退屈の心理学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 13:27 UTC 版)
シンシア・フィッシャーの定義によれば、「退屈」が意味する心理学的過程とは、「現在行われている活動に対して興味をまったく失っており、集中しがたく感じるような、不愉快で一過性の情動的状態」のことである。M・R・リリーらの定義はもっと簡潔だが、要点は同様と言える。つまり、退屈が「認知的注意力を働かせる過程に関連する情動的経験のひとつ」だと言うのである。これらの定義から、退屈を感じるのは何もすることがないからではなくて、ある特定の活動に対して執着することができないからであるということがわかる。なにかに関与したいという深い欲望をわれわれはしばしばもっているにもかかわらず、関与したいと思わせてくれるものが何もない、というわけである。 一説では退屈には3種類あり、そのどれもが注意を集中できないという問題を含んでいる。(1)何かにすることがどうしてもできない。(2)望んでいない活動をやらされている。(3)これといった理由はないが何もする気になれないとか何も見る気になれない。といった場合に退屈感を持つ。 心理学的に重要な構成概念としては退屈感志向 (boredom proneness) すなわちあらゆる種類の退屈を経験しようとする傾向がある。この度合いを測るのが退屈感志向スケール (Boredom Proneness Scale) である。上記の定義と符合することだが、最近の研究でも退屈志向が「注意の欠如」と明らかに関連しており、負の相関があると考えられている。理論的に言っても、また臨床的研究が教えてくれるところによっても、退屈感と退屈感志向はどちらも抑鬱的傾向と関連している。とはいえ退屈志向は抑鬱的傾向だけではなく注意力不足とも深く相関していることが明らかになっている。しばしば退屈は些細で実害のない現象だとみなされているが、心理学、医学、教育学、社会学などさまざまな角度から分析することができる複雑な現象といえる。
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