聖アンデレの殉教 (ルーベンス)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/21 00:41 UTC 版)
| スペイン語: El martirio de San Andrés 英語: The Martyrdom of Saint Andrew |
|
| 作者 | ピーテル・パウル・ルーベンス |
|---|---|
| 製作年 | 1639年 |
| 種類 | キャンバス上に油彩 |
| 寸法 | 206 cm × 216 cm (81 in × 85 in) |
| 所蔵 | カルロス・デ・アンベレス財団、マドリード |
『聖アンデレの殉教』(せいアンデレのじゅんきょう、西: El martirio de San Andrés, 英: The Martyrdom of Saint Andrew)は、17世紀フランドル・バロック期の画家ピーテル・パウル・ルーベンスがキャンバス上に油彩で制作した絵画である。画家の死の前年の1639年に描かれた。作品は1989年以来、マドリードのカルロス・デ・アンベレス財団が所有し、2025年10月19日現在はマドリードのプラド美術館に寄託展示されている[1]。
主題
ヤコブス・デ・ウォラギネの『黄金伝説』によれば、アンデレはギリシャのパトラスで殉教した[2]。アンデレはロープでX字型の十字架に縛られた状態で2日間生き続け、群衆に説教をしたといわれる。最終的に人々はアンデレの解放を要求したが、彼自身が拒んだという。『黄金伝説』には以下の記述がある[1]。
しかし、アンデレは彼を見て、いった。「アエゲネス (古代ローマのプロコンスル) よ、あなたはそこにいるのか。もし、許しを乞うために来たのなら、あなたに許しを与えよう。しかし、もし私を十字架から降ろすために来たのなら、私が生きて降りるつもりははないことを知れ! そして、すでに私は、天国で待っている私の王を見ているのだ!」。兵士たちは彼の縛りを解こうとしたが、すぐに彼らの腕が力なく垂れてしまったために触れることはできなかった。そして、アンデレは群衆が彼を十字架から降ろそうと願っているのを見て、祈りを口にした。その祈りの内容については、聖アウグスティヌスが自身の著作『苦行について (On Penance)』で以下のように述べている。「神よ、私がこの十字架から生きて降りてくることで苦しませないでください。もう、あなたが私の肉体を地上に返す時なのですから」。彼がそういった時、天から目をくらますような光がやってきて、彼を半時間ほど視界から隠した。光が消えた時、彼は魂を吐き出した。
歴史
作品は、マドリード在住のフランドル出身の人物ヤン・ファン・フフト (Jan van Vucht) により依頼されたものである[1]。この作品の構図は、ルーベンスの師匠であったオットー・ファン・フェーンがアントウェルペンの聖アンデレに奉納された教会の高祭壇用に描いた同主題作にもとづいている。ルーベンスの本作にもとづく素描が現在、ロンドンの大英博物館に所蔵されている。また、ロッテルダムのボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン美術館には、本作の準備素描が収蔵されている[1]。
1639年のファン・フフトの死に際し、彼は本作をカルロス・デ・アンベレスが1594年に創設したサン・アンデレス・デ・ロス・フラメンコス病院に遺贈した[1]。同病院が1844年に閉められた時、作品はエル・エスコリアル修道院に設置されたが、病院が改修された1891年に戻され、その新しい礼拝堂に設置された。1978-1989年まで、作品は一時的にマドリードのプラド美術館に展示されている[3]。
2019年の5月28日から9月1日まで本作はメキシコのプエブラにある国際バロック美術館で展示されたが、本作が中南米で展示されたのは初めてのことであった[4]。次いで、同年9月5日から12月8日までメキシコ国立美術館で開催された特別展で展示された。この特別展は、ルーベンスがホセ・フアレス (José Juárez)、クリストバル・デ・ビリャルパンド、バルタサール・デ・エチャベ・イ・リオハ (Baltasar de Echave y Rioja) などヌエバ・エスパーニャの画画たちに与えた影響を示すものであった[5]。
脚注
- ^ a b c d e “The Martyrdom of Saint Andrew”. プラド美術館公式サイト(英語). 2020年6月20日閲覧。
- ^ 石鍋、2018年、440頁
- ^ “El Martirio de San Andrés”. 2016年10月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年10月19日閲覧。
- ^ “La pintura "El martirio de San Andrés" llega a Puebla”. 2025年10月19日閲覧。
- ^ “El martirio de San Andrés”. 2025年10月19日閲覧。
参考文献
- 石鍋真澄『カラヴァッジョ ほんとうはどんな画家だったのか』、平凡社、2022年刊行 ISBN 978-4-582-65211-6
外部リンク
- 聖アンデレの殉教_(ルーベンス)のページへのリンク