アナログコンピュータ
アナログコンピュータとは、数値のデジタル数値化(ビット化)を行なわす、アナログ量のまま演算処理できるコンピュータのことである。
回路内を流通するアナログ信号が、電圧の強弱が数値の大小に対応している。コンピュータのハードウェアにもアナログ素子が用いられる。アナログ素子の組み合わせによって並列処理が可能であるので、計算が高速になるという長所がある。また、データの入出力にも直接アナログ信号を用いることができるので、フィードバック制御に適しているなどの特性もある。
アナログコンピュータが一般の用途に用いられることはないが、学術研究用のニューロコンピュータや、家電製品に組み込まれるファジイコントローラなどに、デジタルコンピュータとの混合(ハイブリッド)の形式で用いられることが多い。
アナログコンピュータ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/07 01:31 UTC 版)
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アナログコンピュータとは、広義には、電子式アナログ計算機(アナログ電子式計算機)の総称である[注釈 1]。この記事ではそのうちの「演算関数型」などと分類される加算や微積分といった演算を行う電子回路要素により微分方程式の解を求めるタイプの、真空管式の演算増幅器[注釈 2]を使った微分方程式解析装置について解説する。以下では特段の記述のある場合を除き「アナログコンピュータ」はそのようなもののみを指す。「直接相似型」など[注釈 3]、その他についてはアナログ計算機の記事も参照のこと。
概要
(この記事で扱う)アナログコンピュータは様々な物理現象を方程式に表してその物理量を電圧に対応させて入力し、演算結果出力を操作者が元の物理量に還元して使うもので、線形現象だけでなく、非線形函数も実現でき、特に微分方程式の過渡解を簡易に出力できるので、自動車開発設計や電気回路・送電路などで過渡現象の解析などに重用され成果を上げた。それまでは、最良特性を得るのに実物の試作が多数必要で全条件に渡る網羅的試作ができなかったものが、アナログコンピュータによる一種模擬実験で良好適切な特性を詰めてから試作に掛かれるので高品質製品の試作工数が激減できて開発設計作業が大幅に効率化された。

多元連立方程式を解くことも可能だが、任意の定数設定で微分方程式を解いての過渡現象を表示できることの際だった有用性が支持されて普及したもので、工学系大学の学部生への講義や、工業高等専門学校や、一部工業高校の授業で、微分方程式の解法としてのラプラス変換、伝達関数、帰還制御理論(=自動制御理論)と併せてアナログコンピュータの使用法が教育されて広がった。 これは学生が物理現象を微分方程式に表してその解を求める具体的な演習教材として非常に適していたためである。1960 - 1963年には教育用として、簡易ではあるがアナログコンピュータheathkit EC-1が完成品が400ドル、組立キットが199ドルで売り出され、日本のアマチュア・セミプロ向けラジオ雑誌「ラジオ技術」(既廃刊)にもグラビア(1963/11号)と連載解説記事(1964/1 - /3号)で紹介されている。 [1]
歴史
アナログコンピュータ(他のタイプも含む)の最も重要な要素であるオペアンプは、今日ではIC化されブラックボックス的に扱われることも多いデバイスだが、その基礎技術は真空管時代に開発されていったものである。まず1920年代の末にハロルド・スティーブン・ブラックによる負帰還アンプによって、大利得のアンプを負帰還で制御して望みの倍率を得るという構成が現れ、1930年代に差動回路の発展があった(en:Differential amplifier#Historical background を参照)。演算をする電子回路、という発想が明確にあらわれている特許である「Summing Amplifier」[2]の出願されたのが1941年だが(en:Operational amplifier#Historical timeline を参照)戦争によりその公開は戦後となっている。兵器への応用のために戦時中に発展の大きかった分野のひとつで、連合側ではM9 Gun Directorという高射指揮装置[注釈 4]に使われたものや、枢軸側ではV2ミサイルとして有名なA4ロケットの初期制御や、V2計画に必要な計算用に使われた、ヘルムート・ホルツァーによるもの[注釈 5]がある。
そういった技術がアナログコンピュータとしてまとめられて、日本へは1953年(昭和28年)頃伝わり、日本電気、日立、東芝など電機各社が製品化して普及し各界で重用された。
その後は、全領域の模擬実験が自動でできる、ディジタルコンピュータでのコンピュータ・プログラムによるシミュレーション(いわゆる「コンピュータ・シミュレーション」)の急速な発達で、過渡現象も解析可能となった。演算条件を手動設定するか、大規模な機械式部分を含む自動設定装置に頼る必要のあるアナログコンピュータは1980年頃の一般真空管の製造中止もあって、開発研究中の磁気増幅器型や、半導体オペアンプ式も量産製品化されずに[注釈 6]、アナログコンピュータ全体が寿命として廃れて歴史的機材となった。
しかしながら、磁気増幅器型は大電力を直接制御できる能力がありプロセス制御の組み込み型に使え、計測制御バスであるHPIB(GPIB/IEEE488)などの普及で演算条件設定が自動化(プログラム化)できる環境もあり、リアルタイムのテストができて、教育用にも適することは変わっていない。
構造
(真空管[注釈 7])アナログコンピュータの構造は、主に真空管による演算増幅器(オペアンプ[注釈 8])と抵抗器、コンデンサー、ダイオード、ポテンショメーター、乗算器、標準電圧源、リレー接点などを接続端子盤でパッチコード(=接続コード)で繋いで組み合わせ、符号反転器、係数器、加算器、積分器、非線形応答要素、微分器、遅延装置などの演算要素を構成し、それらを組み合わせて方程式を構成し、演算させて過渡解と定常解を求め、ペン書きレコーダーやオシロスコープのCRT上と電圧計に出力させるものである。特に他の方法では求めにくかった過渡解が簡単に求められるため重用された。
リアルタイムで解が求められるペン書きレコーダーは大変高価だった。このため簡易型として、時間軸変換してオシロスコープ画面上にちらつかない頻度(概ね25Hz以上)で繰り返し表示させるものが現れ、「高速型」や「繰り返し型」と呼ばれた。それに対してペン書きレコーダーを使って実時間で解を表示できるものは「低速型」と呼ばれた。
最も簡易な高速型では5極3極管6U8単管や6BL8単管で演算増幅器を構成して60dB(1,000倍)程度の増幅度のものが作られ、低速型では120dB~130dB(1,000,000倍~3,000,000倍)の増幅度の演算増幅器が作られた。その1,000倍余もの利得の違いは演算誤差の相違に反映されていた。
演算増幅器は、(符号)反転増幅器が用いられ、入力側に接続するインピーダンスZiと、出力側から帰還させるインピーダンスZfの比が、ほぼ全体の伝達関数G=−Zi/Zfとなる。 [3]
すなわち、入力側が抵抗器Ri、出力側が抵抗器Rfとすると、符号反転係数器で伝達函数は
微分方程式の解は、現象開始当初の「過渡解」と、無限大時間経過後の「定常解」の和として表せるが、アナログコンピュータの最大の利点がこの「過渡解」を目視できることで、そこが設計開発現場への普及の原動力となった。
一様重力などによる加速度αが一定の場合の速度V、位置Yを求めると、重力加速度Gを単純に2回積分すれば落下位置yであるから
等加速度運動
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