仮想水とは? わかりやすく解説

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バーチャルウォーター

別名:仮想水、間接水ヴァーチャルウォーター
英語:virtual water

主に農産品工業製品生産及び流通過程消費され、あるいは輸入国が、輸入した物品自国生産した場合に、どの程度水資源実際は必要であるかを試算したもの。

バーチャルウォーターの概念は、1990年代イギリスロンドン大学のアンソニー・アラン教授によって提唱された。

バーチャルウォーターの概念は、水資源保全などに関連して議論される場合用いられることが多い。環境省によると、2005年日本輸入されたバーチャルウォーターは約800億m³とされており、日本国内年間使用量と同程度であるとされている。

関連サイト
Virtual water - 環境省

かそう‐すい〔カサウ‐〕【仮想水】

読み方:かそうすい

バーチャルウオーター


仮想水

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/15 00:15 UTC 版)

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仮想水(かそうすい)またはバーチャルウォーター: Virtual water)とは、農産物畜産物生産に要したの量を、農産物・畜産物の輸出入に伴って売買されていると捉えたものである(工業製品についても論じられるが、少量である)。

世界的に水不足が深刻な問題となる中で、潜在的な問題をはらんでいるものとして仮想水の移動の不均衡が指摘されるようになってきた。

概要

出荷額1億円の日本の工業製品を生産するのに必要な仮想水(推計値1998年)-[1]-
工業製品名 水量
パルプ・紙・紙加工品 45.3トン
繊維工業 24.8トン
化学工業 14.4トン
鉄鋼業 11.8トン
食料品・たばこ・飼料 4.3トン
機械器具 0.9トン
平均 4.7トン
農畜産物1kgを生産するのに必要な仮想水-[2][3]-
農産物名 水量
3.6トン
大麦 2.6トン
小麦 2.0トン
トウモロコシ 1.9トン
大豆 2.5トン
牛肉 20.6トン
豚肉 5.9トン
鶏肉 4.5トン
3.2トン

仮想水は、乾燥地帯に位置する中東産油国諸国で水利権を巡る紛争が起きない理由に関する考察から提唱された。これは、石油の輸出で得られる外貨食料を輸入することで、その生産に投入されたをも間接的に購入したものと解釈できるからである。水自体の輸送は多大なコストを要するため現実的ではないものの、その最終産物を輸入することで同様なことが現実的なコストで実現できているという効果である。この理論を打ち出したのがロンドン大学のアンソニー・アラン(Anthony Allan)である。

東京大学沖大幹はこれに対し、同じ産品を輸入国側で生産したときに必要となる水の量を間接水(かんせつすい)、輸出国側で実際に投入された水の量を直接水(ちょくせつすい)と呼んで区別した。これらは、特に農産物の場合気候等の条件によって水の所要量は異なるため、一致するとは限らない。全体として直接水の方が少なく、結果として貿易は世界的な水の使用量を節約している形になっている。

世界の水の使用量の内訳は、工業に2割、生活に1割、残り7割は農業であり、農産物を生産するのに必要な水が多い[4]

仮想水の算出

農畜産物1kgあたりの仮想水の量は、灌漑法や、製造工程での廃棄率によって変わるため、正確な算出は難しく、試算によって大きく違うこともある。

農作物の仮想水は、主に灌漑で使った水である。天水(雨水)は、同じ量を使っても水資源としてはほとんど消費しておらず仮想水に対する影響はほとんどないため、降雨の豊富な地方で生産すれば仮想水は少なくなる。概して、水田で灌漑するは1kgあたり仮想水が多い。C4植物であるトウモロコシは仮想水が少ない。

畜産物はとりわけ、使用する飼料により仮想水の量が大きく変わる。穀物飼料を用いる場合は、非常に多くなる。牛肉は、ウシの成育期間が長いこと、飼料に穀物を多く使うことから、1kgあたり仮想水が多い。

牛丼1杯に水が風呂桶10杯分の2トンほど必要になると形容される[5][6]。あるいは、安価なジーンズを1本作るのに最大1万1000リットルの水が使われ、1ドル未満のハンバーガーに2400リットル以上の水が必要だというイギリス非営利団体ウオーターワイズによる試算もある。

工業製品に使う水は、農畜産物に比べれば少量だが、無視できるほどではない。

日本の問題

日本の仮想水輸入国と
その内訳-[5]-
国名 水量
アメリカ 389億トン
オーストラリア 89億トン
カナダ 49億トン
ブラジルおよび
アルゼンチン
25億トン
中国 22億トン
デンマーク 14億トン
タイ 13億トン
南アフリカ 3億トン
その他 36億トン
日本の仮想水輸入の主要品目別内訳-[1]-
製品 割合
牛肉 45.3%
小麦 18.6%
大豆 16.0%
とうもろこし 12.4%
豚肉 4.3%
その他 3.4%

日本は食料自給率が低く、世界最大の農産物輸入国である。このため、食料輸入という形で大量の仮想水を輸入している。日本国内で消費する水が570億立方メートルあるのに対して、国外の農産物関連は640億立方メートルを消費しており、国外の水消費が上回っている[7]。日本は木材も大量に輸入しており、木材の生産で消費する水は471億立方メートルに達している[8]。日本が輸入する仮想水のうち6.8%は、枯渇が懸念される地下水であり、仮想水の最大輸入国のアメリカの地下水が多い[9]

食料輸出の形で仮想水を輸出する側の国は、必ずしも水資源に余裕があるとは限らない。工業化の遅れた国では主要な産業第一次産業となり、必ずしも豊富とは言えない水資源の元で生産された農産物を外貨獲得のため輸出せざるを得ない状況となっているケースが見られる。これは、人口増加とともに深刻化する水問題のなかで、豊かな国へ仮想水が集中する方向に作用する。そして、日本は大量の仮想水を輸入しており、その量は年間で数百億から千数百億トンと見積もられている。日本で使用される工業用水は年間130億トン程度であり、工業品輸出はこれを相殺するに至っていない。

環境省のサイトでは、仮想水の計算ソフトが公開されている(#外部リンク参照)。

出典・脚注

[脚注の使い方]

出典

  1. ^ a b 日本を中心とした仮想水の輸出入(三宅基文・沖大幹・虫明功臣)
  2. ^ 「日本水資源も海外依存 食糧輸入でひずみ他国へ」(読売新聞、2007年4月13日・大阪夕刊)
  3. ^ virtual water 環境省
  4. ^ 「2025年に50億人超が水不足に 国連が予測」(毎日新聞2003年8月12日・大阪朝刊)
  5. ^ a b 「日本の水輸入 低きに流れない水」(朝日新聞、2006年7月2日朝刊)
  6. ^ 「水危機(2)牛丼1杯風呂10杯分」(読売新聞、2008年1月22日・東京朝刊)
  7. ^ 沖 2008, pp. 69–70.
  8. ^ 渡邉, 沖, 太田 2009, pp. 127–128.
  9. ^ 日本の輸入食料、海外産地は水427億トンで生産」(読売新聞、2008年3月1日)

参考文献

関連項目

外部リンク



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