生理学的な説明
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/11 07:14 UTC 版)
依存性薬物の作用機序は様々であるが、その多くに直接的にせよ間接的にせよ共通しているのが、脳内で本来働いている物質と同様に働き、脳がその違いを区別できないアゴニストとしての作用によるものである。典型的な例としてはオピオイド(例: ヘロイン、モルヒネ、アヘン等)が挙げられる。特定の受容体に対して本来正常に機能している内因性の脳内物質(この場合はβ-エンドルフィンなどいくつかあるオピオイド受容体のアゴニストまたはアンタゴニストといった内因性リガンド)に代わり、通常(内因性のアゴニスト)ではありえないほど強力かつ長時間アゴニストとして作用することによって作用する。また、それらに対して拮抗的に作用するのがナルトレキソン(英語版)やナロキソンなどのアンタゴニストである。 身体的依存性のある薬物の血中濃度が低下してくると、生理的、心理的に不快な離脱症状として多彩な症状が生じる。オピオイドの場合は、どれほど耐えがたい離脱症状であっても通常致命的ではない。この離脱症状の辛さは、再び薬物を摂取したいという欲求の強力な誘因の一つとなる。 離脱症状はアゴニストとして働いていた物質が単に身体にとって不十分になれば程度の差はあれ生じる。しかし、個々の薬物の摂取後の血中濃度や薬物動態と症状の発現や程度は必ずしも相関しないことも多い。そうして断薬を継続すれば、慢性的な薬物摂取のため低下していた内因性アゴニストの分泌や受容体の数、感受性等が徐々に回復して正常化していき、そうすることで離脱症状も徐々に薄れていく。最終的に、離脱症状と身体的依存の状態から完全に回復する。しかし一般的に行われている治療では、それでもまた薬物中毒者に戻ってしまう人々の割合、すなわち再発率は高いことが多くの研究によって明らかになっている。
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