1-ファンド定理(トービンの分離定理)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/05 09:14 UTC 版)
「現代ポートフォリオ理論」の記事における「1-ファンド定理(トービンの分離定理)」の解説
1-ファンド定理やトービンの分離定理とは以下の定理。 任意の効率的ポートフォリオは、リスク資産によって構成される1つのファンドと無リスク資産を組み合わせることによって生成される。 平均分散分析と整合的な期待効用最大化問題を考えると、リスク・リターン平面上における無差別曲線は右上がりの凸状の曲線となる。リスク・リターン平面においてある点Aより右下にある点では期待収益率は点Aより低く、リスク(収益率の標準偏差)は点Aより大きくなるため、平均分散分析を行う経済主体にとっては点Aより効率が悪い投資となる。リスク・リターン平面においてある点Aより左上にある点も同様の議論を用いれば点Aより効率の良い投資となることが分かる。よってリスク・リターン平面上の無差別曲線は右上がりとなる。凸性についてはリスク回避的であることから生じている。 よって平均分散分析を行う経済主体はリスク・リターン平面上でより左上の方にある点を実現するポートフォリオを好むようになる。そう考えると、接点ポートフォリオを通る資本分配線上の点を実現するポートフォリオを必ず選択するようになる。なぜならば、リスク・リターン平面において接点ポートフォリオを通る資本分配線より左上の領域にある点を実現するポートフォリオは存在しないからである。このことは平均分散分析を行う投資家のポートフォリオの違いは接点ポートフォリオと無リスク資産への投資比率だけとなることを意味している。つまりリスク資産のみの投資比率は全ての平均分散分析を行う投資家間で同一で接点ポートフォリオとなる。よって平均分散分析を行う投資家のポートフォリオ選択問題は、(1)接点ポートフォリオを特定する事と(2)自分のリスク態度にあった比率で接点ポートフォリオと無リスク資産への投資比率を決定する事、の二つに分離される。このように投資家のポートフォリオ選択問題が二つの問題に分離されることを分離定理(英: separation theorem)、もしくは投資信託定理(英: mutual fund theorem)と呼ぶ。この分離定理は1958年に発表されたジェームズ・トービンの研究が端緒となっている。 実際、リスク資産への総投資比率は ∑ i = 1 n w i = μ p − r f C r f 2 − 2 A r f + B ( ∑ i = 1 n ∑ j = 1 n v i j ( E ( R j ) − r f ) ) = μ p − r f C r f 2 − 2 A r f + B ( A − C r f ) {\displaystyle \sum _{i=1}^{n}w_{i}={\frac {\mu _{p}-r_{\mathrm {f} }}{Cr_{\mathrm {f} }^{2}-2Ar_{\mathrm {f} }+B}}\left(\sum _{i=1}^{n}\sum _{j=1}^{n}v_{ij}(\operatorname {E} (R_{j})-r_{\mathrm {f} })\right)={\frac {\mu _{p}-r_{\mathrm {f} }}{Cr_{\mathrm {f} }^{2}-2Ar_{\mathrm {f} }+B}}{\Big (}A-Cr_{\mathrm {f} }{\Big )}} で表されるので、リスク資産内での投資比率は w i ∑ j = 1 n w j = 1 A − C r f ( ∑ j = 1 n v i j ( E ( R j ) − r f ) ) , i = 1 , … , n {\displaystyle {\frac {w_{i}}{\sum _{j=1}^{n}w_{j}}}={\frac {1}{A-Cr_{\mathrm {f} }}}\left(\sum _{j=1}^{n}v_{ij}(\operatorname {E} (R_{j})-r_{\mathrm {f} })\right),\quad i=1,\dots ,n} となり、要求リターン μ p {\displaystyle \mu _{p}} には依存しなくなる。このリスク資産内での投資比率が接点ポートフォリオと一致する。ただし、 A − C r f ≠ 0 {\displaystyle A-Cr_{\mathrm {f} }\neq 0} を仮定している。 リスク・リターン平面において接点ポートフォリオを通る資本分配線の事をまた効率的フロンティア(英: efficient frontier)と呼ぶ。リスク資産のみへの投資の時の効率的フロンティアは凸状の曲線であったのに対し、無リスク資産への投資を含む場合の効率的フロンティアは直線となる。無リスク資産への投資を含む場合の効率的フロンティアはリスク・リターン平面において接点ポートフォリオと無リスク資産の位置する点を特定できれば、その2点を通る直線となるので特定可能である。この事をもって分離定理と呼ぶこともある。リスク・リターン平面においてある投資家の無差別曲線が接点ポートフォリオより左側の位置で効率的フロンティアと接するならばその接点がその投資家の最適なポートフォリオとなり、その投資家は無リスク資産と接点ポートフォリオを共に正の割合で保有する。接点ポートフォリオより右側の位置で接するならば、その投資家は無リスク資産を空売りし、その分、より接点ポートフォリオに投資するようにレバレッジを効かせた投資を行う。
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