知識の進化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/24 15:52 UTC 版)
トゥールミンは「人間の理解」(1972年)で、概念の変化は進化的だと断言している。この著書では、トーマス・クーンが「科学革命の構造」で与えた概念の変化の説明を攻撃している。クーンは、概念の変化は(進化的に対して)革命的な過程で、その内で排他的なパラダイムが互いに取って代わろうとすると考えた。トゥールミンは、互いに排他的なパラダイムは比較するための共通の土壌がないと指摘して、クーンの理論の内の相対主義的な要素を批判した。言い換えれば、クーンの理論は「分野-変化的」を強調しすぎる一方で「分野-不変的」、つまり全ての議論過程や科学的パラダイムが分け合う共通性を無視するという相対主義者の間違いを犯している。 トゥールミンはダーウィンの生物学での進化のモデルに類似している概念の変化の進化的なモデルを提示している。このモデルの上では、概念の変化は革新と選択を必然的に伴う。革新とは、概念の変化だと説明され、選択とはしっかりした概念が生き残り不朽となることだと説明される。革新はある特定の分野の専門家が先達とは異なるものの見方をするようになったときに生じる。選択は革新的な概念をトゥールミンが「論争のフォーラム」と考える者の中でのディベートや質問にさらす。最もしっかりした議論がその論争のフォーラムを生き抜き、伝統的な概念の跡継ぎあるいは修正となる。 絶対主義者の考え方では、概念は文脈に関係なく妥当か妥当でないかのどちらかである。相対主義者の考え方では、概念は様々な文脈の上でライバルの概念と比較して良くも悪くもない。トゥールミンの考え方では、概念にどういう評価が下されるかは比較の過程に依存する。比較の過程はある概念が他の概念よりも人の説明能力を上昇させるか否かを決定する。
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