緊縮財政の問題点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/06 18:06 UTC 版)
政府支出はそれ自体がGDPの主要な構成項目であり、また増税は民需を縮小させるため、緊縮財政は総需要を抑制しGDPの毀損やGDP成長率の鈍化につながったり失業者が増加する可能性が高い。増税をしても税率を上げた分だけ税収が増えるとは限らず、緊縮財政で経済活動に冷水をかけてしまえば、税収の原資であるGDPが毀損されて税収が伸びなかったり減少する。したがって緊縮財政を実行したからといって、その目的の通り財政赤字や政府債務残高の減少や抑制が達成されるとは限らない。1990年代以降、日本や多くのヨーロッパ諸国では緊縮財政に続いてGDP成長率の鈍化が発生し、GDP比の政府債務比率は上昇し続けている。 世界恐慌の渦中にあった1930年代、反緊縮財政の議論が顕著になった。ジョン・メイナード・ケインズは有名な反緊縮の経済学者になり、「不況のときではなく景気が過熱しているときが緊縮財政の適切な時期である」と主張した。 現代のケインズ経済学者は、不況時に失業を減らしGDPの成長を促進するために、財政赤字が適切であると主張している。ポール・クルーグマンによれば、政府は家計とは違いマクロ経済を動かす主体であるため、景気後退時の政府支出の削減は経済危機を悪化させる。経済全体で、ある人の支出は別の人の収入である。言い換えれば、誰もが支出を削減しようとすると、合成の誤謬に経済が閉じ込められ、GDPが低下し景気後退が悪化する可能性がある。
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