現代ポートフォリオ理論とは? わかりやすく解説

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現代ポートフォリオ理論

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/22 06:11 UTC 版)

現代ポートフォリオ理論(げんだいポートフォリオりろん、: Modern portfolio theory, MPT)とは、金融資産への投資比率(ポートフォリオ)を決定する理論。1952年ハリー・マーコウィッツによって発表された論文[1]を端緒として研究が進められた。投資におけるポートフォリオの収益率の平均 (期待値) と分散のみをコントロールするという特徴がある。現代ポートフォリオ理論から発展した資産価格決定モデルとして資本資産価格モデル(: capital asset pricing model, CAPM)がある。

リスク資産への投資

現代ポートフォリオ理論においては、投資家は合理的でリスク回避的であるということが仮定されている。つまり、同じ期待収益を上げられる資産ならばリスクの小さいものを好むということである。このリスクは収益率の標準偏差で測られる。このリスクを回避する程度がどの程度であるかは投資家によって異なるが、後の分離定理と呼ばれる定理により、全ての合理的投資家のポートフォリオ選択問題は所与の期待収益率を達成するもので最も分散が小さいものを選択するという問題に置き換えられる。

平均分散分析

現代ポートフォリオ理論の仮定の一つとして、投資家は自身の投資の収益率の分布についてその平均分散のみを考慮し、歪度尖度といった他の分布の特徴には関心を持たないことがある。このように平均と分散のみに着目したポートフォリオ選択理論を平均分散分析(: mean-variance analysis)と呼ぶ。このような投資家の選好平均分散型効用関数期待効用関数であれば、2次効用関数、あるいは収益率の分布が同時正規分布に従う場合に正当化される。

数学的表現
  • 設定
    • 金融市場には金融資産
      現代ポートフォリオ理論における最小分散フロンティアと効率的フロンティア

      縦軸(Y軸)に期待リターン、横軸(X軸)に収益率の標準偏差(リスク)を取った座標平面をリスク・リターン平面と呼ぶ。

      効率的フロンティア

      方程式(1)をリスク・リターン平面上で図示したものを最小分散フロンティア(: minimum variance frontier)と言う。全ての資産やその資産から組成されるポートフォリオはリスク・リターン平面において必ず最小分散フロンティアの右側に位置する。また最小分散フロンティア上のポートフォリオで最も標準偏差が小さくなるものを大域的最小分散ポートフォリオ(: global minimum variance portfolio)と呼ぶ。さらに最小分散フロンティアにおいて大域的最小分散ポートフォリオより上側の部分の曲線を効率的フロンティア(: efficient frontier)と呼ぶ[3]

      最小分散フロンティア上のポートフォリオは所与の期待リターン(Y軸での値)を得られる分散(X軸での値)が最小のポートフォリオとなる。平均分散分析を行う投資家にとって最適なポートフォリオは必ず効率的フロンティア上にある。

      効率的フロンティアがリスク・リターン平面上でコンベキシティ(凸性)を持つ理由は、方程式(1)を見ても分かる通り、効率的フロンティア上のポートフォリオの標準偏差が期待リターンの2次関数として表現されるからである。

      無リスク資産

      無リスク資産: risk-free asset)や安全資産リスクなし資産リスクフリー資産とは、リスクを負うことなく収益が得られる資産のことである。対義語リスク資産: risky asset)や危険資産リスクあり資産。無リスク資産の収益率は定数の安全利子率となるので、その分散は0であり、他の資産との相関係数も0である。原理的には完全にリスクが存在しない金融資産は存在しないが、デフォルトする可能性がほぼ無いと言える先進国の短期国債などが代理としてよく使用される。

      数学的表現

      無リスク資産を含む場合の期待収益率と収益率の標準偏差を数式で表すと以下のようになる[4]

      • 自己の資金をリスク資産に
        現代ポートフォリオ理論における資本分配線

        リスク資産からなるポートフォリオの収益率を

        現代ポートフォリオ理論における分離定理

        1-ファンド定理やトービンの分離定理とは以下の定理[6]

        任意の効率的ポートフォリオは、リスク資産によって構成される1つのファンド無リスク資産を組み合わせることによって生成される。
        

        平均分散分析と整合的な期待効用最大化問題を考えると、リスク・リターン平面上における無差別曲線は右上がりの凸状の曲線となる。リスク・リターン平面においてある点Aより右下にある点では期待収益率は点Aより低く、リスク(収益率の標準偏差)は点Aより大きくなるため、平均分散分析を行う経済主体にとっては点Aより効率が悪い投資となる。リスク・リターン平面においてある点Aより左上にある点も同様の議論を用いれば点Aより効率の良い投資となることが分かる。よってリスク・リターン平面上の無差別曲線は右上がりとなる。凸性についてはリスク回避的であることから生じている。

        よって平均分散分析を行う経済主体はリスク・リターン平面上でより左上の方にある点を実現するポートフォリオを好むようになる。そう考えると、接点ポートフォリオを通る資本分配線上の点を実現するポートフォリオを必ず選択するようになる。なぜならば、リスク・リターン平面において接点ポートフォリオを通る資本分配線より左上の領域にある点を実現するポートフォリオは存在しないからである。このことは平均分散分析を行う投資家のポートフォリオの違いは接点ポートフォリオと無リスク資産への投資比率だけとなることを意味している。つまりリスク資産のみの投資比率は全ての平均分散分析を行う投資家間で同一で接点ポートフォリオとなる。よって平均分散分析を行う投資家のポートフォリオ選択問題は、(1)接点ポートフォリオを特定する事と(2)自分のリスク態度にあった比率で接点ポートフォリオと無リスク資産への投資比率を決定する事、の二つに分離される。このように投資家のポートフォリオ選択問題が二つの問題に分離されることを分離定理(: separation theorem)、もしくは投資信託定理(: mutual fund theorem)と呼ぶ。この分離定理は1958年に発表されたジェームズ・トービンの研究[7]が端緒となっている。

        実際、リスク資産への総投資比率は



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