量子力学における最小作用の原理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/09 03:48 UTC 版)
「最小作用の原理」の記事における「量子力学における最小作用の原理」の解説
古典力学においては、時刻 t a {\displaystyle t_{a}} に配位空間の座標 q a {\displaystyle q_{a}} から出発し、時刻 t b {\displaystyle t_{b}} に座標 q b {\displaystyle q_{b}} に到達する粒子の軌道は、最小作用の原理によって、作用積分 S [ q ( t ) ] = ∫ t a t b L ( q ( t ) , q ˙ ( t ) ) d t {\displaystyle S[q(t)]=\int _{t_{a}}^{t_{b}}L(q(t),{\dot {q}}(t))\,dt} に対する停留条件 δ S = 0 {\displaystyle \delta S=0\,} によって与えられる。 量子力学においても、 ℏ → 0 {\displaystyle \hbar \rightarrow 0} の極限によって古典力学に近づくことから、同様の原理が存在することが予想される。通常の正準量子化を行ったハミルトニアンによる量子力学の記述では、このような原理の存在は必ずしも明確ではないが、ファインマンが考案した経路積分の手法を用いることで、量子論における対応原理を理解することができる。経路積分によれば、遷移確率 K ( q b , t b ; q a , t a ) = ⟨ q b | e − i ℏ H ^ ( t b − t a ) | q a ⟩ {\displaystyle K(q_{b},t_{b};q_{a},t_{a})=\left\langle q_{b}\left|e^{-{i \over {\hbar }}{\hat {H}}(t_{b}-t_{a})}\right|q_{a}\right\rangle } は、古典論における作用積分S を用いて K ( q b , t b ; q a , t a ) = lim N → ∞ ∫ q a ( t a ) q b ( t b ) ∏ i = 0 N − 1 c i d q i e i ℏ S [ q ] = ∫ q a ( t a ) q b ( t b ) D q e i ℏ S [ q ] {\displaystyle {\begin{aligned}K(q_{b},t_{b};q_{a},t_{a})&=\lim _{N\to \infty }\int _{q_{a}(t_{a})}^{q_{b}(t_{b})}\prod _{i=0}^{N-1}c_{i}dq_{i}\,e^{{i \over {\hbar }}S[q]}\\&=\int _{q_{a}(t_{a})}^{q_{b}(t_{b})}{\mathcal {D}}q\,e^{{i \over {\hbar }}S[q]}\end{aligned}}} で与えられる。ここで、 q i {\displaystyle q_{i}} は、時間を t a = t 0 < t 1 ⋯ < t N − 1 < t N = t b {\displaystyle t_{a}=t_{0}<t_{1}\cdots <t_{N-1}<t_{N}=t_{b}} と微小分割していったときの時刻 t i {\displaystyle t_{i}} における座標であり、積分は q a {\displaystyle q_{a}} と q b {\displaystyle q_{b}} を結ぶ全ての経路を数え上げ、それらの寄与を総和したものを意味する。 被積分関数である指数関数の中身は、作用積分と i / ℏ {\displaystyle i/\hbar } を乗じた形であるため、 ℏ → 0 {\displaystyle \hbar \rightarrow 0} とすると、わずかなS の変動によって、被積分関数は符号を変えつつ、激しく振動するため、積分は打ち消しあう。従って、 q a ( t a ) {\displaystyle q_{a}(t_{a})} と q b ( t b ) {\displaystyle q_{b}(t_{b})} を結ぶ各軌道の中でも、停留条件によって、その周りの仮想変位を与えたときの作用積分の変動が抑えられる古典的軌道 q c ( t ) {\displaystyle q_{c}(t)} がもっとも積分に寄与することになる。
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