破産手続開始決定前の中止命令と保全処分
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/14 05:30 UTC 版)
「破産」の記事における「破産手続開始決定前の中止命令と保全処分」の解説
裁判所は、破産手続開始の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、破産手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、強制執行や仮差押え、担保権の実行等、一定の手続きの中止を命じることができる(破産法24条1項)。 この中止命令によっては破産手続の目的を十分に達成することができないおそれがあると認めるべき特別の事情があるときは、裁判所は、利害関係人の申立てにより又は職権で、破産手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、すべての債権者に対し、債務者の財産に対する強制執行等や国税滞納処分の禁止を命じることができる(破産法25条1項)。これを包括的禁止命令という。 包括的禁止命令が発令されるのは、事前に又は同時に、債務者の主要な財産に対する保全処分(破産法28条1項)や保全管理命令(破産法91条2項)が発令された場合に限られる(破産法25条1項但書)。 包括的禁止命令が発せられた場合には、債務者の財産に対して既にされている強制執行等の手続(当該包括的禁止命令により禁止されることとなるものに限る。)は、破産手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、中止する(破産法25条3項)。 裁判所は、包括的禁止命令を発した場合において、強制執行等の申立人である債権者に不当な損害を及ぼすおそれがあると認めるときは、当該債権者の申立てにより、当該債権者に限り当該包括的禁止命令を解除する旨の決定をすることができる(破産法27条)。 破産手続開始決定がなされれば、その後は破産管財人によって財産の管理・処分がなされるが、開始決定までの間は従前通り債務者が自由に財産を処分できてしまう。このことから、破産手続開始の申立てから破産手続開始決定までの間に、債権者に対する配当原資となる債務者の財産が散逸して破産手続が無駄になる危険がある。この危険を防止するため、破産手続開始決定前の保全措置として、債務者の財産に関し、その財産の処分禁止の仮処分その他の必要な保全処分を命ずることができることが定められている(破産法28条1項)。
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