離職時との関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/05 08:10 UTC 版)
未消化分の年次有給休暇については、退職日までに全て取得が可能であるが、年次有給休暇は労働者と使用者間に労働関係が存在していることを前提としている制度であるため、労働者の退職日を越える時季変更は行えない(昭和49年1月11日基収第5554号)。したがって、退職する労働者につき年次有給休暇の未消化日数が存在し、未消化分の年次有給休暇の一部あるいは全ての消化を請求し退職日までの間に1日も出勤せず退職日を迎える状態になった場合、時季変更による代替日の指定が不可能となるため、使用者は行使要件を満たしていても時季変更権を行使できなくなる。年度途中で労働者が退職することとなったとしても、年度当初から退職日までの日数で按分した休暇日数を付与することはできないし、計画的付与日が退職後の日に設定されているからという理由で、請求を拒否することもできない。なお、労使それぞれの状況を総合して、退職時の有給一括消化があまりにも背信的な場合は、労働者側の権利の濫用として、会社に時季変更権が認められるという判決がある(ライドウェーブコンサルティングほか事件、東京高等裁判所判決平成21年10月21日)。このため、退職時であっても会社側が時季変更権を行使したと主張すれば、退職時であっても年次有給休暇の取得には民事的要素が大きく影響するため、労働基準監督署では判断できなくなっている。 解雇予告した労働者が年次有給休暇の権利を有する場合、年次有給休暇の権利は解雇予告期間中に行使しなければ消滅する(昭和23年4月26日基発651号)。休暇を消化するのが退職日以降になってしまう場合は、退職日まで有効とし、それ以降は無効となる。ただし、法律で付与されるべき分を超える休暇に相当する分の買取、あるいは残日数に応じた金銭の調整的給付を事後に行うことは、在職時の年次有給休暇の取得を抑制することになるため、行政は消極的な見解ではあるが、否定をしておらず、行政指導も行われていない。
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