K-162_(原子力潜水艦)とは? わかりやすく解説

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K-162 (原子力潜水艦)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/10 02:04 UTC 版)

K-222
基本情報
運用者  ソビエト連邦海軍
艦種 原子力潜水艦
艦歴
起工 1963年12月28日[1]
進水 1968年12月21日[1]
就役 1969年12月31日[1]
退役 1984年に予備役入り
最期 scrapped at 2010年に"Zvezdochka"工場(セヴェロドヴィンスク)で解体, 3区画の原子炉ブロックは第27バース付近に保管
除籍 1989年に除籍、1999年にロシア海軍旗を下ろす。
要目
排水量 浮上時:5,197英トン (5,280 t)
潜航時:7,000ロングトン (7,100 t)
長さ 106.9 m
11.6 m
吃水 8 m
推進 VM-5m型加圧水型原子炉 (177.4 MW) 2基
蒸気タービン2基2軸推進
80,000 shp (60 MW)
速力 44.7ノット
航続距離 70日間
潜航深度 400 m (推定値)
乗員 82人(士官25人)
兵装 SS-N-7個々の巡航ミサイル発射管10基
533mm魚雷発射管4基(魚雷12本)
特殊装備 ソナー MGK-300 "ルビーン"
魚雷発射制御システム "Ladoga-P-661"
航法装置"Sygma-661"
機雷検出用ソナー"Radian-1"
レーダーシステムRLK-101とMTP-10
敵味方識別装置 "Nichrom"
無線情報装置[2]
その他 材質: チタン
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パパ級

K-162Ru: К-162)は、661号計画「アンチャール」(En: Project 661 Anchar, Ru: Проект 661 «Анчар»)によって建造された旧ソ連海軍の巡航ミサイル原子力潜水艦である。同型艦はない。就役時にはK-162であったが、後にK-222に変更された。本記事では、変更前の番号名を使用する。NATOコードネームは、パパ型(級)原子力潜水艦

概要

K-162はコムソモレツと同様に、実験的な性格を持った艦である。1958年、当時のソ連政府は、高速力、新型原子炉、水中発射型巡航ミサイル、大深度発射可能な重魚雷、およびその他の新しい潜水艦用システムの開発を目的に潜水艦の建造を指令した。というのも、第1世代の巡航ミサイル原潜は、速力では仮想敵の米海軍に後れをとり、ハードウェアの信頼性は乏しく、戦術的効果の低い(浮上しなければ発射できない)巡航ミサイルなど、見劣りのするものとなっていたからである。

この計画は、P-70「アメチースト」巡航ミサイル(NATOコードネームSS-N-7 スターブライト)を含む本級に結実した。1959年、ミサイルの開発開始と並行して、船体の設計も承認されたが、本格的なチタン製の大型潜水艦の建造に伴う技術的な問題とチタン材の調達の問題から、起工は1963年12月28日にまでずれこんだ。この遅れの間に、より安価な高張力鋼製のチャーリー型の調達が軌道に乗ったほか、後継のミサイル(P-120「マラヒート」、NATOコードネームSS-N-9 サイレーン)の開発も進むなどして、システムが陳腐化してしまったため、建造はK-162ただ1隻のみにとどめられた。

1968年12月21日、ようやく進水したK-162は、ほぼ1年後の1970年1月13日に42 kt(このとき原子炉出力80%)、翌1971年には44.7 kt(82.8km/h)を記録し、潜水艦の潜航中速力の世界記録を達成した。この記録は、現在も破られていない。しかし、その代償として、水中雑音レベルはきわめて高く、高速力を発揮した際には船殻外部を損傷する場合もあった。また、上述のようなシステムの陳腐化、多くの装備品の命数が乏しいことなど、作戦運用には問題が多かったことから、K-162はその就役期間のほとんどを実験艦として過ごした。

1980年、K-162は、セヴェロドヴィンスク造船所での炉心交換作業中に、1次冷却水漏出事故を起こし、原子炉室が汚染された。その後、1988年に予備役、1989年に除籍とされたが、破損した冷却水配管は満足に補修されていない。解体を予定されるも、予算不足のため実行されることなく、現在も保管中である。

比較

旧ソ連・ロシア海軍SSGN各型の比較
世代 第4世代 第3世代 第2世代
NATOコードネーム ヤーセン型 オスカー型 パパ型
計画番号 885M型 855型 949A型 949型 661型
船体 水上排水量 9500 16,500 12,500 5,280
水中排水量 13800 19,500 14,700 7,100
全長 139 155 144 106.9
全幅 12~15 18.2 18.2 11.6
吃水 不明 9.2 8
設計局 143 18
造船所 セヴマシュ 199、402 402
主機 機関 加圧水型原子炉+蒸気タービン
方式 GT
原子炉システム KPM-6[注 1] OK-650V OK-650B VM-5
熱出力 190-200 MWth 190 MWth 177 MWth
水中速力 31 32 44
兵装 発射管 533mm魚雷発射管×10門 (魚雷・ミサイル30本)[注 2]、巡航ミサイル用VLS×8セル 650mm魚雷発射管×2門 (魚雷8本)、533mm魚雷発射管×4門 (魚雷16本) 533mm魚雷発射管×6門 (魚雷12本)
巡航ミサイル 巡航ミサイル用VLS×10セルに3M-54 カリブル×40~、または、P-800オニクスまたは3M22 ツィルコン×32~ 巡航ミサイル用VLS×8セルに3M-54 カリブル×40、または、P-800オニクスまたは3M22 ツィルコン×32 P-700(SS-N-19)×24[注 3] P-70(SS-N-7)×10
同型艦数 1 4+(建造中) 12(1隻喪失) 2
(退役)
1(退役)
世代 第2世代 第1世代
NATOコードネーム チャーリー型 エコー型
計画番号 670M 670 675 659
船体 水上排水量 4300 3574 4450 3730
水中排水量 5350 4560 5650 4920
全長 104.5 95.5 115.4 111.2
全幅 10.0 9.9 9.3 9.2
吃水 6.9 7.5 7.9 7.1
設計局 143
造船所 112、194、199 194
主機 機関 加圧水型原子炉+蒸気タービン
方式 GT
原子炉システム OK-350(VM-4-1×1) VM-4(VM-4A×2)
熱出力 89 70
水中速力 24 26 23 26
兵装 兵装 533mm魚雷発射管×6門(533mm魚雷・ミサイル×18) 533mm魚雷発射管×6門
(魚雷×18)
巡航ミサイル P-120(SS-N-9)×8 P-70(SS-N-7)×8 P-6(SS-N-3A/B)対艦×8 P-5(SS-N-3C)対地×6
同型艦数 11隻
(24隻退役)
11隻
(退役)
29隻
(退役)
5隻
(退役)


要目

旧ソ連・ロシアの軍用ハードウェアの要目(特に数値)については資料によりばらつきがあることが珍しくない。ここでは参考文献に挙げた2つの資料を参照し、両者が食い違う場合にはより新しい資料であるポルトフ[2005]の記述を採用した。

  • 全長:106.9m
  • 全幅:11.5m
  • 喫水:8.2m
  • 水中排水量:7,000t
  • 水上排水量:5,197
  • 予備浮力:31%
  • 船体構造:チタン製複殻式、9区画
  • 推進機関:原子力ギアドタービン —— VM-5型加圧水型原子炉(177.4MW)×2基 / 蒸気タービン2基 / スクリュー×2軸 / 銀亜鉛電池(補機)×152基2群
  • 最高速力(水上/水中):16 / 37~38 kt
  • 連続航海期間:70日
  • 潜行深度:400~500m
  • 乗員:75名
  • 兵装:533mm(21 inch魚雷発射管×4(魚雷等×12本)、ミサイル発射管×10基
  • 同型艦:なし

脚注

注釈

  1. ^ 885M型1番艦は就役時点では855型とおなじくOK-650V原子炉システムを搭載しており、第4世代原子炉システムであるKPM-6は今後建造される艦から順次搭載される見込み
  2. ^ 諸説あり。650mm魚雷発射管を含む説や混在する組み合わせについても複数説あり
  3. ^ 近代化改装により3M-54 カリブルないしP-800へ換装されると見られる

出典

  1. ^ a b c  
  2. ^ Проект 661” (Russian). Deepstorm.ru. 2011年2月24日閲覧。

参考文献

  • アンドレイ・V・ポルトフ、2005、『ソ連/ロシア原潜建造史』、海人社
  • A.S.Pavlov, Gregory Toker (translator), Norman Friedman (editor, English language edition), 1997, Warships of the USSR and Russia 1945-1995, [Annapolis, Maryland]: Naval institute press, ISBN 1-55750-671-X.

関連項目

以下は、旧ソ連における他のチタン製船殻の潜水艦

外部リンク





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