豊饒圏の例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/18 09:17 UTC 版)
既に述べたが、通常の圏は集合の直積をモノイド演算として備えた集合の圏 (Set, ×, {•}) で豊饒化された圏である。 2-圏(英語版)は小さい圏の圏 Cat にデカルト積によって定まるモノイド構造を入れたもので豊饒化された圏である。この場合、射の間の二次元の射 (2-cell) a → b およびそれらの垂直合成則は、通常の圏 C(a, b) における射およびその合成則である。 局所的に小さい圏(射対象が小さい集合となる圏)は小さい集合(英語版) が集合の直積をモノイド積として成すモノイド圏 (SmSet, ×) で豊饒化された圏である。 局所有限圏(英語版)は有限集合の圏が集合の直積に関して成すモノイド圏 (FinSet, ×) で豊饒化された圏を言う。 前順序集合(英語版)は、二つの対象を持ち恒等射でないただ一つの射を持つ圏 2 := {FALSE, TRUE} で豊饒化された圏と考えることができる。ただし、その唯一の射を FALSE → TRUE とし、ブール値の連言をモノイド演算、TRUE をモノイド単位とする。すると射対象 2(a, b) は与えられた対象の順序対 (a, b) 上の特定の二項関係を単に拒否するか受容するかを意味するもので、この関係を表すより馴染みのある記法としては、これを a ≤ b と書くことができる。この 2 で豊饒化された圏に対する合成と恒等射の存在は、それぞれ推移律 (a ≤ b かつ b ≤ c ⇒ a ≤ c) および反射律 (TRUE ⇒ a ≤ a) という公理(これらはつまり ≤ が前順序となることを意味する公理である)に直ちに翻訳することができる。圏 2 における任意の図式は可換となるから、これは 2 で豊饒化された圏に対する豊饒圏の公理として唯一内容を持つものである。 ウィリアム・ローヴェアの一般化された距離空間、すなわち擬準距離空間は、非負拡大実数の全体 R+∞ を通常の大小関係の成す順序の逆で圏と見なしたもの(つまり、射 r → s が存在する必要十分条件が r ≥ s)に加法 + をモノイド積、0 をモノイド単位とするモノイド構造をいれたモノイド圏で豊饒化された圏である。射対象 R+∞(a,b) は本質的に距離 d(a,b) であり、合成と恒等射の存在は三角不等式 (d(b,c) + d(a,b) ≥ d(a,c)) および非負性 (0 ≤ d(a,a) に翻訳される。 零射を持つ圏は点付き集合がスマッシュ積に関して成すモノイド圏 (Set∗, ∧) で豊饒化された圏である。射対象 Hom(A, B) の基点が A から B への零射に対応する。 前加法圏はアーベル群の圏がテンソル積に関して成すモノイド圏 (Ab, ⊗) で豊饒化された圏である。
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