラパス
2023 ジュリオ・チッコーネ ティボー・ピノ レムコ・エヴェネプール

※太字は総合優勝&山岳賞
※斜太字は総合優勝&山岳賞&ポイント賞

脚注

  1. ^ 英語ではキングオブマウンテン(King of Mountain、略称:KOM)と呼ぶ。

関連項目


山岳賞(モンターニャ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 06:28 UTC 版)

ブエルタ・ア・エスパーニャ」の記事における「山岳賞(モンターニャ)」の解説

ツールマイヨ・ブラン・ア・ポワ・ルージュの風の青色水玉ジャージ、「モンターニャMontaña)」は「山岳賞」に対して与えられる。「マイヨ・デ・ルナレス (Maillot de lunares)」とも呼ばれる登り坂勾配長さに応じて点数設定され山岳ポイント地点通過順位に応じて山岳ポイント加算され山岳ポイント1位の選手が「モンターニャ着用権利を得る。ポイント制ツール違い通常山岳は1~3級3分割、それに加え山頂フィニッシュ山頂フィニッシュという1級上のカテゴリーとなり、加え最大山岳には特別ポイントが入る場合もある。2016年スポンサースペイン宝くじ公社別のスポンサー時にはワインレッド銀色オレンジ色などだったこともある。

※この「山岳賞(モンターニャ)」の解説は、「ブエルタ・ア・エスパーニャ」の解説の一部です。
「山岳賞(モンターニャ)」を含む「ブエルタ・ア・エスパーニャ」の記事については、「ブエルタ・ア・エスパーニャ」の概要を参照ください。

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