火星での燃料生産
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/26 06:44 UTC 版)
サバティエ反応は火星への有人宇宙飛行(マーズ・ダイレクト)でのコスト削減の鍵を握る技術として提案されている。このような技術を現地資源利用 (ISRU) と呼ぶ。水素を地球から運ぶか、火星の水があればそれを電気分解して水素を作り、大気中の二酸化炭素とサバティエ反応させてメタンと水を作る。水を電気分解した際にできる酸素をそのメタンと組合せ、火星から帰還する際のロケット燃料として利用する。 酸素とメタンをロケット燃料とするエンジンの場合、酸化剤と燃料の化学量論的な比率は 3.5:1 だが、サバティエ反応で生成される比率は 2:1 である。さらなる酸素を生成する方法として水性ガスシフト反応の逆反応が候補となっている。生成した水を分解して必要な酸素を生成できる。別の案としては、サバティエ反応で必要以上のメタンを生成し、余分なメタンを熱分解で炭素と水素に分解する。その水素はサバティエ反応へと再利用し、さらにメタンと水を生成するために使う。これを自動システムとして稼動させるには沈着する炭素をどうにかして取り除く必要があるが、火星の二酸化炭素を加熱して分解によって生じた酸素をその炭素に触れさせ、爆発により一酸化炭素へと酸化する方法が提案されている。 化学量論的問題の第3の解決策は、サバティエ反応と水性ガスシフト反応の逆反応とを同時に起こす反応器を使い、次のような反応を実現するという方式である。 3 CO 2 + 6 H 2 ⟶ CH 4 + 2 CO + 4 H 2 O {\displaystyle {\ce {3CO2 + 6H2 -> CH4 + 2CO + 4H2O}}} この反応は若干発熱的であり、水を電気分解すると酸素とメタンの比率は 4:1 となり、酸素の方が余分に生成される。軽い水素だけを地球から運んでくればよく、重い酸素と炭素は現地で調達する。その質量比は18:1にもなる。このような現地資源利用によって出発時の重量を軽減でき、火星への有人宇宙飛行やサンプルを持ち帰るミッションを実現する手段として提案されている。
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