色素における共役系
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/01 23:38 UTC 版)
共役系は強い色を呈する特色がある。多くの色素は共役系を利用している。例えばβ-カロテン中の共役長炭化水素は強いオレンジ色を呈する。共役系中の電子が適切な波長の光の光子を吸収すると、高エネルギーレベルに励起する(井戸型ポテンシャルを参照)。これらの電子遷移のほとんどは、偶対称性を持つ一つの共役π系分子軌道 (molecular orbital, MO) から奇対称性を持つもう一つの共役π系分子軌道への遷移(π → π*)である。しかし電荷移動錯体でしばしば起こるように、他の状態の電子もまたπ系分子軌道に働きかけることができる(n → π*)。電磁遷移の選択律で許容される場合は電子のHOMOからLUMOへの遷移がしばしば起こる。共役二重結合が8本よりも少ない共役系は紫外領域しか吸収せず、人間の眼には無色に見える。二重結合が増えるにつれ、共役系は長波長(低エネルギー)の光子を吸収し、化合物は黄色から赤色を呈する。青色や緑色の化合物は通常共役二重結合のみには頼っていない。 紫外から可視スペクトルの光の吸収は、紫外・可視分光法によって定量することができ、光化学の全領域の基礎を形成している。 合成顔料および染料に広く使われている共役系は、ジアゾおよびアゾ化合物、フタロシアニン化合物である。
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