難聴との関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 09:13 UTC 版)
アメリカ国立加齢研究所(NIA)縦断研究部門長ボルティモア加齢縦断研究責任者のLuigi Ferrucci博士らの研究で、難聴を有する成人はそうでない成人に比べて、認知症およびアルツハイマー病を発症するリスクが高く、難聴が重度であるほどリスクも高いことを突き止めた。この研究は、36-90歳の男女639人を対象に、難聴と認知症との関連性について調べたもので、1990年の研究開始時に認知症が認められた被験者はいなかった。研究グループは4年間にわたり、認知力と聴力検査を実施し、2008年まで平均約12年に及ぶ追跡調査を行い、認知症やアルツハイマー病の徴候をモニターした。その結果、125人の被験者が「軽度」、53人が「中等度」、6人が「重度」の難聴と診断された。最終的には、58例が認知症と診断され、そのうち37例はアルツハイマー病であった。軽度の難聴では認知症リスクがわずかに上昇し、中等度と重度の難聴を持つ患者ではリスクが大幅に増大していた。また、60歳以上の被験者では、認知症発症リスクの36%超が難聴と関連していることが分かった。難聴が悪化するほどアルツハイマー病のリスクは増大し、聴力が10デシベル低下するごとに、発症リスクは20%ずつ増大した。研究結果は、医学誌「Archives of Neurology(神経学)」2011年2月号に掲載された。この結果に関連して、アメリカのアルバート・アインシュタイン医科大学のリチャード・B・リプトン博士は『HealthDay News』2月14日付にて、「難聴は加齢の生物学的測定値の一種かもしれない。また、難聴は神経細胞の損傷の結果生じた可能性があり、仮に聴覚を介在するニューロンに障害があるなら、記憶やより高度の認知機能をつかさどる神経細胞の損傷マーカーにもなる」と述べた。
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