距離の誘導する位相
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/05 19:05 UTC 版)
X を距離空間、Aをその部分集合とする。A の点 x について、ある正の数 ε が存在して x を中心とする半径 ε の開球(ε-近傍 , ε-開球)B(x; ε) := {y ∈ X | d(x, y) < ε} (これをU(x; ε)とか N(x; ε)などと書くこともある) が A に含まれる時、x を A の内点 といい、 A を点 x の近傍という。 X における x の近傍の全体 V(x)(近傍は X の部分集合なので V(x) は集合族になる)を x の近傍系という。 このようにして X の各点 x に対しX の部分集合の族 V(x) を対応させる対応は位相空間論における近傍系の公理を満たしており、X を位相空間と見なすことができる。 距離空間に対しては、位相空間論の各概念を点列の収束をもちいて次のように特徴づけられることが知られている。Y を X の部分集合とする。 点 y が Y の内部にある ⇔ 補集合 Yc に含まれる点列で、y に収束するものは存在しない。 点 y が Y の外部にある ⇔ Y に含まれる点列で、y に収束するものは存在しない。 点 y が Y の縁にある ⇔ Y に含まれる点列で y に収束するものが存在し、Ycに含まれる点列で y に収束するものも存在する。 y ∈ X が Y の内部にあれば、補集合 Yc から y に近づく(収束する)事はできないのだから、y は Y の縁ではない中身の部分にあるとみなせる。同様に y ∈ X が Y の外部にあれば、Y から y に近づく事はできないのだから、y は Y の縁ではない外側の部分にあるとみなせる。また y ∈ X が Y の境界にあれば、Y の中からも外からも y に近づけるのだから、y はY の縁にある。 距離空間は位相空間として第一可算性(任意の点が可算の近傍生成基を持つ)、パラコンパクト性、完全正規性やハウスドルフ性など、いくつかの扱いやすいと見なされる性質を持っている。また、距離空間が可算コンパクト性や点列コンパクト性を持つならばその空間が位相空間としてコンパクトであることが導かれる。この距離空間のコンパクト性は距離空間が全有界かつ完備であることと同値になる。さらに距離空間が可分である(稠密な可算部分集合を持つ)ことと第二可算公理を満たす(可算個の開集合によってその位相が生成される)ことは同値になる。
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