環境に対する影響と対策
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/03 14:12 UTC 版)
「出し平ダム」の記事における「環境に対する影響と対策」の解説
出し平ダムが貯水を開始して6年目にあたる1991年(平成3年)12月、第1回の排砂放流が行われた。本格的な排砂ゲートを装備したダムとしては出し平ダムが初めてであり、運用ノウハウが無かったために「生物の活動が少なくなる冬に排砂するのが良い」と考えたようである。しかし排砂放流を行ってみると、6年間湖底に積もった土砂は、中に含まれている落ち葉や木片などの有機物が湖底の嫌気性環境で腐敗・変質しており、ヘドロ様の土砂が排出されることになった。そして冬は渇水期のために薄める河川水も乏しい状態で、ヘドロが海まで流れて長時間滞留し、漁業被害を起こしたと見られる。そのため関西電力株式会社と地元漁業協同組合との間で公害訴訟が起きた(なお、現在は富山地方裁判所から公害の原因の究明の嘱託を受けた公害等調整委員会において審理が進められている)。一審の富山地裁は、関西電力に対し原告に約2,700万円を支払うよう命じた。原告と関電の双方が控訴していたが、2011年4月5日に名古屋高裁で、原告・被告双方の間で和解が成立した。 この訴訟の影響で、下流域への影響を少なくする排砂方法が検討されることになった。検討の結果「増水時に乗じて排砂を行う事が下流への影響が少なくなる」と考えられた。2005年(平成7年)7月11日、豪雨で大量の土砂が流出した。3年間に3回、増水時に排砂放流を行ったが、これにより「増水時に排砂することが下流への影響が少ない方法である」という観測結果が得られた。現在では、ダム湖に土砂が流れ込むのは90%以上が増水時であることが分かり、黒部川が増水する度に(その年の最初の増水に合わせて)宇奈月ダムとの連携排砂、以後は増水に合わせて連携通砂を行い、ダム湖に土砂を蓄積させずにこまめに流すように運用されている。ダムが無い自然の状態の土砂移動に近付けるように自然との共存を目指して運用改善の努力がなされているが、まだまだ改善するべき点が多いとも指摘されている。
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