メトネル

「20世紀前半に活動したロシア人作曲家・ピアニスト」というメトネルの出自は、実際に彼の作品を耳にしたときにある種の違和をもって感じられる。
人類がふたつの世界大戦を体験した20世紀前半、それに呼応するように芸術においてもダダイズム、シュールレアリズムなど新しい概念が次々に持ち込まれた。西洋音楽に関しても第二ヴィーン楽派の登場など、調性と様式はその枠を外し、作品世界は拡張の一途にあった。
しかし、メトネルの作品から聴こえてくるのは伝統的とさえいえるイディオムで描かれたロマン派―――ドイツ、後期のロマン派―――直結の優美な響きである。「あれを音楽というのなら私は音楽家ではない」とは彼がプロコフィエフを指した発言だが、この言葉からも顕著なようにモダニズム、前衛という括りから逃れ続けたのがメトネルという作曲家であった(ただし、時代に逆行したという見解から読み解くのではなく、伝統的手法で現在を描き出そうとした点で独特の存在であったというべきであろう)。
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