London Underground 2009 Stockとは? わかりやすく解説

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ロンドン地下鉄2009形電車

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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/09/01 21:25 UTC 版)

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ロンドン地下鉄2009形電車
2009形電車
基本情報
製造所 ボンバルディア・トランスポーテーション
主要諸元
編成 8両編成
軌間 1,435 mm
電気方式 直流630V[1] 4線軌条式
最高運転速度 80[3] km/h
起動加速度 4.68[4] km/h/s
減速度(常用) 4.1[4] km/h/s
減速度(非常) 5.0[4] km/h/s
編成定員 座席288人[1]
立席576人[1]
編成重量 194.4t[1]
編成長 133.28m[2]
全幅 2,602[5] mm
全高 2,880[5][6] mm
車体 アルミニウム[5]
主電動機 かご形三相誘導電動機 [1]
制御装置 VVVFインバータ制御
IGBT素子[1]
備考 ヴィクトリア線
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ロンドン地下鉄2009形電車(:London Underground 2009 Stock)は、2009年7月から2011年6月にかけて、8両47編成合計376両が営業運転に投入されたロンドン地下鉄 ヴィクトリア線用の電車である。ロンドン地下鉄の2種類ある車両サイズのうち、小さいほうのサイズの車両群に属する。ヴィクトリア線近代化計画の一環として、信号システム、自動運転装置の更新と併せてボンバルディア・トランスポーテーションが一括して受注し、同社のモヴィアとよばれる地下鉄用車両シリーズの一種である[7][8]

概要

2009形電車はボンバルディアとメトロネット(2011年会社清算)と呼ばれるロンドン地下鉄運営会社の一つとの間で結ばれた、ヴィクトリア線と半地表各線[注釈 1]ATO信号システム更新を含む34億ポンドの契約の一部である[9]。部品交換を含む車両保守もボンバルディアが受注し、ヴィクトリア線ノーザンバーランド・パーク車両基地で保守作業が行われている[10]。ヴィクトリア線で運用されていた1967形電車に対して、最高速度、加減速性能を向上させることで運転時間を16%短縮、その分増発が可能となり[3][4]、ピーク時には1967形時代より6本多い43本の列車が運転される[11]。ヴィクトリア線の車両限界がロンドン地下鉄の他のシールドトンネル各線[注釈 2]よりもやや大きいことを活用し、2009形電車の車体幅は1967形電車よりも40mm広くなっている[5]が、この拡幅により、2009形電車を他の路線に転用することはできなくなっている[12]。ボンバルディアのFICASと呼ばれる技術により車体外壁が薄くなり、全幅の拡大と併せて客室面積が拡大されている[13] 。冷房装置は搭載されていない。

本文中の車両形式略号などはロンドン地下鉄の車両形式および車両番号の付与方法を参照のこと。

外観

ボンバルディアのモヴィアシリーズの一種とされているが、ロンドン地下鉄の特殊な車両限界に対応するため、扉配置などの外観には独自色が表れている。側面は片側4扉、うち中央部2箇所が両開き、車端部2箇所が片開き、すべての扉が外吊り式である。ロンドン地下鉄の1935形電車以降の小断面車両各形式に見られるこの扉配置は、床面高さを下げるために台車上部が台枠内に入り込む構造上、強度が落ちる開口部を台車直上に配置しないためのものである。先頭車はドア1箇所分を運転台としているため3扉である。ヴィクトリア線のほとんどの駅のプラットホームが進行方向右側にあるため、ロンドン地下鉄の他車両と異なり運転席は車両右側に設けられた[14]。 1967形電車では乗務員室には扉がなく、乗務員室への出入りは客室を経由していたが、2009形電車の乗務員室には扉が設けられた[15][16]。車体側面中央部窓上にLED式行先表示装置が設けられた。

塗装は他のロンドン地下鉄各車両と同じく、白を基調とし、車体下部が青、客用ドアと前面部が赤とされている。

LED式行先表示装置

内装

量産車の内装
2009形車内のLED式旅客案内表示装置

座席定員は編成あたり288人(折りたたみ式椅子24人分を除く)で、立席は576人相当とされており[注釈 3]、1967形より19%増加[3]、乗降の容易化のため、ドア幅も広げられた[17]。ロンドン地下鉄の車両として初めて日本の交通バリアフリー法に相当する英国の鉄道車両のアクセスに関する法律の適用を受けており[18]、跳ね上げ式椅子を備えた多目的スペース、車椅子、ベビーカー用スペース[19]、車椅子での乗降容易化のため車両中心からずらして設置されたスタンションポールなど、移動制約者に配慮した装備が設けられた[20]CCTV、LED式旅客案内装置、自動放送装置が備えられた[5]ほか、車輪径にかかわらず車両全高を一定に保つ装置が搭載された[21]

主要機器

制御装置はボンバルディア製エレクトロスターのものを改良したものとされている[22]。当初は予定された加速性能を確保するため1992形電車同様全車電動車とする計画だったが、 75%を動軸とすれば十分であるとされ[23] 約1,000万ポンド[24]、総プロジェクト費用の3.5%相当が削減された[25]。 ブレーキ制御システムは各種条件を加味して最適な制動力が得られるとされるクノールブレムゼ製EP2002が採用された[1]。ロンドン地下鉄の他車両と異なり、先頭部の電気連結器は省略され、密着連結器のみが設けられた[26]。ロンドン地下鉄で初めてドアの開閉が電気式とされた[1]

編成

2009形電車側面図

各編成は制御電動車(DM) - 付随車(T) – 中間電動車(NDM) – 簡易運転台付中間電動車(UNDM)の4両1ユニットを背中合わせに組み合わせた8両編成で構成される[27][28]。 2009形電車の番号体系は下表の通り。北向が'A'DMで南向が'D'DMとなる。Aユニットの下ひと桁は奇数のみ、Dユニットの下ひと桁は偶数のみで、ユニットを組む車両の下3桁の番号は同一である。

記号 'A' DM T NDM UNDM
車両番号 11001

11093
12001

12093
13001

13093
14001

14093
質量[1] 26.8t 21.6t 22.38t 22.52t
UNDM NDM T 'D' DM
14002

14094
13002

13094
12002

12094
11002

11094
22.52t 22.38t 21.6t 26.8t

営業運転への投入

2009形電車の設計は2004年9月に完了し、2編成の量産先行車の製造が2006年中ごろの完成を予定し、2005年1月に開始された[8]。2006年2月3日にメトロネットが静的試験用の先行生産車が完成したことを発表した。2006年7月21日から8月4日まで、車両モックアップがユーストン・スクエア駅近くで一般公開され、続いて実用試験に用いられた。

2006年9月からボンバルディアのリチャーチ・レーン工場の試験設備での試験が開始された[5]。2006年末までには実車がヴィクトリア線に搬入され、夜間試験が開始される契約だった[8]が実際の試験開始は2007年5月となった。この夜間試験の間に乗務員と保守作業員の習熟が併せて行われた。

2編成目の先行生産車も夜間試験ののち2008年7月から試験的営業運転を開始する予定だった[5]が、2回の延期[29]の末2009年7月に試験的営業運転が開始された。 最初の営業列車は2009年7月21日ノーザンバーランド・パーク車両基地を23時00分に発車 [30] 、23時55分セヴン・シスターズ駅発ブリクストン駅行きとして運転された[7]

2009年末に本格的生産が始まり、2010年2月から2週間に1編成の割合で新車が投入された。2011年の半ばには1967形電車全車を置き換えるのに十分な数の2009形電車がそろい、2011年6月30日に1967形電車は定期運用からはずされた。

脚注

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注釈

  1. ^ :Sub-surface lines。サークル線ハマースミス&シティー線ディストリクト線メトロポリタン線のロンドン地下鉄では大型の車両を使う4線を指す。
  2. ^ :Deep-level tube lines。シールドトンネルで構築された半地表路線以外の路線を指す。
  3. ^ 座席及び立席定員はロンドン交通局の公表値 Archived 2013年11月5日, at the Wayback Machine.による。ロンドン交通局の座席288人、立席576人に対し、ボンバルディアは座席定員252人、立ち席1196人と公表している。ロンドン交通局は立席1平方メートル当たり4名、ボンバルディアは扉間は1平方メートル当たり6名、ドア部は同8名で算出している。座席定員の差がどこから来るのかは不明。

出典

  1. ^ a b c d e f g h i 2009 stock”. ロンドン交通局. 2013年11月5日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2013年1月4日閲覧。
  2. ^ Technical data”. Metro - London, United Kingdom. ボンバルディア・トランスポーテーション. 2010年3月2日閲覧。
  3. ^ a b c Transforming the Tube - Victoria Line”. ロンドン交通局 (2009年). 2009年7月22日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2009年8月5日閲覧。
  4. ^ a b c d District Dave's London Underground Forum: 09TS @ Litchurch Lane Test Track”. tubeprune (2006年8月23日). 2009年8月7日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g Hawkins, John. “2009 Tube Stock on Track”. 2009年5月20日閲覧。
  6. ^ London Underground Rolling Stock - Sizes of Cars”. Tubeprune (2003年12月10日). 2009年8月7日閲覧。
  7. ^ a b New Victoria Line Stock Makes Its Public Debut”. London Reconnections (2009年7月22日). 2011年6月21日閲覧。
  8. ^ a b c “Bombardier Presents New Look For Metro Cars On London's Victoria Line” (プレスリリース), ボンバルディア・トランスポーテーション, (2004年9月22日), http://bombardier.com/en/corporate/media-centre/press-releases/details?docID=0901260d80016d79 2009年8月5日閲覧。 
  9. ^ “Bombardier Wins Transportation Supply Contract Worth $7.9 Billion Cdn for the London Underground in U.K.” (プレスリリース), Montreal: ボンバルディア・トランスポーテーション, (2003年4月7日), http://bombardier.com/en/corporate/media-centre/press-releases/details?docID=0901260d800183d6 2009年8月5日閲覧。 
  10. ^ prjb (2006年7月18日). “District Dave's London Underground Forum: 2009TS Construction”. 2009年8月7日閲覧。
  11. ^ BCV (Bakerloo, Central & Victoria) Upgrade: Victoria Line”. alwaystouchout.com (2006年9月8日). 2009年8月5日閲覧。
  12. ^ mackenzie_blu (2009年7月25日). “New 2009 stock arrives at Victoria Line Station”. 2009年8月5日閲覧。
  13. ^ stephenk (2006年7月17日). “District Dave's London Underground Forum: 2009TS Construction”. 2009年8月7日閲覧。
  14. ^ subwayrail (2006年4月7日). “District Dave's London Underground Forum: 2009TS Construction”. 2009年8月7日閲覧。
  15. ^ London Underground Rolling Stock - Design and Equipment”. Tubeprune (2003年12月10日). 2009年8月7日閲覧。
  16. ^ fIIsion (2009年5月20日). “New 2009 stock arrives at Victoria Line Station”. 2009年8月5日閲覧。
  17. ^ “Final 1960s stock withdrawn from Victoria Line”. Rail (Peterborough): p. 14. (2011年8月10日) 
  18. ^ prjb (2006年8月23日). “District Dave's London Underground Forum: 2009TS Construction”. 2009年8月7日閲覧。
  19. ^ stephenk1977 (2006年8月9日). “Flickr: stephenk1977's photostream - 09TS Door Area”. 2009年8月7日閲覧。
  20. ^ stephenk1977 (2006年8月9日). “Flickr: stephenk1977's photostream - 09TS Door Area”. 2009年8月7日閲覧。
  21. ^ mackenzie_blu (2009年7月20日). “Victoria Line”. 2009年8月5日閲覧。
  22. ^ Pumbaa (2008年11月28日). “New 2009 stock arrives at Victoria Line Station”. 2009年8月5日閲覧。
  23. ^ District Dave's London Underground Forum: 09TS @ Litchurch Lane Test Track”. tubeprune (2006年8月9日). 2009年8月7日閲覧。
  24. ^ District Dave's London Underground Forum: 09TS @ Litchurch Lane Test Track”. tubeprune (2006年8月9日). 2009年8月7日閲覧。
  25. ^ tubeprune (2006年8月20日). “District Dave's London Underground Forum: 09TS @ Litchurch Lane Test Track”. 2009年8月7日閲覧。
  26. ^ prjb (2006年8月9日). “District Dave's London Underground Forum: 09TS @ Litchurch Lane Test Track”. 2009年8月7日閲覧。
  27. ^ stephenk (2006年8月3日). “District Dave's London Underground Forum: 09TS @ Litchurch Lane Test Track”. 2009年8月7日閲覧。
  28. ^ prjb (2006年8月20日). “District Dave's London Underground Forum: 09TS @ Litchurch Lane Test Track”. 2009年8月7日閲覧。
  29. ^ TfL October board meeting notes”. London Connections (2007年10月26日). 2009年8月5日閲覧。
  30. ^ mackenzie_blu (2009年7月21日). “New 2009 stock arrives at Victoria Line Station”. 2009年8月5日閲覧。

外部リンク

以下の外部リンクはすべて英語。


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