比較優位との違い
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/03 07:33 UTC 版)
詳細は「比較優位」を参照 表2。小国Sとアメリカの財の生産。一単位の財の生産に必要な労働量国自動車パソコン小国S100 120 アメリカ90 80 比較優位は絶対優位と混同されがちな概念であるが、比較優位は絶対優位とは異なる概念である。例えば、表2のようなケースを見る。このとき、2つの財のうち、双方の生産に関してアメリカが絶対優位を持っており、小国Sはどちらの財の生産に関しても絶対劣位にある。このとき、アダム・スミスの絶対優位の考え方によれば、この2か国が貿易するメリットはない。しかし、デヴィッド・リカードによって提唱された比較優位の考え方によれば、双方の国に貿易するメリットが生まれ、各国は比較優位にある財を輸出し、比較劣位にある財を輸入することになる。 このとき、小国Sは自動車1単位を生産するのに100の労働が必要となり、また、この100の労働によって5/6単位のパソコンを生産することができる。一方で、アメリカは自動車1単位を90の労働で生産することでき、この90の労働によって9/8単位のパソコンを生産することができる。このとき、小国Sは、より小さい機会費用で自動車を生産することができるので、自動車という財の生産に関して比較優位にあり、同様にアメリカはパソコンの生産に関して比較優位にある。 このとき、もし、小国Sが1単位の自動車で、アメリカからパソコンを5/6単位以上手に入れることができれば、小国Sに貿易をするメリットが生まれる。一方で、アメリカはパソコン9/8単位以下で、小国Sから自動車1単位を手に入れることができるのであれば、アメリカに貿易をするメリットが生まれる。つまり、アメリカと小国Sの間で自動車1単位に対し、パソコン5/6単位以上9/8単位以下、の間で交換比率が収まれば、両国の間で貿易が行われることになる。このような輸出財1単位と交換される輸入財の量のことを交易条件(あるいは交換条件とも)という。自国の交易条件の逆数が外国の交易条件となる。 ここで仮に交換比率が交易条件内である1対1に決まったとし、両国が貿易をするならば、アメリカは比較優位にあるパソコンの財の生産に特化する。すなわち全労働量である80+90=170をパソコンの生産に当てることで、170÷80=2.125単位のパソコンを生産することができる。一方で、小国Sは自動車という財に関して比較優位にあるため、自動車の生産に特化し、全労働量である100+120=220を自動車の生産に当て、220÷100=2.2単位の自動車を生産することができる。このとき、アメリカはパソコン1単位で自動車1単位を得ることができ、小国Sは自動車1単位でパソコン1単位を得ることができる。しかも、パソコンは2.125単位、自動車は2.2単位と、最終的な生産量は貿易をしない場合のそれぞれ2単位の生産量よりも、多くなっている。
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