運行上の注意
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/12/05 13:06 UTC 版)
「ウォーター・スクープ」の記事における「運行上の注意」の解説
ウォーター・スクープで給水すると、その後部にかなりの水しぶきが飛ぶ。これにより先頭に近い客車の乗客に水がかかる恐れがあり、イギリスでは車掌が先頭車両の乗客に窓を閉めるように案内することになっていた。ロンドン・ミッドランド・アンド・スコティッシュ鉄道では、流線型の「コロネーションクラス」蒸気機関車が対向列車として同時にウォーター・トラフ区間に入ったことがあった。水しぶきにより炭水車の石炭が飛ばされて対向列車の窓ガラスが割れ、びしょびしょになった乗客から苦情が来ることになってしまった。このため鉄道会社ではダイヤを変更して、同時にウォーター・トラフに対向列車が進入しないようにした。 ウォーター・スクープの操作は正しい場所で行う必要がある。ウォーター・トラフの始まる少し後に降ろし、タンクが一杯になるかウォーター・トラフの終わる少し手前で上げなければならない。タンクの水が一杯になったのに上げずにいると、溢れた水が運転台に流れ込んでしまい、ときには石炭を投じるためのシャベルを押し流して運行不能に陥ってしまうこともあった。線路脇に標識が立てられており、乗務員にウォーター・スクープの上げ下げの場所を示していた。イギリスでは、大きな白い長方形の標識に波線が入った標識であった。アメリカでは、夜間の使用に備えて照明つきの標識が使用されていた。 水を大量にまきちらすと、保線の問題がある。また物理的に溝を線路の間に掘っているので、保線機械の使用が難しい。とても寒い季節には、水を温める装置を付けなければ凍ってしまうこともあった。 イギリスの水は硬水であり、そのままではボイラーによくないことから、添加剤を混ぜて軟水化していた。したがってある程度の費用がかかっており、余分に撒き散らしてしまうのは問題があった。ウォーター・スクープは水をできるだけ効率よく取り入れることができるように工夫がなされていた。 ウォーター・トラフは、一度使用すると水を再びためるのにしばらく時間が掛かった。このため列車同士があまりに接近していると使うことができなかった。また、設備が高価であり、ポンプを配置し複雑な配管を行い、保守するための人員を配置しなければならなかった。このため、ある程度の交通量のある路線のみに設置された。アメリカ合衆国では、東部の大鉄道会社のみこれを使用し、特に使用していたのはニューヨーク・セントラル鉄道とペンシルバニア鉄道であった。 イギリスではほとんどの路線で見られたが、サザン鉄道では使用していなかった。このため、イギリスの蒸気機関車の炭水車は一般に小型であったのに対して、サザン鉄道だけは大型の炭水車を装備していた。
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