絶対主義および相対主義の代替物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/24 15:52 UTC 版)
「議論学」の記事における「絶対主義および相対主義の代替物」の解説
トゥールミンは、(論理的主張や分析的主張によって表現される)絶対主義は実践的な価値を規定してきたと主張してきた。絶対主義はプラトンの、普遍的な価値の存在を主張する理想化された形式的な論理に由来する。そのため絶対主義者は、道徳的な問題は文脈に関係なく一揃いの道徳的規則を順守することで解決されると信じる。対照的にトゥールミンは、基本的な規則と呼ばれるものの多くは人が日々の生活の中で直面する実際的な問題に対して的外れであると力説する。 自身の日々の生活に対する観点を記述しつつ、トゥールミンは議論の分野の概念を紹介する。著書「議論の技法」(1958年)でトゥールミンは、分野から分野へと変わっていくために「分野-依存的」と言われる議論の様相が存在し、一方で、どんな分野でも変わらないために「分野-普遍的」と呼ばれる議論も存在すると述べている。絶対主義の流儀では、分野-依存的な議論の様相が気づかれないままであるとトゥールミンは信じていた。絶対主義は全ての議論の様相が分野-普遍的であると考えている。 トゥールミンの理論は、相対主義に頼らずに絶対主義の欠点を回避することを決定した。相対主義は道徳的な主張と反道徳的な主張を区別するための何らの基準をも与えないとトゥールミンは力説した。著書「人間の理解」(1972年)でトゥールミンは、人類学者は文化的違いの理性的な議論に与える影響に気付き、相対主義に味方するように誘惑してきたと主張している。言い換えれば、人類学者や相対主義者は「分野-依存的」な議論の様相の重要さを強調しすぎていて、「分野-不変的」な要素に気付かなくなっているのである。絶対主義と相対主義の問題を解決しようとするうえで、トゥールミンは彼の全著作を通じて観念の価値を評価するための絶対主義でも相対主義でもない基準を作り上げようとしてきた。 トゥールミンは、良い議論は主張を良く正当化することができ、その正当化は批判に立ち向かい、好ましい評価を得られるようなものであると信じていた。
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