ATR (航空機メーカー)とは? わかりやすく解説

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ATR (航空機メーカー)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/24 03:12 UTC 版)

ATR
Aerei da Trasporto Regionale
Avions de Transport Régional
種類 コンソーシアム(共同事業体)
本社所在地 フランス
トゥールーズ・ブラニャック空港
設立 1981年
業種 航空宇宙産業(輸送用機器)
主要株主 エアバス(50%)
レオナルド(50%)
外部リンク www.atr-aircraft.com
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ATR
IATA
-
ICAO
EVX
コールサイン
Green Spirit[1]
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ATR (Avions de Transport Régional) は、ともに航空機メーカーであるフランスアエロスパシアルイタリアアエリタリア1982年に興したコンソーシアム(共同事業体)である。

解説

貨物機として使われるFiji LinkのATR 42

アエロスパシアルはEADSを経てエアバス・グループに、アエリタリアはアレーニア・アエロナウティカを経てレオナルド S.p.Aに合流しており、現在はエアバス・グループとレオナルドがそれぞれ半数の株式を所有する。

ラインナップはターボプロップ機のATR 42およびそのストレッチ型であるATR 72の生産に限定し、エンジンやアビオニクスの改良を繰り返すことで完成度を高めている。ターボファンエンジンを搭載する同クラスのリージョナルジェットと比べ燃費が良く、貨物機としても使えるように大型のカーゴドアを装備しているなど、短距離や採算の取れにくい地方路線向けの堅実な設計である。またグラスコックピット炭素繊維強化炭素複合材料を取り入れるなど先進的な要素も取り入れている[2]。一方で、2003年にターボファンエンジン搭載のリージョナルジェットを生産すると発表したが、後に計画は中止された。

競合機のボンバルディアDHC-8-Q400シリーズからの乗り換えを狙い、リージョナル航空会社や大手航空会社の近距離路線向けに売り込んでおり、カリビアン航空アズールブラジル航空トランスアジア航空LOTポーランド航空チェコ航空日本エアコミューター北海道エアシステム天草エアライントキエアなどが採用している。

機体リスト

フィンランド航空のATR 72
エア・ドロミティのATR 72-500
  • ATR 42 - 最初の共同開発機である双発ターボプロップの近距離用旅客機。座席数は42 - 52席。1984年8月16日に初飛行。
  • ATR 72 - ATR 42のストレッチ型。座席数は64 - 72席。1985年パリ航空ショーで発表された。貨物型もある。
    • ATR 72 ASW - レオナルド S.p.Aが改造した哨戒機

いずれも最新型は-600型である。

日本での動き

2007年4月にATR社副社長が日本を訪問し、日本エアコミューター全日本空輸などの航空会社や北海道沖縄県などの地方公共団体を訪問しATR機の商品特性について説明した。同年6月にはさらに、アレーニア・アエロナウティカの親会社であるフィンメッカニカ社の社長CEOも訪日し、ATR社の日本の小型旅客機市場への参入を表明した[3]

2012年10月10日、スターフライヤーの設立支援を受けた地域航空会社リンクが、日本で初めてATR 72-600型機を導入すると公式発表した[4][5]国土交通省はATR 72-600の型式証明2013年10月28日付けで交付[6][7]、同年11月に初号機が納入される予定だったが、リンクがその前に自己破産したため、受領には至らなかった。

一方天草エアラインでは、使用していたデ・ハビランド・カナダ DHC-8-Q100型機が2014年ごろに整備費が大幅に増加する時期を迎えるため、機材更新の検討に入り、新機材の候補としてATR 42を挙げた[8]。2014年7月22日、天草エアラインはノルディック・アビエーション・キャピタル社との間でATR 42-600のリース契約を締結し、2015年8月に引き渡された。これにより、天草エアラインが日本で初めてATR機を運航する航空会社となった[9]

2015年6月15日、日本エアコミューターが、2017年の運航開始を目指してATR42-600の導入を決定し、確定8機、オプション1機の購入契約を締結[10]2017年4月26日から運航開始した[11]

2018年7月18日、北海道エアシステムがATR 42-600 3機(確定2機、オプション1機)の発注に関する覚書を締結[12]2020年4月12日から運航開始した[13]

2021年12月、オリエンタルエアブリッジが、保有していた2機のDHC-8-Q200をATR 42-600で更新する方針を明らかにした[14]2022年7月に初号機、2023年6月に2号機をそれぞれ受領し、ともに2023年から運航開始した[15]

2021年9月29日、トキエアがATR 72-600 2機のリース契約を締結した[16]。2022年10月に初号機[17]、2023年1月に2号機[18]をそれぞれ受領し、2024年から運航開始した。またこれに加えて、2024年12月にはATR 42-600 1機を受領している[19]

このほか、2026年の営業運航開始を目指すジェイキャスエアウェイズがATR 72-600の導入を決定し、2024年11月にリース契約を締結。2025年10月に受領の予定である[20]

脚注

  1. ^ ATR Fleet Details and History”. 2023年1月23日閲覧。
  2. ^ 「リージョナルジェットより景色も燃費も良い」特集・ATRシェーラーCEOに聞く日本戦略
  3. ^ 白壁達久. “「小型旅客機の“価格破壊者”:仏ATR参入で、国産ジェットに新たな不安」”. 日経ビジネス (2007-07-16): 14. 
  4. ^ 新航空会社リンク、ATR72を日本初導入 上場視野に”. Aviation Wire (2012年10月10日). 2014年7月31日閲覧。
  5. ^ ATR enters the Japanese market”. ATR Aircraft Press Releases (2012年10月9日). 2014年7月31日閲覧。
  6. ^ 国土交通省、ATR社製のATR72-212A 型航空機の型式証明を交付”. レスポンス (2013年10月28日). 2013年10月28日閲覧。
  7. ^ 国交省、ATR72に型式証明交付 リンクが14年春運航へ”. Aviation Wire (2013年10月29日). 2014年7月31日閲覧。
  8. ^ 天草エアライン、機体更新を検討 候補に仏機”. くまにちコム/熊本日日新聞 (2012年12月12日). 2012年12月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年7月28日閲覧。
  9. ^ 天草エアライン、日本初のATR 42-600を導入 引き渡しは2015年末”. フライチーム (2014年7月23日). 2014年7月28日閲覧。
  10. ^ 日本エアコミューター、ATR42-600型機の導入を決定”. 日本航空プレスリリース (2015年6月15日). 2015年6月16日閲覧。
  11. ^ https://www.aviationwire.jp/archives/118369
  12. ^ 北海道エアシステムATR42-600型機発注に関する覚書を締結”. 北海道エアシステム (2017年7月18日). 2017年7月18日閲覧。
  13. ^ Tadayuki YOSHIKAWA「HAC、22年ぶり新機材ATR42就航 新型コロナで式典中止、初便は丘珠発釧路行き」『Aviation Wire』2020年4月12日。2025年1月26日閲覧。
  14. ^ 長崎離島路線の後継機種にATR社のATR42-600を導入” (pdf). オリエンタルエアブリッジ. 2021年12月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年1月26日閲覧。
  15. ^ Yusuke KOHASE「ORCのQ200、2号機退役 9/21に最終運航、残り1機」『Aviation Wire』2023年9月14日。オリジナルの2023年9月14日時点におけるアーカイブ。2025年1月26日閲覧。
  16. ^ 航空機(ATR72-600)のリース契約を締結しました”. トキアビエーションキャピタル (2021年9月21日). 2023年8月22日閲覧。
  17. ^ トキエア初号機、フランスで引き渡し 11月に新潟到着へ」『日本経済新聞』2022年10月10日。2025年1月26日閲覧。
  18. ^ Tadayuki YOSHIKAWA「トキエア、那覇に2号機到着 初のカーゴフレックス仕様」『Aviation Wire』2023年1月18日。2025年1月26日閲覧。
  19. ^ ATR 42-600, Toki Air, F-WWLN, JA03QQ (MSN 1618)” (英語). Aviation Flights. 2025年1月26日閲覧。
  20. ^ ジェイキャスエアウェイズとして初の機材となるATR72-600型機のリースに関する正式契約を締結、2025年10月に機体の受領が決定”. ジェイキャスエアウェイズ (2024年11月25日). 2025年1月26日閲覧。

関連項目

外部リンク




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