FOD損傷を防止するためのエンジンおよび機体の設計
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/23 15:48 UTC 版)
「FOD (航空用語)」の記事における「FOD損傷を防止するためのエンジンおよび機体の設計」の解説
軍用機の中には、FODによるエンジンの損傷を防止するための特別な設計が行なわれたものがある。そのひとつに、S字型に曲がった空気取入口がある。それは、インレットに入った空気の流れを一旦機体前方に曲げた後、再度後方に曲げてからエンジンに導くものである。最初の曲がり部には、強力なスプリングで閉じられたドアがある。インテークに飛び込んだ異物は、そのドアを押し開けて、機外へと飛び出すようになっている。このため、微細な異物を除き、エンジンに異物が吸入されるのを防止できる。この方式は、FODによる損傷の防止には効果的だったが、空気の流路が曲げられることにより、その流れが阻害され、エンジンの有効馬力が減少することから、用いられないようになった。 似たような方式が、Mi-24のようなターボシャフト・エンジンを搭載したヘリコプターに多く用いられた。ボルテックス式またはセントリフューガル・インテークと呼ばれるその方式は、エンジンに入る前の空気をらせん状の経路を通過させることによって、空気よりも重い砂塵などの異物を外側に押し出して分離するようになっている。 ロシアのミコヤンMig-29およびスホーイSu-27戦闘機は、特殊な形状のインテークを装備しており、整地されていない飛行場からの離陸におけるFODの吸い込みを防止している。メイン・エア・インテークはメッシュ・ドアで覆われ、インテークの上側には必要に応じて開く特別なインレットが設けられている。これにより、離陸に必要な空気をエンジンに供給しつつ、地面上の異物が吸い込まれることを防止している。 FODのリスクを低減するための別な方式としては、アントノフAn-74に用いられているようなエンジンの搭載位置を高くする方式がある。 ボーイング737の初期型には、エンジンが低い位置に取り付けられているこの機体を舗装されていない小石の多い滑走路において運用するための「非舗装滑走路用キット」がボーイング社から供給されていた。このキットは、降着装置用のグラベル(砂礫)・デフレクター、機体下面用の折り畳みライト、降着装置が展開している間に車輪格納部に侵入した砂礫による重要部品の損傷を防止するためのスクリーンなどで構成されていた。また、ボルテックス・デシペイターと呼ばれる、エンジンへの下方からの空気流量を減少させて砂礫の吸い込みを防止する装置も含まれていた。 エアバス社は、FODを防止するための新しい方法を検討中である。イスラエル・エアロスペース・インダストリーズ社と共同開発した、タクシーボットと呼ばれるパイロットが操作する牽引車は、機体のジェットエンジンを使わずに地上滑走を行うことによって、エプロンやタクシーウェイ上でのFODによる損傷を防止しようとするものである。
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