風間俊六の人物像
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/06 21:59 UTC 版)
本作は風間俊六の初登場作品である。風間俊六は金田一のパトロンの1人として多数の作品に登場するが、多くの場合は簡単にしか紹介されておらず、名前しか出てこない作品も少なくない。詳しい人物像は専らこの作品で描写されている。 本作ではまず、「黒猫」のマダム・お繁が中国から引き揚げてきたあと糸島大伍が追ってくるまで2号か3号かにおさまっていた旦那である「浜の土建業の親分」として名が挙がり、村井刑事が事情聴取に出向くところで具体的に描写される。刑事が想像していた、年をとった脂ぎった人物という予想とはおよそかけはなれた、40歳に4、5年、間のありそうな年頃の、頭を丸刈りにした、まだ多分に書生っぽさが残っている人物。しかし話してみると、老成した口調には一種の重みがあって、ちょっとした身のとりなしにもヒヤリとするような鋭さがあり、一方でそれを露骨に見せないだけの身についた練れもできていた。 そのあと、捜査本部に姿を現した金田一の口から、風間との関係が語られる。中学時代の同窓で、東北のほうの中学を出ると2人で東京へ出てきて、しばらく神田の下宿でゴロゴロしていた。金田一がアメリカへ渡っている間は硬派の不良になって押し借りゆすりをしていたが、金田一が帰国したころには何とか組の顔役になっていた。金田一が兵隊にとられて縁が切れてしまったが、復員後に岡山県で『獄門島』事件などを手がけた帰りの汽車で再会する。横暴で怖いもの知らずのヤミ屋の一団が汽車に乗り込んできて戦々兢々となったところ、決然として立ち上がった男がヤミ屋の親分に何やら告げると俄然形勢一変、いっぺんに静粛になり平身低頭、鞠躬如として礼譲を極めた。警官諸公でさえ手に負えぬ暴君をたった一言でおさめるとは、昔の黄門さんのような偉い人であると、つくづく見直すと風間であったという。 風間には多数の愛人がいるが本妻はないという設定であり、シリーズに頻出する「松月」の女将・節子(おせつ)のことも「2号さんだか3号さんだかわからないが」(作品や場面によっては4号ないし5号まで進む)などと記述される。本作でも金田一が事件解決後の謎解きの場面で「何しろ13人もお妾を持っているこの男のことだから」と発言し、「馬鹿を言え」と憤る風間に対して「あっはっは、13人ではまだ不足かい」と返している。一方、風間自身は村井刑事にお繁との関係を問われた際に「向こうさまのお目当ては、あっしの抱いてる新円にある」と応じている。
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