皮膜防食
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/08 14:42 UTC 版)
金属を塗料、めっき、ライニングなどの皮膜で覆い、周囲の環境から遮断することは、もっとも基本的な防食方法の一つである。その中でも塗装による防食は最も簡易で非常に多く行われている。ただし実際の塗装皮膜では酸素や水の遮断はできず、詳細は不明な点もあるが、皮膜と素地の密着効果や皮膜の電気抵抗の大きさによって防食できていると考えられている。上記の式でいえば、塗装の適用は分母の ha および hc を大きくすることに相当すると解釈できる。 塗装で異種金属接触腐食の対策をするにあたっては、上記のとおり、卑な金属のみを塗装するのは避けるべきである。塗装皮膜が欠損したときに、卑な被塗装材が小さな表面積で露出する形になり、著しい異種金属接触腐が起こる。異種金属接触腐食への対策としては、卑な金属と貴な金属の両方を塗装するのが理想的である。航空分野でも、異種金属の接触が避けられないときは、結合部を両材料ともに塗装やシール材で保護するようにしている。貴な側となる金属は、それ自体では腐食しない高級な材料であることが多い。一般的な感覚ではそのような高級材料を塗装するのは過剰防食だと考えてしまう点には注意を要する。 めっきをする場合は、鋼材に対するニッケルめっきのように、卑な金属を貴な金属皮膜で覆うめっきには注意を要する。めっきを施しても、ピンホールと呼ばれる微小な欠陥や傷などを通じ、環境と被めっき材が触れ合う場合がある。このとき、貴な皮膜が卑な被めっき材の異種金属接触腐の相手となって、被めっき材の急速な腐食を起こしてしまう。したがって、鋼材をニッケルめっきするような場合は、めっきの欠陥部分では腐食が促進される。対策としては、電解ニッケルめっきの場合、硫黄濃度を変えて2層または3層でめっきする手法がある。このような事情により、貴な金属によるめっきは、耐食性向上以外の必要性があるときに限って採用することが多い。
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