過失の具体的判断過程
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/07 17:23 UTC 版)
以上を整理すると、通説的な見解によれば、構成要件的過失の要件は 犯罪事実の表象・認容が欠如すること(故意ではないこと) 結果を実現したことについての客観的注意義務違反(具体的)予見可能性 結果予見義務違反 結果回避義務違反 となる。結果回避義務違反の前提として結果回避可能性を要求する場合もあり、これも正当な見解といえる。 これを具体的に説明すると、以下のようになる。 まず、一般人の見地から予見可能性の有無が判断される。例えば、犬を連れて散歩中に、犬が突然暴れだして他人に襲い掛かり他人に怪我をさせる可能性があるか、車を運転中に幼稚園の門から子供が飛び出してきて衝突事故が起きる可能性があるかなどである。 予見可能性があると判定されれば、ほぼ無条件で予見義務違反があるとされる(多くの場合、予見可能性があるかが議論の中心であり、予見義務違反の有無はあまり問題とならない。犬が暴れだす可能性、子供が飛び出す可能性を認識していた場合でも、予見義務違反が否定されるわけではない)。 他方、予見可能性があると判定されれば、結果回避義務が生じるとされる。結果回避義務とは、例えば、犬が暴れても他人に襲い掛かれないように、ひもを両手でしっかり握り、かつ他人とは一定の距離をとる義務や、人が急に飛び出しても急に止まれるように、速度を落としておく義務である。予見可能であった突発事象が生じた場合でも結果が生じないように安全な状態にしておく(安全策を講じておく)義務がある。このような義務に反し、ひもを片手で緩やかに持っていたにすぎない場合や、幼稚園の門の直前を時速50kmで走っていた場合は、結果回避義務違反行為となる。 ただし、これは結果回避可能性があることが前提とされる。例えば、散歩中に通り魔に襲われて、手綱のひもを切られた場合は犬を安全な状態にできない。また、誰かが車のブレーキに時限細工をして速度を落とせないようにしていた場合は速度を落とすことができない(結果回避義務を履行できない)。このような場合は結果回避義務違反行為にはならない
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