発表経過・創作意図
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/10 21:01 UTC 版)
「第一部 S・カルマ氏の犯罪」は、1951年(昭和26年)、雑誌『近代文学』2月号に「壁―S・カルマ氏の犯罪」の表題で掲載され、同年7月30日に第25回(昭和26年上半期)芥川賞を受賞した。「第二部 バベルの塔の狸」は同年、雑誌『人間』5月号に「バベルの塔の狸」の表題で掲載(挿絵は桂川寛)された。「第三部 赤い繭」は、前年1950年(昭和25年)、雑誌『人間』12月号に「三つの寓話」(「赤い繭」「洪水」「魔法のチョーク」)の表題で掲載され、1話目「赤い繭」は第2回(1950年度)戦後文学賞を受賞した。なお、「第三部 赤い繭」の4話目「事業」は同年10月に、世紀の会刊行パンフレット「世紀群叢書5」に掲載された。以上の6編をまとめて収録した単行本『壁』は、1951年(昭和26年)5月28日に月曜書房より刊行された。 安部公房は、3部作は一貫した意図によって書かれたもので、壁というのはその方法論にほかならないとし、以下のように述べている。 壁がいかに人間を絶望させるかというより、壁がいかに人間の精神のよき運動となり、人間を健康な笑いにさそうかということを示すのが目的でした。しかしこれを書いてから、壁にも階級があることを、そしてこの壁があまりにも小市民的でありすぎたことを思い、いささか悔まずにはいられませんでした。 — 安部公房「あとがき」(『壁』)
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